応募者利回り、直接利回りとは? 債券にある4種類の利回り(パート1)

債券には4つの「利回り」があります。そして、これらの利回りは、債券価格の値動きに伴って、常に変動しています。

今回は利回り計算のベースとなる「利率」と「応募者利回り」「直接利回り」について考えてみましょう。


ちょっと複雑な債券の利回り

この連載の4回目で、「利率と利回りの違い」について説明しました。おさらいしておきます。

「利率とは、元金(元本)に対する利子(利息)の割合を言います。たとえば元金が100万円で、それに対して年1万円の利子が発生するとしたら、この金融商品の年利率は1%です。運用商品で言うと、預貯金の収益性は、この利率で表示されます。

次に利回りですが、これはどちらかというと投資商品の収益性を示すものと考えて下さい。値動きのある投資商品の、投資元本に対して得られた収益の割合を言います」。

そのため利回りは、投資した商品の購入価格によって、変動します。たとえば株式の配当利回りについて考えてみましょう。株価1000円で配当金が年50円だとすると、この株式の配当利回りは5%になります。

ところが、配当金の額が変わらないという前提で、株価が800円に値下がりすると、配当利回りは6.25%になりますし、逆に株価が1200円になると、配当利回りは4.17%に低下します。簡単な割り算ですから、特に頭を悩ませることもないと思いますが、債券の利回りは少し複雑です。

というのも、債券は新規発行された後、債券市場で自由に売買されるので、新規発行時に買って償還まで保有する、既発で買って償還日前に売却する、既発で買って償還日まで保有するなど、さまざまな保有の仕方があります。それによって異なる利回りの概念があるのです。

ちなみに、本稿で言う債券は、利札(クーポン)が付いている利付債で、かつ定期的に表面利率が見直される変動利付債ではなく、あくまでも当初の表面利率が償還まで変わらない固定利付債を対象にしていることを、まずお断りしておきます。

新発債を償還まで保有した時の収益性を見る応募者利回り

債券の利回り計算でベースになるのは「利率」です。利付債では「クーポンレート」とも言います。これは、額面金額に対して年何%の利子が受け取れるのかを示したものです。

大概の利付債は額面価格が100円ですから、それに対して利率が年3%なら、年3円の利子を得ることができます。したがって、額面価格100円の利付債を100万円分保有していたら、利子は年3万円になります。固定利付債である限り、新発債でも既発債でも、発行時に決められた利率は、償還時まで変わりません。

次に、「応募者利回り」です。これは、新規発行された債券を発行日に発行価格で購入し、償還日まで保有した場合の利回りです。債券の額面金額は基本的に100円ですが、発行日時点の金利見通しによって、発行価格が変わります。

もし今後、金利水準が上昇しそうな時は、額面価格100円に対して、発行価格は99円50銭というように下回ることがあります。この、99円50銭で購入した債券を償還日まで保有すると、償還金は額面価格で戻ってくるので、

100円-99円50銭=50銭

が償還差益になります。利子に償還差益分を加え、それが購入元本に対して何%になるのかを示したのが、「応募者利回り」です。

仮に、この債券が10年債だとすると、50銭を10で割ることによって、1年あたりで得られる償還差益が5銭と計算できます。

したがって、年3円の利子に5銭の償還差益を加えた3円5銭が、99円50銭の購入元本に対して何%かを計算すると、3.070%という数字が算出されます。これが応募者利回りです。計算式は以下のようになります。

機関投資家が活用する「直接利回り」

次に「直接利回り」について考えてみましょう。前述した応募者利回りは、発行価格と額面価格の差である償還差益を考慮した利回りでしたが、直接利回りはこうした償還差損益や、売買差損益を一切考慮せずに計算される利回りです。その債券の本来の投資収益性を把握できます。「直利(ちょくり)」という言い方もされます。

計算は簡単で、その債券の利子を購入価格で割るだけです。計算式は、以下のようになります。

たとえば1年あたりの受取利息が3円で、購入価格が99円50銭の債券だとしたら、上記の式に当てはめて計算すると、3.020%という数字が算出できるはずです。

直接利回りを活用するのは、個人よりも主に機関投資家です。たとえば生命保険会社などの機関投資家は、大勢の人たちから集めた保険料を運用しているのですが、その運用先として、国債をはじめとする債券は中心的な存在です。

こうした機関投資家の運用は、基本的に1年を区切りにして決算を行い、その1年間で、どのくらいの運用利回りが確保できたのかを検証します。その際に、1年あたりの収益性を示す直接利回りが用いられるのです。

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