国交省/建設業法・入契法一括改正案、「著しく低い労務費」見積もり禁止

国土交通省が今国会に提出予定の建設業法と公共工事入札契約適正化法(入契法)の一括改正案の概要が明らかになった。適正な労務費の確保と行き渡りに向けた法規制の導入が最大のポイント。中央建設業審議会(中建審)が「労務費に関する基準(標準労務費)」を勧告し、著しく低い労務費などによる見積もり・契約を禁止する規定を新設する。違反した場合、発注者は国交大臣などによる「勧告・公表」を可能とし、建設業者は注文者と受注者ともに現行規定に基づく「指導・監督」の対象とする。
一括改正案は3月上旬にも国会に提出する。▽労働者の処遇改善▽資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止▽働き方改革と生産性向上-の三つの視点で必要な措置を講じる。資材高騰分の転嫁促進策と合わせ、労務費や賃金が確実に行き渡る環境をつくり、労働時間の適正化と現場管理の効率化も推進することで担い手の確保と持続可能な建設業の実現を目指す。
中建審の権限として標準労務費の作成・勧告を追加。その上で、建設業者に契約締結に際し労務費や材料費を内訳明示した見積書の作成に努めるよう求め、その内訳額が施工に通常必要な額を著しく下回る場合の禁止規定を新設する。
受注者から注文者(発注者含む)への見積もり提出、注文者から受注者への見積もり変更依頼で、著しく低い労務費などの設定を禁止。これにより注文者と受注者の双方に規制の網を掛ける。違反して契約した発注者は公共と民間を問わず勧告・公表の対象にする。
既存規定の「不当に低い請負代金の禁止」には、受注者による総価での原価割れ契約を禁止する条項を追加する。現行の注文者を対象とした禁止規定は取引上の地位の不当利用を前提とし、違反した公共発注者には勧告・公表、民間事業者には独占禁止法を所管する公正取引委員会への「措置請求」で対応している。この規定を残しつつ、新たに受注者を規制対象に加えダンピングを抑止する。
建設業者の責務も追加し、労働者の処遇確保を努力義務化する。労働者の公正な評価に基づく適正な賃金の支払いなどに努めるよう求める。その上で国交大臣に調査などの権限を新たに付与。建設業者による処遇確保の実施状況を調査・公表し、その結果を中建審に報告する。国交省は法改正に伴い、調査などに当たる組織体制を強化し、処遇改善に関する施策のPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを回すことで継続した取り組みを推進する。

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