1950~60年代の銀天街 記録とアートでよみがえる 白黒写真や三輪オートなどを展示 沖縄・沖縄市で24日まで

白黒写真が飾られた店舗と、三輪オートを展示する滝鉄也さん(左)。白黒写真は写真家の国吉和夫さんが1969年に撮影した「仲村テーラー」=17日、沖縄市・銀天街

 【沖縄】沖縄市照屋の銀天街で、芸術(アート)と歴史的な記録(アーカイブ)を組み合わせたイベント「場所と空間と商人の物語」が17日に始まった。白黒写真や古い道具、衣服、家具などがあちこちに展示され、1950~60年代の照屋地域の商店街を想像できる。訪れた人同士の新しい交流やその場で飛び出す当時の証言も含め、空間全体を一つの作品として完成させる。参加無料で24日まで。(中部報道部・平島夏実)

 主催は「コザXミクストピア研究室」(池原エリコ代表)。70年代の照屋地域のゼンリン地図を研究室に張ったところ、50~60年代の証言が自然と集まった。黒人街(黒人兵専用の飲み屋街)でバーと売春のイメージが強いが、実際には洋裁店、写真館、理容館、天ぷら屋、レストランなどが数百軒集まっていたと分かった。

 証言を地図化し、イベントに合わせて銀天街の入り口に掲げた。地図の中の25カ所に白黒写真などを展示。QRコードを読み込むと、関係者のインタビュー動画などを視聴できる。

 池原代表は「沖縄戦が終わって何もない状態から奮起した店ばかり。リスクを取って成功した『コザ・スピリット』を現代の私たちも見習っていい」と話す。

 期待するのは、初めて知った照屋地域の一面が「自分の中の何か」と重なる瞬間だ。全く別物だと思っていた過去と現在が交差し、ものの見え方が変わるかもしれないという。

 17日に訪れた同市の福地敏さん(63)は、張り出された地図に「ふくち薬局」を見つけて声を上げた。父の義徳さん(90)が切り盛りし、自身が中学生の頃までは店舗兼住宅だった。「隣は山城写真館。珍しくタツノオトシゴを飼っていた。その横は製靴店で、外国人向けのオーダーメード。上運天さんといったかな」。記憶が次々よみがえった。

 同市の滝鉄也さん(49)は三輪オート、同市の中山ジェフリーさん(30)はフォード社の68年製の車を乗り入れ、会場の演出に協力した。

 イベントは県と県文化振興会が事業採択している。期間中、小中学生時代に靴磨きをした70代男性と現在靴磨きとして活躍する30代男性の対談などを予定している。

1950~60年代のコザ市照屋(当時)の地図を見る池原エリコさん(左)と福地敏さん

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