ついに救急車が「有料」に!? 入院不要だと「7700円」請求される? 三重県 松阪市が「適切な利用」を呼びかける理由を解説

松阪市が導入する制度とは?

まず、今回松阪市が導入する予定の制度について説明します。今回の制度では、救急車の利用により必ず料金をとられるわけではありません。松阪地区の基幹病院に指定されている3病院に救急搬送されたものの、入院には至らなかった際に「選定療養費」として7700円(税込)が請求されるものです。

選定療養費とは、各地域の拠点になる大病院に紹介状なしで来院した患者から徴収できる料金です。これは初期の治療はかかりつけ医が行い、大病院は高度・専門治療に専念する目的で2016年から導入されています。

今までは救急搬送された患者は選定療養費の対象外でしたが、今回の決定により対象となったことが大きな変化です。

ただし、救急搬送され入院しなかった場合でも、医師から救急搬送が必要だったと判断されたケースなどでは、費用は徴収されません。

松阪市が救急車の適正利用を呼びかけている理由とは?

松阪市が今回の決定に至った理由としては、救急車の出動件数が上がり続けていることが挙げられます。2023年の松阪地区広域消防組合の救急出動件数は1万6023件で、過去10年で最多件数でした。

一方で、2022年の統計では搬送された人のうち、入院を必要としない軽傷者の割合は56.6%と、半数以上にのぼっています。救急出動件数がこのまま増加し続けると、救急車の到着が遅れて救えるはずだった命が救えない事態も考えられる状況です。

筆者は前職が警察官だったのですが、警察でも消防でも「常習者」と呼ばれる通報者がいます。常識を持った人であればとても通報しないようなことを、警察や消防に常習的に通報する人物です。

例えば、「苦しい」と通報してきて駆けつけてみると、本人はピンピンしているといった具合です。「今は治った」と言われるとどうしようもありません。しかし警察も消防も、明らかにいたずらだと分かる場合は別として、状況がよく分からないときは出動せざるを得ません。

今回の松阪市の決定には、こうした常習者など、あまりにも気軽に救急車を呼ぶ人たちの利用を抑える意味があるのではないでしょうか。

救急車の適正利用とは?

救急車の適正利用とは、緊急性がある場合でも、できるだけ救急車を呼ばないことではありません。緊急性を感じられるときには躊躇せずに119番通報することが大切です。

しかし、緊急性があるのかないのかの判断に迷うケースもあるでしょう。そうした場合は消防庁の救急安心センター事業へ相談しましょう。こちらへ電話すると、医師や看護師などが傷病者の症状を聞き取り、緊急性の有無を判断します。

また、救急安心センター事業では、緊急性はないものの「体調が悪いけどどこの病院に行ったらいいか分からない」というときでも医療機関を案内してくれます。

救急安心センター事業の電話番号は#7119が多いですが、地域によっては番号が異なることがあります。例えば、今回話題となった三重県松阪地区では0120-4199-17が救急相談ダイヤルとして用意されています。もしものときのために、自分の地区の電話番号を確認しておきましょう(記載の番号は2024年2月時点のものです)。

まとめ

松阪市が決定した救急車有料化は、すべての救急搬送が有料化されるわけではなく、地域の基幹病院へ救急搬送されたものの、入院には至らなかったときのみ料金が徴収されるものです。さらに医師などの判断により、入院しない場合でも料金が不要になるケースがあります。

今回松阪市がこのような決定に至ったのは、救急車の出動件数が増えすぎて正常な運用が困難になっているためです。私たち一人ひとりが救急車を適切に使用することが求められています。

出典

厚生労働省保険局 外来時の負担等について
松阪地区広域消防組合 消防概況
松阪地区広域消防組合 過去の事案件数

執筆者:山根厚介
2級ファイナンシャルプランニング技能士

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