【今週のサンモニ】住民関係をズタズタにする『サンモニ』・反原発活動家|藤原かずえ 『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。

原子力発電を罵るコメンテーターたち

2024年2月18日の『サンデーモーニング』は、高レベル放射性廃棄物の地層処分場の場所が決まっていないことを根拠に、コメンテーターが原子力発電を罵るというヒステリックな展開になりました。最初から説明して行きます。

関口宏氏:2月13日、いわゆる核のごみの最終処分問題、この日NUMO(原子力発電環境整備機構)は、北海道の寿都町と神恵内村で行ってきた調査結果を発表、2つの自治体とも次の段階の調査候補地に相応しいと結論付けています。最終処分場の受け入れに名乗りを上げた自治体には、論文などで地盤を調べる「文献調査」で20億円、ボーリングなどを行う「概要調査」で70億円と多額の交付金が入ります。今後2つの自治体が次の段階に進むには、北海道知事の同意も必要になるのですが、その鈴木知事は…

北海道・鈴木直道知事(VTR):現時点で反対の意見を述べると繰り返し申し上げているが、何も書いていない。

関口宏氏:NUMOの報告書には、反対派の意見に触れていないと苦言を呈しました。改めて問題の難しさが浮き彫りになっていますが、中西さんがさらに詳しくご案内致します。

原発の使用済み燃料の処分にあたっては、再処理されるまでに原発の敷地内あるいは中間貯蔵施設で冷却して保管されます。この保管には、湿式と乾式の2つの方式があります。湿式は使用済燃料を水槽(使用済燃料プール)に収納し、貯水を電動で循環させることよって冷却・保管するものです。

一方、乾式は湿式で十分冷却した使用済燃料をキャスクという放射性物質を遮蔽する金属製容器に収納し、自然の空気で冷却するものです。

https://criepi.denken.or.jp/koho/topics/201211vol14.pdf

最終処分まで数百年程度の時間稼ぎ

現在の使用済燃料の保管は多くが湿式ですが、乾式も次第に増えてきています。キャスクは野外にも設置でき、その寿命は50~100年程度とされています。

ただし、六ヶ所村の「中間貯蔵」の敷地を利用するなどして、この乾式による「暫定保管」を繰り返せば、最終処分まで数百年程度の時間稼ぎが可能になると考えられます。

使用済核燃料を有効活用!「核燃料サイクル」は今どうなっている?

最終処分場の選定は、この猶予期間内に行えばよいことになります。数百年という時間は、岩盤の物理探査技術・廃棄物の再処理技術・放射性物質の遮蔽技術をはじめとする工学技術の向上を十分に期待できる時間です。

考えてみましょう。産業革命から現在に至るまで僅か200年程度しか経過していません。キャスクの長期耐久性が改善され、軍事的セキュリティの問題が解決すれば、地層処分自体も必要なくなる可能性すらあります。

なお、高レベル放射性廃棄物の地層処分にあたっての地質環境・工学技術・安全評価に関する科学的体系は20年以上前に完成しており(JNC2000年レポート「わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性」)、すぐにでも処分場を建設可能です。

以上を踏まえた上で『サンデーモーニング』のコメンテーターの発言を紹介したいと思います。

わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性—地層処分研究開発第2次取りまとめ—

「どうしようもない」と根拠なく強弁

田中優子氏:原子力発電はどうしようもない発電方法だ。それをまた岸田政権が増やすと言っているのはとんでもないことだ。

原子力発電は、
①電気料金の削減という経済性、
②生命リスクの削減という安全性、
③温室効果ガスの削減という環境性

のいずれにも大きく貢献するので、世界が推進している発電方式です(下図参照)。

①経済性
②安全性
③環境性

根拠を示さずに原子力発電を「どうしようもない」と罵るのは、単なる【強弁 reason against reason】に他なりません。

反証するなら科学的な論文で

田中優子氏:特に地球科学の専門家約300人が、昨年10月に集まって、結論として「日本に適地はない」と声明を公表している。なぜかというと、地殻変動が激しい。私たちが散々経験しているようにいろいろな地震が起こる。その廃棄物を10万年にわたって地下に閉じ込める。それができるという場所を選ぶのが不可能だという結論を出している。

あえて言えば、実務経験がない学校の先生が何人も集まったところで何の権威にもなりません。

地学の専門家ら300名余による地層処分に関する声明文 | 原子力資料情報室(CNIC)

そもそも科学の専門家であるのならば、根拠不明の結論を振りかざすのではなく、科学的な論文でJNC2000年レポートに反証する必要があります。

また、この問題における地質環境を妥当に評価できるのは、プロパーな地学の先生ではなく、地質工学の研究者です。

何よりも、田中氏のような精緻な工学も理学も経済学も理解していないド素人が、公共の電波を使って的を射ない【権威論証 argument from authority】を展開し、高圧的にプロジェクトを否定する方がとんでもないと言えます

