自動車部品メーカーが手掛ける「急須」 軽くて割れないプラスチック製 ディズニーとのコラボ商品も

テレビ愛知

自動車業界が大きく変化する中、愛知県の自動車部品メーカーが、車とは全く関係のない「急須」を開発しました。ディズニーともコラボレーションをした急須。その製作秘話に密着しました。

自動車用のタンクやノズルなどを製造

愛知県幸田町にある鈴木化学工業所。ここでは自動車用のタンクやノズルなど、さまざまなプラスチック部品が作られています。創業70年以上、自動車王国・愛知を下支えしてきました。

鈴木化学工業所の売上高推移

しかし新型コロナウイルスの影響で車の製造台数が落ち、発注が減りました。そこに電気自動車の台頭で、さらなる不安に。電気自動車・EVの部品数は約2万点。エンジン車の3万点から大きく減るとみられています。

仕事が減るかもしれない。鈴木化学工業所には、強い危機感があったといいます。

鈴木化学工業所 小幡和史社長

鈴木化学工業所 小幡和史社長:
「下請けという仕事のやり方に限界を感じていて、言われたことやるという会社はたくさんあるわけで。言われたことだけをやっていては選ばれる会社にはならないんじゃないかなという不安はありました」

プラスチック製の急須に活路を見いだす

プラスチックの急須

そこで、起死回生の一手として鈴木化学工業所が作ったのが「プラスチックの急須」です。特殊なプラスチックの素材を使うことにより、熱いお湯を急須に入れても問題ありません。

高い溶接技術で密閉

鈴木化学工業所 井上邦之さん:
「自動車部品の溶着という技術を利用して製品を作っています。この部分を溶かしてくっつけます」

外気温とお湯の間に空洞があります。高い溶接技術で密閉させることで保温性が高まるのです。そして、もう1つの特長が耐久性です。

約10メートルの高さから急須を落とす実験

約10メートルの高さから落下させても頑丈な作りに

約10メートルの高さから急須を落としました。アスファルトに強く打ちつけられて転がっていきました。急須を見てみると、割れていません。

佐野文香さん

この急須づくりは現場の社員やパートに大きな変化をもたらしたと言います。入社2年目の佐野文香さんです。

佐野文香さん:
「自動車部品の検査だったり、十年急須の検査だったりをしています。たくさん製品があるし、それがどこに使われているのかも全然分からない状態でした」

十年急須を家族にプレゼント

この急須を作るようになってからは、仕事への意欲がより強くなったといいます。

佐野さん:
「親戚や祖父母にプレゼントとして渡して、やはり目に見える形で喜んでもらえる姿も見られるので、すごくうれしいです。自動車の部品ではできないことなので、十年急須によって、いっそうやりがいを感じています」

ディズニーとコラボした十年急須

この十年急須はディズニーとコラボレーションした商品も手掛けています。

十年急須で蓄えた知識と技術を、自動車部品に恩返し

小幡和史社長:
「B to Cの十年急須を作って、直接お客さんの声を聞けるのは、私は大変うれしいですし、社員もやりがいを感じています。十年急須で蓄えた技術知識をまた自動車部品に恩返し、お返しをしたいと思っています」

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