「危なかった。僕も大丈夫かなと...」三笘薫は危険タックルに何を思った?2点演出も遠ざかるゴール「見てくれる人は見てくれている」【現地発】

2月18日のプレミアリーグ第25節で、ブライトンは敵地ブラモール・レーンでシェフィールド・ユナイテッドを5―0で一蹴した。

4-2-3-1の左サイドハーフとして先発出場した三笘薫は、76分までプレー。プレミアの舞台では久々ともいえる“らしい”プレーを連発して、大勝に貢献した。

序盤からシーガルズ(ブライトンの愛称)は最下位に沈むシェフィールド・Uを圧倒、脆弱な相手守備陣に執拗に攻め立てた。三笘も攻撃の中心で敵のゴールに襲い掛かり、前半3分には、早速左サイドから切り込んで左足で中央に折り返す。しかしボックス内に走りこんだダニー・ウェルベックよりも一足先にディフェンダーがボールにたどり着いてコーナーキックとなる。

さらに8分後の11分。試合の行方を大きく左右する場面が訪れる。左サイドでボールを受けた三笘が対峙した相手の右ウイングバック、ジェイデン・ボーグルを軽快なドリブルで抜き去る。だがその直後、空いたスペースのカバーリングに入ったメイソン・ホルゲイトが背番号22に激しくチャージ。ホルゲイトの右足の裏は左太もも内側を捉え、三笘はピッチに倒れ込んだ。危険なタックルを仕掛けたホルゲイトは無論、一発退場となった。

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試合後に三笘自身が「ちょっと危なかったっすね。僕も大丈夫かなと思いましたけど、ギリギリ...。ちょっと場所違ったんで良かったですけど...」と振り返ったとおり、一歩間違えれば大けがにつながる悪質なタックルだった。

それでもプレーを続行した26歳は、その後も随所で好プレーを見せた。数的優位となり、20分にはファクンド・ブオナノッテがあっさりと先制点を奪う。そして1点リードして迎えた24分、右サイドからのグロスのクロスをファーに走りこんだ三笘が滑り込みながらシュート。ゴールキーパーに阻まれたが、弾いたボールをウェルベックが押し込んで2点目を奪った。

後半に入ってもシーガルズの攻勢は衰えない。61分には、試合を通じて苦しめ続けたボーグルを三笘が再び置き去り。ゴールラインぎりぎりまでドリブルし、角度のないところから右足でシュートを試みるも、GKにセーブされて9月下旬以来の約5か月ぶりのゴールとはならなかった。
決定力向上については三笘自身も常々口にする課題であり、本人が一番理解している部分だ。だがこの試合でもシュート場面があったが決めきれなかった。

「イメージはあるでんすけど、まあ、まだまだ改善しないといけないとこもありますけど。ああいうところで打ち切れれば、まだまだなんかあると思いますし。練習では入ってたりするんですけどね。試合で入らないですね...」
今季ここまでプレミアでは3得点のみだが、シーズンも残り3か月を残すのみとなっている。オウンゴールを誘発した際にガッツポーズを見せ、「久々にゴールに絡んだ形。自分の存在意義を見せないといけない」と話していた。

しかしここからは、ギアを一段上げてゴールとアシストを決めてほしい。数字に表れる形でさらなる活躍をしてほしいところだ。

取材・文●松澤浩三

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一方的な展開が続いたもののファイナルサードでの決定力を欠き、ダメ押し点を奪えないシーガルズ。そんな中、三笘が存在感を発揮する。75分、左サイドでボールを受けると、再度ボーグルに仕掛けて、ここでは早めのタイミングで左足で鋭いクロス。クリアしようと必死に脚を伸ばした相手センターバック、ジャック・ロビンソンの右足に当たりオウンゴールを誘発して、試合を決定づける追加点を演出した。

直後に途中交代を言い渡されて三笘はピッチを降りる。後半は右腰のあたりを気にしていた様子で、記者会見ではロベルト・デ・ゼルビ監督も「腰を痛めたようなので交代させた」と説明。三笘本人も「元々ちょっと痛みがあった。それが出てきた感じです」と話していたが、両者の受け答えを見る限り今後への影響は少なそうだ。

この試合での三笘は、久しぶりに積極的な姿勢が光った。数々のクロスやドリブルで相手ディフェンスを翻弄し、再三好機を作り出す結果につながっている。1対1の局面では、ドリブラーとしての才を発揮して、相手を翻弄し続けた。自らもゴールを積極的に狙ったものの、最後までネットを揺らすことはなかった。得点どころか、2点に関与しながらも数字につながらなかったことについて、三笘は次のように触れている。

「もっともっと得点に絡まないと。今日も絡んではいますけど、数字には表れていないですし、まあ、次に頑張りたいと思います」

一方で記者の一人に「得点に絡みながら、アシストがつかない場面が多いのでは?」と聞かれた際には、「まあ、チームが勝つことが1番なんで。その上で、見てくれる人は見てくれていると思いますし。そこで評価もらえれば嬉しいですけど、負けられない戦いが続いてるんで、ここから大事だと思います」と答えている。

とはいえ、ファンやチーム関係者が日本代表のエースに期待するのはゴールであり、アシストといった数字だ。前述の試合後の記者会見で筆者は指揮官にこう尋ねた。

「今日の三笘のパフォーマンスは良かったが、9月下旬以来ゴールを決めていない。この点についてフラストレーションはあるか?」

「カオルには今日の前半、そして後半も同様だが、あのようなプレーを常時してほしい。だが彼はチームに欠かせない存在だ。もっとゴールを取れるはずだが、今日のような質のプレーを毎試合することが重要だ」

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