ロズベルグ率いる王者RXRとサインツのASXEが勝利。新時代の“2強”形成へ/エクストリームE開幕戦

 創設4年目のシーズンを迎えたワンメイク電動オフロード選手権『エクストリームE』が、2月17~18日にサウジアラビアのジェッダで開幕。ピュアEV最後となるシーズン4のダブルヘッダー初戦は、元F1王者ニコ・ロズベルグ率いるロズベルグXレーシング(RXR)が「シリーズ史上最僅差」で先勝を飾ると、続く日曜第2戦は“帝王”カルロス・サインツのアクシオナ・サインツXEチーム(ASXE)が圧勝で制するなど、新時代の“2強”を形成する勢いを披露した。

 昨季終了直後に撤退を発表したABTクプラXEに始まり、2022年にはシリーズチャンピオンを獲得したルイス・ハミルトン率いるX44も、開幕を目前にして電撃的な撤退を表明。さらに北米から『NO.99 GMCハマーEVチップ・ガナッシ・レーシング』のエントリー名で参戦してきた名門チップ・ガナッシ・レーシング(CGR)や、世界的DJのカール・コックス率いるカール・コックス・モータースポーツなども相次いで活動休止を発表するなど、来季2025年には世界初の水素燃料モータースポーツ『エクストリームH』へと移行するプランを表明しているシリーズは、まさに激動のオフを経験した。

 その一方で、昨季2023年は最後の1周までタイトルに挑んだマティアス・エクストロームと、2022年にセバスチャン・ローブとともに王座を獲得したクリスティーナ・グティエレスの強力ペアを獲得したNEOMマクラーレンXEや、チームの重鎮ライア・サンズが引き続き女性リードドライバーを務めるASXEは、活動休止を決めたX44からフレイザー・マッコーネルを招聘するなど、新年度に向け体制強化に取り組む陣営も見受けられた。

 また、クララ・アンダーソンとともに新チームの“サン・ミニミール”を立ち上げたティモ・シャイダーや、今季NASCARカップシリーズでトヨタ陣営にスイッチし、新型トヨタ・カムリXSEを走らせるレガシー・モーター・クラブ(レガシーM.C.)が、チーム共同所有者でもあるジミー・ジョンソン自身の参戦に加えて、今回のような欠場ラウンドではトラビス・パストラーナを起用してシリーズ参画を表明するなど、新たな顔ぶれも出揃った。

新年度に向け体制強化に取り組む陣営や、新規参戦など新たな顔ぶれも出揃った
例年どおり自然環境保護やその啓蒙を目的とした”レガシー・プログラム”も実施。サンゴ礁の保全活動に取り組んだ

 そんな土曜初日はプラクティスからASXEが速さを見せると、予選ではRXRが最速を記録。そこにケビン・ハンセンと初代王者モリー・テイラーのコンビを継続するE.ONヴェローチェ・レーシングと、新生NEOMマクラーレンXEが挑む構図となり、この4台がファイナル進出を果たす。

 そのうちスタート直後で最初の見せ場を作ったのは、ターン1へ大幅なワイドアプローチで仕掛けたエクストロームで、残りのライバルたちを出し抜く完璧な“スイッチ”を披露し、いきなり首位に躍り出る。

 しかし2周目のターン1ではそのお返しとばかりにRXRのチャンピオンがイン側のラインでグリップを見つけ、ヨハン・クリストファーソンが先頭のポジションを奪還。そのまま1.813秒というかなりのリードを築いてミカエラ-アーリン・コチュリンスキーへとスイッチする。

 その背後では2周目のセクター3でベストを叩き出したハンセンが飛び込み、テイラーへの交代時にコクピットサイドネットの取り付けミスによってわずかなロスを喫したものの、首位攻防はわずか0.415秒差で続いたNEOMマクラーレンXEを含む三つ巴で展開。この3台は1.928秒台のタイム差でファイナルラップへ突入していく。

開幕戦ファイナル終盤は、ロズベルグXレーシング(RXR)のミカエラ-アーリン・コチュリンスキーが首位を奪還する
ケビン・ハンセンと初代王者モリー・テイラーのコンビを継続するE.ONヴェローチェ・レーシングは、しぶとい走りで連続3位に喰い込む

