タバコに買い物、間食にトイレ……。「あの手この手」で離席する部下に困っています。離席分の給料を下げることはできるでしょうか。

会社による一方的な減給はできない

結論からいえば、会社側の一方的な決定による減給はできません。労働契約法の第8条に「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる」とあるためです。

これは、双方の合意がなければ減給はできないことを意味します。さまざまな理由をつけて離席するような部下である場合や、離席分の給料に限った場合でも同様です。減給を強行すれば、のちに訴訟を起こされるなどのトラブルにもなりかねません。

労働契約法の第3条4項には「労働者及び使用者は、労働契約を順守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない」ともあります。いわゆる、労働者の職務専念義務の規定を含む条文です。それでも合意のない減給は違法行為となるため、実際に会社に損害が出ていたとしても、一方的に給料を下げるのは避けましょう。

会社側が行える対策とは

離席の頻度が多い部下に対しては、まずは、その行動が妥当なものかという確認を行います。トイレや体調不良などの理由で離席するのは、妥当といえるでしょう。ただ、タバコや間食による離席や、上司に頼まれたわけではない買い物などによる離席・外出は、度を超えると妥当性が薄れる可能性が出てきます。

特に、規定の休憩時間外にそのような離席がたびたびあれば、妥当性はないと判断しても問題はないでしょう。また、離席の頻度や理由、時間などの記録も求められます。

同時に、その部下に対するパワハラやセクハラなどの問題が生じていないかの確認も必要です。表向きはタバコや買い物、間食などでの離席でも、裏では社内トラブルを抱えている可能性も否定はできません。労働環境に問題はないか、過剰なプレッシャーや何かしらの被害を与えていないかも確認しておきましょう。

離席が多く、部下本人に問題があると確認し記録をとったら、まずは口頭で注意します。頻度や時間などもあわせて伝え、他の社員と比べて多いことや妥当性がないことなどを本人と一緒に確認しましょう。口頭注意で改善がみられない場合は、書面による注意を行います。証拠として残せるのが書面による注意のポイントです。

事前に注意を繰り返し、それでも改善しない場合は減給を含めた処分の可能性を伝えましょう。のちに「言った言わない」の問題が発生しないよう、やはり書面で伝えることが重要です。また、減給よりも先にけん責処分とし、厳重に注意することも忘れてはいけません。段階を踏まなければ、トラブルへと発展した場合に会社側が不利となるおそれも出てきます。

注意や軽度の処分の段階で改善がみられれば、それに越したことはないでしょう。可能な限り改善を促す方向で働きかけ、それでも妥当性のない離席が続くようであれば、徐々に重い処分への移行を検討しましょう。

トラブルを避けたい場合は専門家へ相談を

離席の多い部下への処分を検討する際には、就業規則の確認も不可欠です。職務専念義務について明記しておき、離席の多い社員への処分が可能な内容としておく必要があります。そのうえで、裁判などのトラブルを避けたい場合は、労働問題を得意とする弁護士などに相談するのも一案です。専門家と一緒に過去の事例なども参考にしながら、会社にとってよい形となるような解決を目指しましょう。

離席の多い部下の減給には段階的な準備と対策が不可欠

社内に悪影響を与えるほどに妥当性のない離席を繰り返す社員がいたとしても、一方的に給料を減らすことはできません。減給には双方の合意が必要なためです。まずは、離席が多い部下の行動確認と記録が求められます。そのうえで、口頭や書面により注意しましょう。

改善されない場合は、けん責処分を検討します。それでも改善がみられない場合は、事前に伝えたうえで減給処分もやむをえないですが、できるだけ双方が気持ちよく働ける環境を目指していきましょう。

出典

e-Gov 労働契約法

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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