健康食品市場に関する調査を実施(2024年)~緩やかな拡大を続ける健康食品市場、市場での存在感が高まる機能性表示食品~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の健康食品市場を調査し、各セグメント別の動向、参入企業の動向、将来展望を明らかにした。

1.市場概況

健康食品の市場規模は、メーカー出荷金額ベースで2022年度が8,860億6,000万円(前年度比0.4%増)と推計し、2023年度(見込)が8,995億1,000万円(同1.5%増)を見込む。

コロナ禍の2020年度から2021年度で見られた健康食品市場の特需の影響が落ち着き、2022年度は特に市場での構成比が高い通信販売においてコロナ禍の需要増加からの反動による落ち込みが見られたほか、近年、順調に拡大していた海外ルートにおいて、ロックダウンの影響などにより売れ行きに不調が生じた結果、同市場の2022年度の成長率は対前年度比で縮小に転じた。

一方、コロナ禍での行動抑制が徐々に緩和し、2022年度後半から2023年度にかけて国内での人流が回復したことから、ドラッグストアを含む薬系ルートが大きく伸長したほか、コンビニエンスストアを含む食系ルートでの販売が復調した。

さらに、2023年5月に新型コロナウイルス感染症の感染症区分が5類に移行し、人流が急速に回復したこと、外国人訪日観光客の回復に伴うインバウンド需要の伸長も加わったことで、店頭ルートの回復が顕著となり、2022年度に比べ、2023年度の市場伸長率が高くなるものと見込む。

健康食品の素材では、スポーツ・運動機会の増加によりプロテイン市場が拡大しているほか、コロナ禍以降における生活の変化が見られる中、アルコール対策ドリンクや、美容に関する食品の復調が見られる。

2.注目トピック~健康食品市場における機能性表示食品の構成比が2割を突破

健康食品市場における機能性表示食品(サプリメント形状)の構成比が2022年度に23.0%と2割を超え、2024年度には24.2%に達すると予測する。

一般消費者に対し、機能性表示食品における機能性表示を打ち出した広告宣伝、店頭訴求などのコミュニケーション活動が販促の中核となっている。新商品をはじめ、既存の健康食品においても機能性表示食品としてのリニューアルが進んでいることから、今後も健康食品市場における機能性表示食品の割合が高まるとみる。

3.将来展望

高齢者層を中心に健康・長寿への関心が高まり続ける中で、健康・美容効果が期待される食品の需要が今後も高まると考える。

食品市場では、機能性表示食品を中心に、健康機能を付加価値とした商品の展開が広がるなど、消費者において、健康・美容の維持や増進に対する選択肢が多様化している。機能性を有する食品間における競合が更に激化するとみる。

味覚が重視される一般食品に対し、サプリメント形状の食品については、継続摂取に適した形状であり、健康・美容の維持や増進の手段の一つとして、一定の需要に支えられて緩やかな成長が続くと考える。

また、成長が期待される海外市場について、日本の健康食品メーカーでは、アジアを中心に海外での事業展開を開始・拡大する動きが広がっており、ブランド化に成功した企業や、有力な現地パートナーとの協働に成功した企業が売上を伸ばす事例が多い。有力なパートナーの探索と、現地での消費者に対するコミュニケーション戦略が海外展開の成否を左右する。また、今後、海外サプリメントメーカーにおけるアジア圏での販売強化や、現地企業が製造・販売する健康食品の拡大も生じ得るため、早期のブランド化や付加価値化による差別化などの戦略も肝要である。

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