雑木林に消えた認知症男性、捜索開始30分で発見 耳と鼻ひくひく「ビクトール号」お手柄

加古川市内で行方不明者を発見したビクトール号と椎谷剛巡査部長=加古川署

 行方不明になった兵庫県加古川市の高齢男性を発見したとして、加古川署は、県警鑑識課の警察犬「ビクトール・フォン・マイン・リーベ号」(雄3歳)に感謝状を贈った。自慢の耳と鼻を生かして、捜索開始30分でのお手柄。2020年10月からコンビを組む同課警察犬係員の椎谷剛巡査部長(36)は「スマートに見つけてくれた」とビクトール号の頭をなでた。

 ビクトール号は警察犬になって約3年。警戒心の強い性格でさまざまな音やにおいに敏感という。ボール遊びが大好きで、慣れ親しんだ人には甘えん坊な一面もある。

 1月1日に加古川市の認知症の男性(80)が行方不明になった。妻が目を離した隙に靴下のまま自宅からいなくなり、同日午後7時15分ごろ同署に通報があった。ビクトール号は県内の別の事案の帰りだったが、同署からの要請を受けて出動した。

 午後8時ごろ、男性が普段から履いている靴のにおいを手がかりに捜索を開始。約30分後、自宅から100メートルほど離れた雑木林の中で座っている男性を発見した。捜索中、ビクトール号は雑木林の前で何度も耳と鼻を動かしていたという。男性は手に擦り傷を負っていたが、会話もできた。椎谷巡査部長は「気温も低く、もし発見が遅れて朝を迎えていたら危なかった」と振り返る。

 今月9日、同署で感謝状とビーフジャーキーを贈られたビクトール号は息を切らして喜んでいた。椎谷巡査部長は「警戒心が強い故に、人のいる気配がないところにも反応できる」と話し、相棒にほほ笑みかけた。(田中朋也)

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