聞きかじりのナイーヴなプロパガンダ

田中優子氏:岩盤は強いところもあるでしょうけれど、結局不均質だし、亀裂が多いし、活断層が未確認のところがたくさんある。そうすると、何が起こるかというと、地下水の流れが変化したり、亀裂とか断層ができたりすると放射性物質が漏れ出る可能性がある。そういうことを考えて、その科学的な議論に立ち戻るべきだという結論がもう出ている。にもかかわらず、継続するとか増やすとか言っていること自体、おかしいと思わなければいけない。

本当に支離滅裂です。少なくとも地層処分は、現実に広範に存在する堅硬緻密で均質で亀裂密度が少なく活断層が存在しない岩盤を選定して実施します。

このような岩盤は、例えば、東京電力(株)神流川地下発電所・関西電力(株)大河内地下発電所・波方国家石油ガス備蓄基地など、日本国内にいくらでも存在します。

ちなみにこれらの岩盤は10万年どころか約1億年前から堅硬緻密の状態を保っています。そもそも、地層処分に必要なエリアは、たかだか3km四方であり、このエリアが確保されればよいのです。

また、地下水シナリオについても、近年のグラウチング技術の向上で超低透水性の岩盤を形成することが可能になりました。田中氏の主張は論理的に破綻しています。聞きかじりのナイーヴなプロパガンダをやめて、科学的議論に立ち戻る必要があるのは田中氏の方です。

住民に不安を与えているのは……

安田菜津紀氏:文献調査の北海道寿都町に在住している方に話を依然伺う機会があったが、賛成なのか反対なのかというところで住民同士がズタズタにされたり、それによってこの調査を話題に出したりも、声を上げるということも非常に困難なこともあると辛さを語って下さった方もいた。

住民同士の関係をズタズタにしている元凶は、いい加減なことを公共の電波で放送して住民に不安を与えている『サンデーモーニング』や、地域に入り込んであることないことを吹き込んでいる反原発活動家です。

安田菜津紀氏:でもそもそもこれって、受け入れ自治体の問題に矮小化して行くのが問題で、構想そのものが不条理で、やはり出口を決めずに推し進めてきた原発政策そのものの問題だ。

何を言っているのかサッパリ理解できません。

完全な透明性を持った国内外の膨大な研究成果を基にした科学的報告書をしっかりと開示した上で、地域の自由意思に基づいて立候補を募集し、地域の自由意思に基づき可否を判断してもらう民主的な制度のどこが「自治体の問題に矮小化」なのでしょうか。

このプロジェクトにおいて、住民の意思を確認せずに最初から出口を決めているような専制国家など世界中どこにもありません。何様のつもりなのでしょうか。

放射性廃棄物処分の責任を他者に押し付け

安田菜津紀氏:東日本大震災だったり、直近では能登半島地震もそうだが、本当にこれでいいのということがこれだけ突き付けられてきた。そこに立ち戻らなければならない。

東日本大震災での福島第一原発の事故は津波によるものであり、活断層のずれによって原子炉が破壊されたわけではありません。能登半島地震で志賀原発の安全性は十分すぎる程の余裕をもって完全に確保されました。

そもそも、地層処分の対象となる300メートル以深の岩盤は、地表面という自由面が存在しないため、地震が発生してもほとんど動的変位が発生しません。安田氏が何を突き付けられてどこに戻らなければならないのか完全に意味不明です。

このように科学的な根拠も示さずに「本当にこれでいいのか」なる言葉で、人々に不合理な不安を与えるのは、本当に迷惑なことです。

あえて言わせてもらえば、原発の電力を享受してきた現代を生きる田中氏と安田氏が、高レベル放射性廃棄物処分の責任を完全に他者に押し付け、非難しているのは極めて理不尽です。現代を生きる世代はすべて同じ境遇です。

その意思にかかわりなく、1963年から高レベル放射性廃棄物は現実に存在してしまっているのであって、その存在に文句を言ったところで、なくすことはできません。高レベル放射性廃棄物の処分は、現代を生きる世代に共通に課せられた【先験的 apriori】な義務なのです。

なお、放射性廃棄物が今後増えようが、同じように処分しなければならないことに変わりありません。どうせ処分しなければならないのであれば、経済性・安全性・環境性に優れた原発を利用する選択は合理的と言えます。

いずれにしても、以上のような責任の存在を考えることなく、高レベル放射性廃棄物の処分に反対するだけで代案を示さない人は、論理的に言えば、将来世代にタダ乗りする利己的なフリーライダーに他ならないと言えます。

藤原かずえ | Hanadaプラス

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