新しいのにクラシカルな立川『喫茶ニドネ』は、老若男女が集まる交差点のような場所

2023年12月、立川エリアに一軒の喫茶店が誕生した。『喫茶ニドネ』は、レコードの心地よい音色に包まれたクラシカルな空間で、ゆったりと時間が流れる店。コーヒー好きはもちろん、コーヒー以外のメニューを注文したい人にもやさしい喫茶店だ。

ゆっくりと時間が流れる、みんなにやさしい喫茶店

立川駅の南口から歩いて17分、西国立駅のほど近くにオープンした『喫茶ニドネ』。住宅や大きな病院、コンサートホールなどが集まるこのエリアは、性別、年齢ともにさまざまな人が行き交い、立川駅からの散歩にもちょうどいい距離感だ。

喫茶店好きが高じて店を開いたのは、オーナーの渡辺結花子さん。新宿の喫茶店で約5年修業を積んだあと、一度訪れて以来、街の雰囲気に魅了された立川に店を構えた。

さまざまな喫茶店を巡っていた渡辺さんだが、実はコーヒーを砂糖やミルクなしで飲めるようになったのは大人になってからだという。

「コーヒーの香りや喫茶店の空間はすごく好きでしたが、喫茶店でコーヒー以外のメニューを頼むとちょっぴり肩身が狭く、メニューの選択肢も限られてしまい寂しい気持ちになっていました。だからコーヒー以外のメニューも充実させて、コーヒーが飲めない方にも楽しんでいただけるようなお店を作りたいと思いました」

洗練されていながらクラシカルな雰囲気の店内は、渡辺さんのこだわりが詰まっている。

「外食をすることって、旅行よりも手軽に非日常を味わえるというイメージが私の中にあって。なので、わざわざここに行きたいと思っていただけるよう、内装にはこだわりました」

味わいのある白壁、そして重厚感のあるテーブルと椅子。天井が高く開放的で、大きな窓からは光がたっぷりと差し込む。そこにいるだけで、不思議と心が落ち着く空間だ。

一人でも利用しやすいカウンター席。壁に向かっているが圧迫感はなく、ゆったりと過ごせる。

これまでの喫茶店の雰囲気を残しながら、時代に合わせて進化をさせた新しいかたちの喫茶店。隅々まで居心地のよさを追求した空間は、仕事中のサラリーマンや病院帰りのお年寄り、SNSを見てやってきた若い女性、休日を楽しむ家族連れなど、幅広い人たちが集まる憩いの場となっている。

店の片隅に設置されたレコードもポイント。お客さんの雰囲気に合わせたBGMをかける。

ちなみに店名の「ニドネ」は、店が昼の12時にオープンすることから“二度寝”という意味で名づけたそう。そんな肩の力が抜けたネーミングにも親しみやすさを感じられる。

コーヒーの心地よい香りとレコードから流れる音楽に耳を傾けながら、会話を楽しんだり、読書をしたり。『喫茶ニドネ』にはいつも、穏やかな時間がゆっくりと流れている。

ハンドドリップで淹れたコーヒーと、やさしい甘さの手作りスコーン

コーヒーは一杯一杯、ハンドドリップで丁寧に淹れる。オリジナルのブレンドコーヒーは、コクのある深煎りで、すーっと体に溶け込むような飲みやすさ。そのまま飲むのはもちろん、食べ物との相性にもこだわったという。

試行錯誤を重ねてようやくたどり着いた理想の一杯は、飲む人を選ばないすっきりとした味わいだ。

一度は試したい、プレーンのスコーン250円(写真左)とブレンドコーヒー600円(写真右)の組み合わせ。

そんなコーヒーと相性抜群なのが、バターをたっぷり使ったスコーン。スコーンはプレーンをはじめ、チョコチップスコーンが登場するなど季節によってラインナップが変わる。

小麦粉とバターで作ったお菓子が大好きだという渡辺さん。自身が作るスコーンも、北海道産小麦を100%使用し、バターを惜しみなく使うなど妥協はない。シンプルだからこそ、何度も試作を重ねたそう。

そんな傑作のスコーンは、テーブルに運ばれてきた瞬間からバターの幸せな香りがふわっと漂う。しっとりとした生地を頬張ると、小麦本来の風味とやさしい甘さに満たされる。コロンとした見た目も美しく、手作りならではの温かみを感じられた。スコーンはその日の個数がなくなり次第終了するため、早い時間に食べるのがおすすめだ。

ミルク感がうれしいコーヒーゼリー(アイス付き)650円。気温に合わせてゼリーの固さも微調整している。

もう一つ、おやつタイムにぴったりなのがコーヒーゼリー。ゼリーにする際に味わいがしっかりと感じられるよう、ブレンドコーヒーとは異なる深煎りのコーヒー豆を使っているという。濃厚なジャージー牛乳を使用したミルク感のあるアイスは、ほろ苦いコーヒーゼリーをまろやかにしてくれる。

春夏秋冬をイメージしたソーダ水

グラデーションが美しい季節のソーダ水は、季節ごとに色合い、風味が変わる。通常のソーダ水(メロンソーダ)と同様650円。

紅茶やジュース、焼き菓子などコーヒー以外のメニューも充実している『喫茶ニドネ』だが、子どもから大人まで人気なのがソーダ水。通常のソーダ水は緑色のメロンソーダだが、季節のソーダ水は、春夏秋冬の風景をイメージして色合いとフレーバーが変化する。

かき混ぜると一色になり、印象が変化するのも楽しい。

取材時(2024年1月)は、冬の夜空をイメージした、深みのある藍色と紫色が混ざり合った神秘的な色合いのソーダ水だった。爽やかな口当たりと大人でも飲みやすい控えめな甘さで、ほんのりと巨峰の香りもする。ホイップクリーム100円、アイスクリーム150円のトッピングで甘さの調整もできるのが、甘党へのうれしい気遣い。

なにげなく飾られた絵にも、渡辺さんの好きなものが反映されている。

『喫茶ニドネ』の歴史は、まだ始まったばかり。今後も、この店ならではのメニューが増えていく予定だ。店のこれからについて、渡辺さんは「自分の大切な人を連れて行きたくなるようなお店になったらいいなと思っています」と話してくれた。

子どもからお年寄り、コーヒーが好きな人、そうでない人。『喫茶ニドネ』は、さまざまな人たちが集まる交差点のような喫茶店だ。家とは違った居心地のいい空間、特別感のある場所を探している人は、扉を開いてみよう。

喫茶ニドネ 住所:東京都立川市錦町4-4-1/営業時間:12:00〜17:30LO/定休日:水、木/アクセス:JR立川駅から徒歩17分、JR西国立駅から徒歩5分

取材・文・撮影=稲垣恵美

稲垣恵美
ライター
北海道出身のお散歩・お出かけ好きライター。晴れた日はどこかに出かけたくてソワソワしだす。フリーペーパーの出版社勤務後、現在はフリーランスで活動中。

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