「奈良のシカ」 市外のシカと交配進む 福島大などの研究グループが発表

 千年以上前から保護され、独自の遺伝子型を保ってきた国の天然記念物「奈良のシカ」を調べた結果、奈良市外のシカとの交配が進んでいることが分かった。福島大などの研究グループが20日、国際学術誌で発表した。

 奈良公園(奈良市)のニホンジカは観光客の人気を集める一方、頭数が増え、農作物に被害を与えるなど問題となっている。奈良県は市内を保護、緩衝、管理の3地区に分け、管理地区ではシカを捕獲して農業被害の防止につなげている。ただ、管理地区に生息するシカがどこからやってきたのかは、これまで分かっていなかった。

 同グループの研究で昨年、奈良公園など保護地区のシカは千年以上前から人間の保護で独自の遺伝子型を保っていることが判明している。今回も同様の研究手法で管理地区のシカのDNAを解析した結果、奈良県外のシカでも見られる遺伝子型を検出したという。

 研究グループの福島大共生システム理工学類の兼子伸吾准教授は、管理地区では数十年前にはシカの生息がほとんど確認されず、多くが市外から流入したと指摘。「長期間の孤立で守られてきた奈良のシカの保護を続ける上で研究を役立ててほしい」と話している。研究には同学類の高木俊人客員研究員も参加した。

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