同じ学校に通っているのに、不公平じゃないですか?都外在住「年収700万円」47歳のサラリーマン、「東京都の高校実質無償化」に感じる不条理

受験シーズンも終盤戦。すでに進学が決まり、その準備に忙しい家庭もあるのでは。一方で嬉しいはずの子どもの進学を、心から喜べない親もいるようです。みていきましょう。

「子どもが高校に進学」で感じる負担増

受験シーズンも後半戦。進路が決定してホッとしている家庭も増えているところでしょうか。一方で、「子どもの教育費」の現実を前に、歓喜から一転、気持ちが沈んでいる親も多いようです。特にこれまで義務教育だった中学生の子が、高校へと進学とする際、改めて子どもの教育費の重い負担を実感する家庭も。

第1子が高校に入学する親の平均年齢は、母親で45歳前後、父親で47~48歳ほど。一般的なサラリーマン(正社員)であれば、平均月収は手当等含めて46.1万円、賞与などを含めた年収は701.6万円です。それに対して教育費の負担は、公立高校であれば学校関連で30万9,261円、学習塾や習い事などの学校外関連で20万3,710円。合計で年間51万2,971円です。一方、子どもが公立中学校に通っていた時の教育費は、学校関連で13万2,349円、学習塾や習い事などの学校外関連で36万8,780円。合計で年間53万8,799円。

一見すると、中学生のときのほうが教育費は高く見えますが、中学生の時にかかるのが学校外の教育費。就職する子が一定数いる高校生に比べて、ほぼ進学をする中学生のほうが、学習塾代などを平均化すると高くなるのです。一方で、絶対かかるのが学校関連の教育費。中学生に比べて高校生では2.3倍に。学習塾などであれば「父ちゃんの給与ではとても通わせることはできない……」と家庭の事情で限りなくゼロ円にすることも可能ですが、学校関連の教育費はそういうわけにはいきません。高校は義務教育ではないので、授業料を3ヵ月滞納すると除籍や退学になる可能性があります。

高校無償化と騒がれているが…それでも教育費の負担は重い

東京都では「2024年度から高校や都立大学が実質無償化」と騒がれました。

しかしこれを正しくいうなら、授業料の無償化。公立高校の学校教育費のうち授業料は5万2,120円で、基本的に無償化の対象は全体の6分の1ほど。一方で、私立高校の場合の学校教育費は平均75万0,362円で、授業料は平均28万8,443円。46万円ほどは無償化の対象外となります。

――授業料が無料になっても、やっぱり教育費の負担は重い……

「高校無償化」は高校でかかるすべての費用を無償にする制度ではなく、学校外の教育費をどんなに削ったとしても、公立高校なら年間25万円ほど、私立高校なら年間46万円ほどの負担は覚悟しなければなりません。

都民の生徒と都外の生徒…3年で140万円強の教育費格差

高校では授業料以外の教育費負担が大きいものの、やはり授業料分でも無償になるのはありがたいこと。しかし、ニュースでいわれている高校無償化は自治体独自のもので、今後、居住地によって教育費格差はいっそう拡大しそうです。

国の高等学校等就学支援金では、世帯年収約590万円未満であれば年間39万6,000円を上限に、約910万円未満であれば11万8,800円を上限に助成します。東京都はこの制度に上乗せする形で助成を行ってきましたが、所得制限を撤廃し、都内私立高校の平均授業料分を上限に助成を行います。

対象となるのは「都内在住」。東京都によると、都内の私立高の生徒は約18万人。そのうち5万人強は都外在住です。首都圏のほか5県にも国の支援金に上乗せする形の独自補助があるものの、所得制限があるうえ、東京都同様、県内の私立高校に通う生徒であることが条件です。つまり都内の私立高校に通う生徒は外れてしまうのです。教育費負担の差は、実に3年間で142万円ほどになる計算です。

――同じ学校に通っているのに、不公平じゃないですか?

――川を渡れば東京なのに……ちくしょう!

(息子を私立高校に通わせる、都外在住・47歳の男性)

「東京都の高校授業料実質無償化」のニュースが流れると、そんな呟きが溢れました。子どもが同じ教室で学びながらも、教育費の負担に142万円もの差。

――そんなお金があったら、子どもの大学受験に向けて、もっと塾に行かせてあげられるのに……

今後、居住地による教育費負担の格差は、ますます拡大するだろうと専門家。あまりに不公平感がう大きくならぬよう、国による統一的な対応が求められています。

[参考資料]

厚生労働省『令和4年 賃金構造基本統計調査』

文部科学省『子供の学習費調査』

文部科学省『高校生等への修学支援』

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