〈青色申告初心者向け〉交通費や物品代の「立替払い」の請求・入金、商品の「自家消費」や「友人価格での販売」の会計処理【税理士が解説】

青色申告初心者が会計処理を行う場合、しばしばつまずきがちとなるポイントがあります。今回は、立替払いと自家消費、友人価格での特別割引による販売の会計処理について見ていきましょう。※本記事は小林敬幸氏の著書『改訂2版 3日でマスター! 個人事業主・フリーランスのための会計ソフトでらくらく青色申告』(あさ出版)より抜粋・再編集したものです。

立替払いした「交通費」「物品代」の請求・入金方法

◆立替払いは売上代金と一緒に請求

売上代金を請求する際、得意先が負担すべき交通費や物品代をいったんこちらが立替えて支払うことも。その場合、下記の図表2のような請求書で売上代金と一緒に請求します。

この場合の入力方法は次のとおりです。

①立替費用の請求時

売掛帳を使って、売上の下に「相手勘定科目『立替えた経費の勘定科目』」として入力します。

②立替費用の支払時

通常の費用を払う場合と同じように、現金出納帳や預金出納帳で入力します。

③代金の入金時

通常の売掛金の入金と同じように処理します。

実際の入力方法は、下記の図表1~2の例で確認してみてください。

◆交通費や物品代を立替払いした場合

★立替費用を支払うとき

現金出納帳や預金出納帳で、通常の費用と同じように入力します。

[図表1]立替費用を支払うとき

★立替費用を請求するとき

売掛帳で、立替費用の金額を相手勘定科目旅費交通費で計上します。

[図表2]立替費用を請求するとき

店の料理を自分で食べた・販売商品を友人に安く売った場合は?

◆あまった物でも「事業主に売った」と考える

飲食業の方がお店の料理を食べたり、小売業の方が店の商品を知り合いに安く売ったり……というのは、よくある話です。しかしその場合にも、その料理または商品を事業主個人や知人に販売したとみなして、きちんと売上を計上しなければなりません。

お店の料理を食べたり、商品を使ったりして、売上に計上しなかったとしましょう。その場合、料理の原材料や商品の仕入代金など必要経費だけが計上され、利益が減少することになります。その結果、納めるべき税金が少なくなってしまいます。

そのため、事業主が食べたり使ったりした物については、事業主個人に対して販売した物とみなして、売上を計上します。この場合に計上する金額は「通常の販売金額の70%」か「仕入金額」のいずれか高い金額を選択します。この際、勘定科目は通常の「売上」ではなく、「家事消費等」を選んでください。

◆30%以上の割引にも追加処理が必要

また友人や知人などに、サービスで商品を通常の販売価格の70%未満で販売した場合にも、追加処理が必要です。

たとえば通常の販売価格の50%で販売した場合には、70%と50%との差である20%分の金額を追加売上として計上しなければなりません。

なお、広告宣伝のためにサンプルとして商品を提供する場合や、流行遅れのためバーゲンセールなどで70%未満の金額で販売した場合には、これらの処理は不要です。

では具体的な例で、入力方法を確認していきましょう。

◆自分の店の料理を食べたり、商品を自分で使ったときの処理のしかた

仕訳日記帳に、通常販売金額の70%と仕入金額のいずれか高い金額を計上します。

★飲食業者が通常1,000円で提供している料理を自分で食べた場合(材料費300円)

材料費300円よりも、1,000円×70%=700円のほうが高いので、700円を「家事消費等」として計上します。

[図表3]飲食業者が通常1,000円で提供している料理を自分で食べた場合(材料費300円)

★小売業者が1万円で販売する商品を自宅に持ち帰り使用した場合(仕入金額8,000円)

仕入金額8,000円が、1万円×70%=7,000円よりも高いので、8,000円を「家事消費等」として計上します。

[図表4]小売業者が1万円で販売する商品を自宅に持ち帰り使用した場合(仕入金額8,000円)

★小売業者が1万円で販売している商品を友人に5,000円で販売した場合

実売価格5,000円なので、1万円×70%=7,000円との差額2,000円を「売上高」として計上します。

[図表5]小売業者が1万円で販売している商品を友人に5,000円で販売した場合

小林 敬幸
税理士、ファイナンシャル・プランナー

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