成長への影響大!増える子どもの睡眠不足・睡眠障害に注目。予防・改善方法を専門医が解説

「子どもの睡眠時間が短く、成長に影響がないか心配」というお悩みはありませんか?

昔と比べて日本人の睡眠時間は短くなっている傾向にあり、近年は子どもの睡眠不足や睡眠障害が注目されています。(※1)

今回は、子どもの睡眠障害の成長への影響や、予防・改善方法について医師が解説します。

子どもの睡眠障害の症状

子どもの睡眠障害は、本人が自覚して周りに伝えることが難しいため、気づかれにくいという特徴があります。

以下は、子どもの睡眠障害の一例です。

不眠症・過眠症

睡眠障害と聞くと、まず不眠症を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。

子どもの不眠症には、生後6か月以降の夜泣きや2歳以降の寝ぐずり(行動性不眠症)、不適切な睡眠環境やストレスによる不眠症、発達障害に続発する不眠症などがあります。

また、睡眠不足による日中の眠気(睡眠不足症候群)や、ホルモンの低下によって日中に過剰に眠くなる「ナルコレプシー」などの過眠症も、睡眠障害のひとつです。

このような睡眠障害が起こるのは、子どもの睡眠をとり巻く環境が影響している可能性があります。(※2)

概日リズム睡眠障害

子どもの夜型化や寝つきの悪さは、睡眠リズムの乱れによる「概日リズム睡眠障害」の症状かもしれません。

人間は、本来25時間程度といわれている睡眠リズムを、外部刺激によって24時間に調整しています。

概日リズム睡眠障害の場合、24時間への調整がうまくできずに睡眠リズムが後ろにずれてしまうため、「寝るべき時間に寝られない」「昼夜逆転してしまう」などの症状が起こるのです。

概日リズム睡眠障害は、とくに思春期の子どもに多いといわれています。朝起きて日中に活動できないので、学校生活に支障が出ることもある睡眠障害です。(※3)

睡眠時随伴症

睡眠時随伴症とは、睡眠中に起こる好ましくないイベントのことです。

具体的には、ねぼけ(夜驚症・睡眠時遊行症・悪夢症)やおねしょ(夜尿)、むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)などが当てはまります。(※4)

睡眠中に突然叫ぶ、泣きだす、起き上がって歩きだす、「こわい夢を見た」と頻繁に起きてしまうなどの症状は、夜驚症や睡眠時遊行症、悪夢症などの可能性があります。子どもの成長過程でよく見られ、思春期早期までに自然と治ることが多いといわれている症状です。(※5)

また、おねしょやむずむず脚症候群は、不快感によって眠りが妨げられてしまうため、病気と考えない範囲でも対策が必要になることがあります。

睡眠障害は子どもの成長に影響する?

結論として、睡眠障害は子どもの成長に影響を与える可能性が高いです。

たとえば、睡眠障害による慢性的な睡眠不足は、「成長ホルモンの分泌低下によって成長が遅れる」「疲労が十分に回復できずに、日中の眠気や疲労感が続く」「将来、肥満になるリスクが高まる」などの問題を引き起こすことがあります。

また、二次的な影響として、眠気による注意や集中力の低下など学習障害につながるケース、睡眠不足によるイライラや多動、衝動行為によって、対人関係に問題が生じるケースなども考えられます。(※6)

子どもの睡眠障害の予防・改善方法

子どもに必要な睡眠時間の目安として、1〜2歳で11〜14時間、3〜5歳で10〜13時間、小学生で9〜12時間、中高生で8〜10時間ほどが推奨されています。(※7)