■レース2はアクシオナ・サインツがホールショットから圧勝

 視界悪化で苦戦したサンズから最後尾でマシンを引き継いだASXEのマッコーネルだったが、テイラーから3番手を奪おうとした最終周のウェイポイント13でロールアウト。これで実質3台となった勝負は“パパイヤカラー”のグティエレスを抑え切った王者コチュリンスキーが、わずか0.167秒先にラインを通過してシリーズ史上最も僅差となる開幕勝利を手にした。

「今季初戦を勝利でスタートできるのは素晴らしい気分ね」と安堵の言葉をこぼしたコチュリンスキー。

「ヨハンは良い位置でクルマを引き渡してくれたけど、競争は熾烈でとくにクリスティーナとのバトルは大変だった。最後はオーバーテイクを決めて優勝できたのもとてもうれしい!」

「コースはとても速くて凸凹していたが、ミカエラは素晴らしい仕事をしてくれた」とヨハン・クリストファーソン

 明けた日曜は、前日に“ファイナル敗退組の順位決定戦”とも言うべき『リデンプション・レース』で勝利を飾っていたアンドレッティ・アルタウィキラット・エクストリームEのケイティ・マニングスとティミー・ハンセン組が、NEOMマクラーレンXEに代わりファイナル出場権を確保。創設初年度から不変となる唯一のペアが勝負強さを発揮する。

 しかしスタートシグナルがグリーンに変わった瞬間、圧倒的なパフォーマンスを見せたのは前日転倒からの雪辱を期したASXEのマッコーネルで、ライバル同様に一時的なパワーブーストとなる“ハイパードライブ”を活用し、ホールショットを奪っていく。

 これでクリアな視界が開けた後半スティント担当のサンズも快調に飛ばし、最終的に2位アンドレッティ・アルタウィキラットに1.406秒差をつけての圧勝を飾った。

今季より“帝王”カルロス・サインツのアクシオナ・サインツXEチーム(ASXE)に加入したフレイザー・マッコーネルが快走

「とてもハッピーよ。今週末はペースが非常に速く、全員が成長していることが証明され厳しい戦いになった。でもフレイザーと一緒にこの最初のレースで勝利を収めることができてとてもうれしい。昨年の最終戦で惜しくもタイトルを逃したことを考えると、このレースでの勝利はさらに特別なものね」と、昨季最後の1周を無念のクラッシュで終えていたサンズ。

 一方、今季よりASXEに新加入したマッコーネルも「このチームに加わることは僕にとってとても大きな一歩、これは大きな大きな勝利だ」と喜びを語った。

「チームやライア、そして(自身の母国)ジャマイカのみんなにとって最高の結果だ。僕はカルロス(・サインツ)とチームによってここに選ばれ、彼らは僕のなかに何かを見い出し、僕を信じてくれた。そのことが自分自身をできる限り深く掘り下げる自信を与えてくれたんだ」と続けたマッコーネル。

「僕はこの機会を最後であるかのように生きるつもりだし、カルロスは子供の頃から僕のヒーローだったから、彼のためにレースをするのはとても気持ちがいい。最高に良い週末になったよ!」

 この第2戦日曜のリデンプション・レースは、新規参戦レガシー・モーター・クラブのパストラーナとの攻防を制したエクストロームが勝利を飾る結果に。2024年に向けた新たなルール変更で、ウイナーにはファイナル進出最後の枠と同数のポイントが与えられることから、新生NEOMマクラーレンXEはチーム史上最高位の前日2位に加え、ランキング首位発進のRXRから11ポイント差の5位に喰い下がっている。

 そのRXRからわずか2ポイント差でASXE、同6ポイント差でE.ONヴェローチェ・レーシングが続く2024年のエクストリームEシーズン4だが、続く第3戦と第4戦はいまだ開催地未定ながら7月13〜14日に欧州圏内のいずれかの地域で開催される。

カルロス・サインツ本人も第2戦制覇で好スタートの結果に、満足げな表情を見せた
早々にラインアップ刷新の効果を得たNEOMマクラーレンXE「初日ファイナルは、僕がこれまで見た決勝で最もエキサイティングだった」とマティアス・エクストローム

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