「庄や」「磯丸水産」「はなの舞」の居酒屋大手が4、5期ぶりに営業黒字に 中小との差が鮮明に

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「庄や」などを運営する大庄<9979>、「磯丸水産」などを運営するSFPホールディングス<3198>、「はなの舞」などを運営するチムニー<3178>の上場大手居酒屋チェーンがそろって営業黒字を達成する。

大庄は5期ぶり、SFPホールディングスとチムニーは4期ぶりの黒字転換となる。コロナ禍の中、居酒屋は厳しい状況に追い込まれたが、ようやく出口が見え始めたといえそうだ。

ただ、東京商工リサーチによると、2023年の居酒屋の倒産件数は176件で前年度よりも46%ほど増えた。

倒産の要因となった食材費や光熱費、人件費などのコストの上昇は続いており、居酒屋業界は引き続き厳しい環境下にある。2024年は居酒屋業界で大手と中小との差が鮮明になりそうだ。

新規出店や、メニューの改定が奏功

大庄は2024年8月期第1四半期決算(2024年1月発表)で営業損益が黒字化し、通期黒字化に向け順調なスタートを切った。

人流の改善やインバウンド(訪日観光客)の増加などに加え、新規出店や業態変更の推進、メニューの改定などが奏功し、営業利益が9400万円(前年同期は6億2200万円の赤字)の黒字となった。

本業の稼ぐ力を示す営業利益率は0.78%と低いが、通期の営業利益率1.46%(営業利益7億5000)の実現に向けた第一歩となる。

2024/8は予想

既存店の業績が堅調に推移

SFPホールディングスは2024年2月期第2四半期決算(2023年10月発表)で、通期の業績予想を上方修正した。

売上高を当初予想より10億円多い280億円(前年度比22.2%増)に、営業利益を7億円多い17億円(前年度は7億5400万円の赤字)にそれぞれ引き上げた。

磯丸水産を中心とする既存店の業績が堅調に推移し、インバウンドも順調に回復したのに加え、魚介類の値上がりや光熱費の上昇も想定の範囲内にとどまったのが要因だ。

2024/2は予想

宴会などの需要が回復

チムニーも2024年3月期第3四半期決算(2024年2月8日発表)で、通期の業績予想を上方修正した。

売上高を当初予想より5億円多い255億円(前年度比26.5%増)に、営業利益を4億円多い11億円(前年度は16億6700万円の赤字)にそれぞれ引き上げた。

宴会などの外食需要が大きく回復したのに加え、メニューの改定によるコスト高への対応が功を奏した。

飲食店の倒産が増加する可能性も

東京商工リサーチによると、2023年の飲食業の倒産(負債1000万円以上)件数が893件(前年度比71.0%増)となり、コロナ禍で倒産が急増した2020年(842件)を超え過去最多を更新した。

このうち居酒屋の倒産件数は全体の20%ほどを占めており、負債総額では全体の半分を占めた。

コロナ関連支援策が終了したのに加え、売上高がコロナ禍前の状態に戻らない中、人手不足や物価高が収益を圧迫したのが倒産件数増加の要因で、東京商工リサーチでは「今後も廃業や倒産が増加する可能性が高い」としている。

厳しい経営環境にある居酒屋業界で、出口の見え始めた大手チェーンだが、果たしてこのまま順調に回復軌道に乗ることはできるだろうか。

文:M&A Online

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