まずは十分な睡眠時間を確保し、寝つきが悪い、眠りが浅い場合は以下の方法を試してみましょう。

睡眠環境を見直す

「寝かしつけに時間がかかっている」「長時間ベッドでごろごろしている」ような場合は、生活リズムや寝る環境を見直すと寝つきがよくなる可能性があります。

たとえば、下記のような生活習慣を取り入れたり、寝室を居心地のよい空間に整えたりする方法が効果的です。

・寝る20~30分前のルーティンを決める
・休日も平日と同じ時間に就寝・起床する
・テレビは早め(理想は寝る2時間前)に消す
・寝る3時間前に食事をすませる
・カフェインを含む食べ物、飲料は就寝5~6時間前から控える(過剰摂取に注意)
・就寝の2~3時間前に入浴する
・寝る前は照明を「電球色(オレンジ色)」にする
・部屋の温度を、夏は25℃前後、冬は16~19℃の範囲にする

「子どもが寝る前は家族みんなの読書タイムにする」「休日の朝に早起きできるような予定をいれる」など、子どもが取り組みやすい工夫をすると継続しやすいですよ。

日中に日光を浴びる、からだを動かす

睡眠には、日中の過ごし方も重要です。

日中に日光を浴びると、概日リズム(サーカディアンリズム)の調節作用をもつ「メラトニン」が分泌されるため、睡眠リズムがずれて昼夜逆転してしまうのを防ぐ効果が期待できます。

とくに、起床直後に日光を浴びるのが、もっとも効果的です。起きたらまずはカーテンを開けて、太陽の光を部屋の中にいれるようにしましょう。毎朝朝食を摂ることも体内時計をリセットする習慣のひとつです。

また、運動習慣がある人は、睡眠障害(不眠)が少ないことがわかっています。(※8)

買い物ついでに散歩をしたり、家でダンスや体操をしたり、スポーツゲームをしたりなど、親子でいっしょにからだを動かす習慣をつけましょう。

睡眠障害は病院に相談したほうがよい?

睡眠障害のなかには、アデノイド・扁桃肥大や肥満が主な原因の「睡眠時無呼吸症候群」や別の疾患が隠れている可能性があり、治療が必要になる場合があります。

・前述した予防・改善方法を実施しても改善が見られない
・寝ている途中に呼吸が止まっている
・寝入りばなや夜間にからだの異常な動きがある
・日中の眠気が強すぎる
・子どもの睡眠障害によって親の日常生活にも支障が出ている

上記のようなできごとが1か月以上続くときは、かかりつけの小児科や睡眠障害の専門医に相談したほうがよいでしょう。

また、睡眠障害が学習や学校生活に影響している場合、学校とも連携して症状の改善に働きかけるのが理想的です。

子どもの睡眠障害に気を付けよう

今回は、子どもの睡眠障害の症状や成長への影響、対策方法についてご紹介しました。

睡眠障害を予防・改善するには、睡眠リズムを整える生活習慣や睡眠環境が大切です。

また、睡眠障害によって日常生活への影響が出ている場合、家庭だけでなく、医療機関や学校などと協力して、症状の改善に働きかけましょう。

子どもの睡眠障害を予防・改善して、子どもの健やかな成長を促しましょう!

<参考文献>
※1 e-ヘルスネット「子どもの睡眠」
※2 昭和大学病院附属東病院睡眠医療センター「子どもの睡眠障害」※3 e-ヘルスネット「概日リズム睡眠障害」
※4 e-ヘルスネット「睡眠時随伴症」※5 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所睡眠・覚醒障害研究部「睡眠時随伴症」※6 e-ヘルスネット「睡眠不足や睡眠障害、子どもへの大きな影響」※7 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド 2023(案)」※8 e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」

PROFILE

医師
木村 眞樹子(きむらまきこ)

都内大学病院、KDDIビルクリニックで循環器内科および内科に在勤。総合内科専門医・循環器内科専門医・日本睡眠学会専門医。産業医として企業の健康経営にも携わる。自身の妊娠・出産、産業医の経験を経て、予防医学・未病の重要さと東洋医学に着目し、臨床の場でも西洋薬のメリットを生かしながら漢方の処方を行う。症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」でもサポートを行う。

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