ブラジル大統領、ガザ情勢をホロコーストになぞらえる イスラエルは強く批判

ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルヴァ大統領は18日、イスラエルがパレスチナ自治区ガザ地区で集団虐殺を行っていると非難し、その行為をユダヤ人のホロコースト(大虐殺)になぞらえた。イスラエルはルラ大統領を強く批判している。

ルラ氏は、エチオピアで開催されたアフリカ連合の首脳会議に参加。「ガザ地区でパレスチナの人々に起きていることは、歴史的な出来事として類例がない。いや実際には、ヒトラーがユダヤ人を殺害すると決めたときには(同じようなことが)あった」と発言した。

さらに、イスラエルの軍事作戦について、「兵士対兵士の戦争ではない。高度に準備された軍隊と、女性や子どもたちとの戦争だ」と述べた。

これに対し、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、「ホロコーストの矮小(わいしょう)化であり、ユダヤ人とイスラエルの自衛権を損なおうとするものだ」と反発。

「イスラエルと、ナチスやヒトラーのホロコーストを比べることは、越えてはならない一線を越えている」と述べた。

ヒトラーのナチス政権時代の1930年代から1940年代にあったホロコーストでは、約600万人のユダヤ人が組織的に殺害された。

ブラジル大使を呼び出し

イスラエルのイスラエル・カッツ外相も、ルラ氏の発言に、「私たちは忘れることも許すこともしない」と反応。

「これは深刻な反ユダヤ主義的攻撃だ。私の名とイスラエル国民の名において、ルラ大統領は(発言を)撤回するまで、イスラエルではペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)だと伝える」と述べた。

イスラエルは19日、ブラジル大使を呼び出して協議した。

一方、ブラジルの主なユダヤ人組織「ブラジル・イスラエル人連盟」もルラ氏の発言を批判。「現実の倒錯した歪曲(わいきょく)」であり、「ホロコーストの犠牲者とその子孫の記憶を害するものだ」とした。

ジェノサイドの訴えも支持

左派のベテラン政治家のルラ氏は、イスラム組織ハマスが昨年10月7日にイスラエル南部を襲撃した際には、ハマスを非難した。この襲撃では少なくとも1200人が殺害され、253人が拉致された。

しかしルラ氏は、イスラエルの報復攻撃については強く批判している。ハマスが運営するガザ保健当局によると、イスラエルの攻撃で女性と子どもを中心にこれまでに2万8800人以上が殺害されている。

ルラ氏は昨年、イスラエルがガザでジェノサイド(集団虐殺)を繰り広げているとして、南アフリカが国際司法裁判所(ICJ)に対応を求めた際、その訴えを支持した。ブラジルと南アフリカはともに、ブリックス(BRICS)と呼ばれる新興5カ国のグループのメンバーとなっている。

この件でICJは、イスラエルに対し、集団虐殺とみなされかねない軍事行動はせず、集団虐殺の扇動を防止および処罰し、ガザ住民への人道支援を可能にするよう指示。しかし、イスラエルに軍事行動の即時停止を求めることはしなかった。

イスラエルのネタニヤフ首相は、国際的な圧力が高まる中、ガザ南端の都市ラファへの侵攻を進めると宣言している。ラファには約150万人が避難している。

(英語記事 Israel condemns Brazil's Lula likening Gaza war to Holocaust

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