特集は85歳の報道カメラマンです。ベトナム戦争などの戦場で写真を撮り続けてきた長野県諏訪市在住の石川文洋さん。国内では東日本大震災など被災地も撮影してきました。能登半島地震も自分の目で確かめ、伝えたいと2月2日に現地に入りました。
石川県輪島市。車から降り立ったのは、諏訪市在住のカメラマン石川文洋さんです。
地震で火災が起きた輪島の朝市。
倒壊したビル。
市内では102人が犠牲となり行方不明者は9人(2月19日午後2時時点)。
多くの人が避難を続けています。
石川さんは、しばし無言でシャッターを押し続けました。
報道カメラマン・石川文洋さん(85):
「ニュースでも新聞でも詳しく書かれている。映像も出ているけど自分で来てみないと分からないことがある。戦場でもそうです、沖縄でもそうです。だからカメラマンはまずそこへ行ってみようと。だから本来ならばウクライナにも、パレスチナにも行ってみたい」
85歳の報道カメラマン。現場に足を運び、写真を撮り、それを伝えるー。
その流儀は戦場を駆け回ったときと変わっていません。
石川さんは沖縄出身。ベトナム戦争ではアメリカ軍に従軍し生々しい戦場の写真を撮り続けてきました。
その後も世界各地の紛争地域を取材。
30年ほど前から諏訪市に居を構え、国内では雲仙普賢岳の噴火災害や東日本大震災の被災地を見つめてきました。
戦場も被災地もある一点で同じだと石川さんは話します。
報道カメラマン・石川文洋さん:
「普通の生活ができることが平和。自然災害ではあるけれど平和ではない」
この日は知り合いの住民男性に案内してもらいながら輪島市を取材しました。
石川文洋さん:
「前の6強の地震の時に対策を立てておけば」
住民:
「これだけの死んでいる人は出なかった」
こちらは農機具店を経営する夫婦。倉庫が全壊し、修理中の製品なども潰れました。
自宅で生活できていますが、一帯では断水が続いています。
住民:
「出荷するもの(農機具)が何もない。どれだけ農家が頑張ってくれるか」
石川さんは左耳がほとんど聞こえません。右耳で住民の話を聞きメモを取りました。
一瞬にして、それまでの日常が消えてしまう災害。
案内した住民・加門嗣達さん:
「朝市のおばちゃんらが終わってからコーヒー飲んで帰る店なんですよね」
石川文洋さん:
「本当ににぎやかだった。それがこんなになってしまうのか。むなしさを感じるというか。(失われたのは)人の歴史、店の歴史、街の歴史でもある。本当に復興してほしいです」
地震発生から1カ月余り。
少しずつ前を向き始めた住民もいます。
南谷良枝さん:
「元気でおらな、こうなった以上」
朝市で干物や「いしる」などの加工品の店を営んできた南谷良枝さん。
石川文洋さん:
「これは、すごいですね」
敷地に走る大きな地割れ。
店舗ばかりか、地震で加工場も大きな被害が出ました。
朝市で加工品店を経営・南谷良枝さん:
「フグの卵巣のぬか漬けとか、ニシンのぬか漬けとか、何年もかかって漬けていたものが建物の下敷きになって。いしる(魚醤)も2トン樽が2本仕込んだんですよ。それも全部割れてしまって」
石川文洋さん:
「今後はどういう見通しですか」
朝市で加工品店を経営・南谷良枝さん:
「金沢に行って小さな加工場を一から造ってやろうかなと。やっぱり私たちは輪島が大好きなので、いずれ帰ってきたいと思っているので、生きるために少し輪島を離れるだけ」
輪島の現状や住民の思いをじかに知ることができた石川さん。
取材した内容を早速、記事にして通信社や出身地・沖縄の新聞社に送ることにしています。
報道カメラマン・石川文洋さん:
「コンビニ行ったり、映画を見たり、居酒屋に行ったり、それが平和ですよ。平和でない生活をしている人たちがいるんだよということを知らせたい」