冷めた「パンケーキ」レンチンすると老化物質が発生!「あたため厳禁」料理10

(写真:Ryozo/PIXTA)

ごはんづくりの最強の時短調理器、電子レンジ。ボタン一つで、野菜の下ごしらえも解凍も調理もできてしまう。だが、その発生するマイクロ波がどうやら悪さをするようで……。

カリッとしたトーストや、香ばしい焼き魚、想像しただけでも食欲がそそられるが、

「食べすぎると体内にAGE(終末糖化産物)が長い時間をかけてたまり、体に悪影響を及ぼします。食事ではカロリーのことを気にする人も多いでしょうが、調理法にも注意が必要です」

そう警鐘を鳴らすのは、AGE研究の第一人者で、昭和大学医学部糖尿病・代謝・内分泌内科の山岸昌一主任教授。

AGEとはタンパク質と糖が加熱されてできる物質。強い毒性を持ち、老化を進める原因物質ともいわれ、近年研究が進んでいる。

「AGEは体内で作られるだけでなく、食べ物からも吸収されます。体内では、高い血糖値が長く続くことで形成され、糖尿病の人ではAGEが作られやすくなります。一方、食べ物から摂取したAGEの約7%は体に吸収されます。AGEが体にたまると、シミやシワなどお肌の老化が進み、心筋梗塞や脳梗塞、骨粗しょう症、白内障、さらには歯周病、アルツハイマー型認知症などの原因にもなる可能性があります」(山岸主任教授)

同じ食材でも、調理法によってAGEの発生する量は異なってくる。加熱する温度が高いほど多く発生する特徴があり、揚げ物や炒め物、オーブン焼きは大量にAGEを発生させる。

一方で、ゆでる、蒸す、煮るといった調理法は水分を使うため発生するAGEは少ない。

「たとえば同じ鶏肉料理でも、焼き鳥は水炊きの6倍、から揚げは10倍ものAGEが発生するのです。揚げ物や炒め物ばかりを好んで食べると、AGEが体内にたまっていきますので、調理の方法を変えることをおすすめします」(同)

■「レンチン再加熱」でさらにAGEが増え、脂質が酸化するダブルパンチ

『老けない最強食』(文春新書)の著者でジャーナリストの笹井恵里子さんが指摘する。

「電子レンジは、電磁波の『マイクロ波』を用いて短時間で高温加熱します。食品内部の水分を細かく振動させることで摩擦熱が生まれ、熱が広がることで食品の温度が上がる仕組みになっています。揚げ物の温め直しのケースでは、揚げるときと、電子レンジ加熱と2回にわたって食品のAGEを増やすことにつながります」

さらに、油分(脂質)が酸化した食品を食べると、気分が悪くなったり胸焼けしたりするだけでなく、「動脈硬化が進む原因にもなる」というのは、管理栄養士の望月理恵子さんだ。

「電子レンジによる加熱は、AGEを増やすだけでなく、脂質の酸化を進めます。マイクロ波は食品中の脂質と水分に集中するため、マイクロ波を吸収した脂質は酸化が早まるのです。AGEと油が酸化した食品をダブルで食べ続けると、血中の悪玉コレステロールを増やしてしまい、動脈硬化を招いてしまいます」

電子レンジで再加熱を避けたい食品は、焼き鳥や焼き肉などの焼いた肉や揚げ物だという。

「このほかにも、サバの味噌煮、ブリの照り焼き、ウナギのかば焼きなどの魚を使った料理も、電子レンジの再加熱で脂質が酸化しやすくなり、タレのAGEが増えてしまう恐れがあります。カレーやシチュー、またヒジキ、切り干し大根などの油で炒めるお総菜も、マイクロ波が脂質に反応しやすく、劣化してしまいます。

再加熱するなら鍋ごと火にかけるか、揚げ物やお惣菜はフッ素樹脂加工のフライパンにクッキングシートを敷いて上にのせて弱火で温めてもいいでしょう」(笹井さん)

毎日の生活のなかでつい買ってしまうお弁当やお総菜、ファストフードなどの食事も、温め直しが適さないケースがある。

■最も避けたいメニューは「フライドポテト」

「ポテト自体油で揚げているうえに、油が多い食品を電子レンジで温めると、油が劣化してトランス脂肪酸が増加するという報告もあります。トランス脂肪酸を過剰に摂取してしまうと、悪玉コレステロールが増えて、心臓疾患のリスクが高まるという研究もあります。

中高年以降はなるべく食べないようにしましょう」(望月さん、以下同)

そこで、望月さんに中高年以降は避けたほうがいい、電子レンジの再加熱NG料理に順位をつけてもらった。

2位以降は、鶏もものから揚げ、トンカツ(ロース)などタンパク質が豊富な肉の揚げ物が上位を占める。

「晩酌に鶏のから揚げを食べる人は多いと思いますが、再加熱したものはNGです。皮に油が多いので酸化しやすいのと、鶏肉は高タンパクなので、AGEが発生する条件が整っています」

3位のトンカツは、肉にAGE、トランス脂肪酸が多く、血中の悪玉コレステロールが増えてしまう。

「5位のチキンナゲットは同じ鶏でも、使用するむね肉はから揚げに使うもも肉より脂質が少ないので、鶏のから揚げよりも順位は低くなります。

また、煮込みでもNGメニューはあり、豚バラ肉の角煮は、肉の脂身が酸化するとこれも悪玉コレステロールのもとになります。

鮭はDHA、EPAといった体にいい不飽和脂肪酸が豊富なので、生の刺身ならAGEはほとんどありませんが、鮭フライにすると6倍以上一気に増えます。また、DHA、EPAは熱に弱く、加熱すると減少することがわかっています。栄養分がなくなってしまうのは食べ方としてもったいないですね。

そして、揚げ物の衣には小麦粉とパン粉を使うことが多いですが、小麦粉はタンパク質が多く、パン粉は糖質の量が多い。どちらもAGEを増やします」

意外なのは、9位イワシの干物。高塩分のため、細胞が老化しやすくなる。

ほかにも、みりんやしょうゆなど糖質が多い調味料を使うと、魚介類のタンパク質と結びつき、より多くのAGEが発生するという。

さらに、肉や魚を焼いたときにつく「焦げ目」は大敵なので、もともとAGEが多い焼き鳥や焼き肉などは、再加熱は不可。

そしてスイーツで大人気のパンケーキも、小麦粉を練って、卵や牛乳、砂糖を加えて焼くので、きつね色の焦げ目はAGEになる。

しかし、電子レンジで加熱してもよい食材もある。生野菜だ。

「たとえば、ゆでると水溶性ビタミンが流れ出てしまうので、ブロッコリーやカリフラワー、ほうれん草など葉物野菜は、電子レンジでの加熱がよいといわれています。食材によっては電子レンジでの調理がいいケースもあるんですよ」

忙しい主婦にとって電子レンジなしの生活はありえない。よい面、悪い面をしっかりと理解しながら健康に役立てていこう。

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