『Eye Love You』三角関係に不穏な空気が立ち込める 花岡の本音を知った侑里の苦悩

「ずっと好きだった……」。こんなにも胸が苦しくなる、言葉にならない告白があるだろうか。

火曜ドラマ『Eye Love You』(TBS系)第5話は、歯がゆい勘違い状態が続いた先に、大きなすれ違いへと発展。本音を怖がる侑里(二階堂ふみ)と、本音でぶつかることしかできないテオ(チェ・ジョンヒョプ)、そして本音を隠すことで愛を貫く花岡(中川大志)との三角関係が加速していく。第1話から急接近し、お互いの想いが盛り上がっていった侑里とテオ。侑里が自分の気持ちに素直になり「この恋に気づいて」という花言葉の意味を込めたバレンタインチョコを渡すこともでき、ついに2人は両想いに……と思っていた。だが、ここに来て不穏な空気が立ち込める。

侑里は、テオが自分を見つめて「ヌナ」という心の中でつぶやいた声を聞き、どういう意味なのかと動揺する。テオがそう言ったのは、左耳に手を当てて何かを察した様子の侑里を見て、かつてテレパスの少女が出てくる絵本を読んでくれたお姉さんを思い出したからなのだが、そんな過去を知らない侑里は、思わずネットで意味を検索してしまう。すると、「ヌナ」とは韓国人男性が親しい年上女性に対して使う「お姉さん」という意味であることがわかるのだが、なかには恋愛対象ではない場合もあるということを知る。心が読めるテレパスの能力を持つからこそ、言動から本音を推測したり、直接言葉で確かめることが苦手になってしまった侑里。そのうえ、テオは異文化のバックボーンを持つことから心の声が聞こえたとしても、それが自分の持つ感覚と一致しているのかもわからない。

テオに恋をしていることを自覚した今だからこそ、テオの本当の気持ちが知りたくてたまらない。同時に、本音を知ることで傷つく怖さも増していた。もしこれまでのテオの愛情表現は、ただ親しげに「お姉さん」と懐いてくれているだけだったとしたら……と、不安に駆られるのだった。一方、テオはテオで侑里にとってビジネスパートナーである花岡が特別な存在であることがわかり、その存在を超えられないのではないかと悩み始める。侑里が仕事でミスをしてしまったときも、真っ先に頼りにするのは自分ではなく花岡で、2人の間に強い絆があることを見せつけられてしまう。

加えて、大学院の先輩・小野田(清水尋也)の存在がさらにテオの心をかき乱す。テオの好きな人をショコラティエの真尋(山下美月)だと思い込んだ小野田。真尋のことを“テオの好きな人”と呼ぶものだから、誰もそのすれ違いにツッコミを入れることができない。テオのことで“テオの好きな人”から恋愛相談を受けたという小野田だが、テオとしては2人で会っていたことも決して嬉しい話ではない。そして真尋が小野田に渡したバレンタインチョコが、侑里からテオに贈られたものと同じチョコだということも判明。他の人にも配ったものをくれた=義理チョコなのだと落ち込むことに。

とはいえ、どんどん本音を知ることに臆病になっていく侑里に、いつだってストレートに本音をぶつけてくれるテオ。そんなテオを恋しく思う侑里に、いつもの「ご飯食べましたか?」ではなく「会いますか?」という言葉をかけるのも、一番の目的が「会いたい」という意味であることがダイレクトに伝わってきて胸がキュッとなる。そして言葉で伝え切れない気持ちを込めたキス。心の中で韓国語の「サランヘ」に続いて、日本語で「愛してる」とつぶやいたのは、侑里がテレパスだと感じているからだろうか。しかし、思わず「私も」と口をついた侑里に、驚いたような表情を浮かべたところを見ると、その確信はまだないということか。

まるでコントのように進んでいく勘違い状態。それでも侑里とテオがお互いを強く想い合っていることを知っているからこそ、やきもきしながらもその状態を微笑ましい気持ちで観ていられた。しかし、そんな2人のもどかしくも甘酸っぱいすれ違いが、ラスト5分で思わぬ方向に進んでしまう。そのきっかけは花岡の心の声が侑里に届いてしまったこと。侑里にテオとの恋愛を応援する言葉をかけながら「これでいい」「俺はもういい」と自分を言い聞かせる花岡。そして、口にすることはもちろん、決して悟られまいとしてきた「ずっと好きだった……」という苦しい本音が侑里の耳に流れ込んでくる。

そのさみしげな眼差しの中に、どれほどの葛藤があったことか。その「ずっと」の言葉の中に、どれだけ飲み込んだ言葉があったか。だが、そんな花岡の本音を知ったことを誰にも告げることができない侑里の苦悩も計り知れない。誰よりも人の心を知ることができる能力を持ちながら、一番大切に思ってきた人の想いに気づくことさえできなかったという罪悪感もあるだろう。そして、花岡の本音を知ってしまった今、自分だけ素直な気持ちで恋をすることに抵抗感が生まれたのだろうか。

「僕のこと好きではありませんか?」と問うテオに「うん。ごめんなさい」と涙を隠しながら答えた侑里。その言葉に目を赤くして「うん」とだけつぶやいて立ち去るテオ。いつも言葉数の多いテオだけに、その「うん」の2文字にどれだけの想いが詰まっているのかを想像すると、喉の奥が詰まるような感覚になった。誰よりも自分を支えてきてくれた花岡。誰にも開けなかった心を溶かしてくれたテオ。どちらも魅力的過ぎて選ぶことなんてできない、という視聴者も続出しているなかで、侑里はどんな決断をするのだろうか。ついに第1章が完結するという次回が待ち遠しい。

(文=佐藤結衣)

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