【2024年引退調教師(後編)】中野栄治、加用正、小桧山悟、松永昌博師の成績を振り返り「勝負レース」の気配を探る

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引退まで残り2週間

競馬界は2月が別れの季節。前編では安田隆行、飯田雄三、高橋裕調教師の成績等を紹介した。今回も前回同様に通算成績、主な活躍馬を振り返っていき、最後に狙いたいポイントを探っていく。

スプリント王トロットスターを輩出 中野栄治調教師

後編のはじめは、1953年3月31日うまれの中野栄治調教師。ジョッキーとして現役時代には1990年の日本ダービーをアイネスフウジンで制し、東京競馬場が「ナカノコール」に包まれたのが印象的だった。

1996年3月からは調教師に転身し、2月16日時点で【290-307-319-5657】勝率4.4%、連対率9.1%、複勝率13.9%の成績をあげている。キャリアハイは2000年の【27-10-16-194】で、全国リーディング19位という成績だった。

中野栄治厩舎のJRA重賞制覇は8勝で下記の5頭であげている。

<中野栄治厩舎 主な活躍馬一覧>
トロットスター(1996年産/34戦8勝/01年 高松宮記念など重賞4勝)
タイムフェアレディ(1998年産/25戦3勝/01年 フラワーC)
ノットフォーマル(2012年産/34戦3勝/15年 フェアリーS)
カイザーメランジェ 現役(2015年産/51戦6勝/19年 函館SS)
ブローザホーン 現役(2019年産/18戦6勝/24年 日経新春杯)

代表格は2001年JRA賞最優秀短距離馬に輝いたトロットスターだ。しかし、個人的には黛弘人騎手に初重賞制覇をもたらした2015年のフェアリーSノットフォーマルが忘れられない。元所属厩舎の馬で、しかも同馬の担当助手は実父の黛幸弘さん。中野調教師としても実に14年ぶりの重賞制覇。競馬の一つのロマンが集約されているとも感じた。

2023年以降は【17-32-23-265】。中山競馬場で【5-9-7-47】で複勝回収率177%、小倉競馬場では【3-1-1-30】単勝回収率146%を記録。残り2週は中山、小倉開催があり最後まで目が離せない存在だ。

長く活躍する馬を育てた「いぶし銀」 加用正調教師

続いては1953年5月17日うまれの加用正調教師。騎手として559勝をあげ、調教師として2月16日時点で【637-585-599-5709】勝率8.5%、連対率16.2%、複勝率24.2%を記録。2006年には【31-29-23-188】の成績で全国リーディング21位となっている。JRAでの重賞勝ち数は14勝で、その他、JpnⅠを2勝している。

主な活躍馬は下記の5頭を紹介したい。

<加用正厩舎 主な活躍馬一覧>
エイシンガイモン(1993年産/44戦7勝/96、97年 関屋記念など重賞3勝)
ランニングゲイル(1994年産/32戦4勝/97年 弥生賞)
リミットレスビッド(1999年産/63戦14勝/06年 ガーネットSなどJRA重賞2勝)
ドリームバレンチノ(2007年産/55戦12勝/14年 JBCスプリントほかJRA重賞2勝)
ミツバ(2012年産/52戦11勝/19年 川崎記念)

改めて驚くのは出走回数の多さだ。いかに馬を鍛え、そして日々の管理を徹底していたのかを数字が証明している。

2023年以降の成績は【19-25-19-202】。その中でも坂井瑠星騎手とのコンビでは【2-3-0-1】で連対率83.3%を誇っている。残り2週間でこのタッグを見つけたら是非狙ってみたい。

ゴリラ愛好家という顔も持つ 小桧山悟調教師

続いては小桧山悟調教師。ここではJRA公式サイトに合わせて「小桧山」と表記させていただく。1954年1月20日うまれで2月16日時点の成績は、【218-301-377-6417】勝率3.0%、連対率7.1%、複勝率12.3%を記録。キャリアハイは2003年の【16-16-16-261】で全国リーディング90位だった。

プライベートではゴリラ愛好家の一面を持ち、2016年にはゴリラの写真集を発売し話題になった。そのことがつい先日の様に思い出される。

JRA重賞は5勝で、勝ち馬の3頭を紹介する。

<小桧山悟厩舎 主な活躍馬一覧>
イルバチオ(1997年産/50戦7勝/03年 アイビスSD)
スマイルジャック(2005年産/58戦5勝/08年 スプリングSなど重賞3勝)
トーラスジェミニ(2016年産/43戦8勝/21年 七夕賞)

2023年以降の成績は【6-4-7-330】。芝【5-0-1-121】、ダート【1-3-6-193】で出走回数の少ない芝の方が好成績。特に元厩舎所属の原優介騎手が7、11番人気の馬で穴をあけている。芝のレースに原騎手とのコンビで出走してきたときは、最後に狙ってみても面白いかもしれない。

平地からジャンプまで活躍馬を輩出 松永昌博調教師

最後は1953年12月17日うまれの松永昌博調教師。騎手としてはナイスネイチャの主戦騎手として人気を博し、JRA通算544勝をあげた。

調教師としては2月16日現在【370-391-340-3397】勝率8.2%、連対率16.9%、複勝率24.5%を記録。キャリアハイは2013年の【33-27-23-159】で全国リーディング11位だった。常に20勝前後の成績を安定して残し続けた。

JRAの重賞勝ちは11勝。主な活躍馬は下記の通りとなる。

<松永昌博厩舎 主な活躍馬一覧>
エイシンボストン(2002年産/52戦7勝/09年 東京JSなど重賞2勝)
マルカフェニックス(2004年産/34戦6勝/08年 阪神Cなど重賞2勝)
エイシンアポロン(2007年産/19戦4勝/11年 マイルCSなど重賞3勝)
ウインバリアシオン(2008年産/23戦4勝/11年 青葉賞など重賞2勝)
モルトベーネ(2012年産/69戦18勝/17年 アンタレスS)

重賞を複数勝利した馬が4頭。他にもエイシンオスマン、ノボリディアーナなどがいる。また、JRA重賞には手が届かなかったが、地方交流重賞を中心に活躍したラプタスも松永昌博厩舎の管理馬だった。

2023年以降は【15-21-14-211】。下記の4名が騎乗してきたときは要注意だ。

小沢大仁【6-5-2-68】単勝回収率123%
幸英明【3-3-2-16】単勝回収率169%
岩田康誠【2-0-0-3】単勝回収率164%
森一馬【0-3-2-7】複勝率41.7%

15勝中11勝を3人であげている。また勝ち星はないが、森一馬騎手は高い複勝率を記録しており、馬券の相手からは外せない。

いよいよ、今年は3月5日をもって7名の調教師たちがターフから卒業する。残り2週、引退していく7名に敬意を払いながら、最後まで雄姿を見届けたい。

《ライタープロフィール》
高橋楓。秋田県出身。
競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』にてライターデビュー。競馬、ボートレースの記事を中心に執筆している。



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