アジアカップ後の2024年Jリーグ「要チェック」の5人

今シーズンのJリーグがいよいよ開幕する。

J1は、戦力アップに成功したヴィッセル神戸が連覇を達成するのか。それとも、近年のJ1をリードしてきた横浜F・マリノスと川崎フロンターレが逆襲するのか。そして、大型補強を実現したFC町田ゼルビアは昇格1年目から快進撃を見せるか。今季も熾烈な昇格争いが予想されるJ2は、清水エスパルスが本命となるか。

アジアカップ後の日本代表にJリーグからどれだけ招集されるかという点にも注目が集まるなか、2024シーズンでチェックしたいJ1所属の5名をピックアップ。「今季のカギを握る日本代表ボランチ」から「再起を図る天才アタッカー」まで取り上げたので、最後までご一読頂けると幸いだ。

佐野海舟

所属クラブ:鹿島アントラーズ

選出理由:「アジアカップの悔しさを思い切りぶつけたい」

移籍初年度だった昨季に、抜群のボール奪取力と迫力ある持ち上がりを披露して話題を集めた佐野海舟。本職のボランチに加えて、試合途中からのサイドバック起用もそつなくこなすなど対応力の高さが光った。

昨年11月には、北中米ワールドカップ・アジア2次予選を戦う日本代表に追加招集の形で初選出。ミャンマー戦でさっそく代表デビューを飾ると、元日開催となったタイ戦でもプレー。カタールで先日開催されたアジアカップのメンバーにも選ばれた。

しかし、準々決勝でイランに敗れたチームと同じく、佐野も大きな悔しさを味わったはずだ。出場機会はグループステージ初戦のベトナム戦と第3節のインドネシア戦の2試合のみ。ベトナム戦が77分から、インドネシア戦は82分から投入され、プレータイムは思うように伸びなかった。

カタールの地で味わった悔しさを、Jリーグで思い切りぶつけたい。10日に行われた水戸ホーリーホックとのプレシーズンマッチでは、樋口雄太・知念慶・名古新太郎、そして後半開始から起用された佐野の計4名がボランチでプレー。彼らのほかに柴崎岳と舩橋佑もポジション争いに加わるはずで、競争は熾烈だ。

しかし、佐野にはボランチの一番手となり得る大きなアドバンテージがある。佐野以外のプレーヤーはいずれも攻撃面に持ち味があり、守備力にもっとも秀でているのが背番号25である。

また、今季より指揮を執るランコ・ポポヴィッチ監督とは、FC町田ゼルビア時代に共闘した間柄。指揮官の佐野に対する信頼は厚く、無念の途中離脱があった2022シーズンを除いて、一貫してチームの中心に据えていた。

ポポヴィッチ監督の攻撃的スタイルを実現するには、攻守の要であるボランチの働きが重要だ。指揮官の戦術を知り尽くす男が、今季のカギを握る。

酒井高徳

所属クラブ:ヴィッセル神戸

選出理由:「両SBと中盤に対応するベテランがリーグ連覇に導く」

リーグ連覇を狙うヴィッセル神戸において、酒井高徳の存在は今季も頼もしい。

昨季の酒井はリーグ戦29試合に出場し、2ゴールを記録。右サイドバック(以下SB)を主戦場に推進力を生かした力強いプレーでチームをけん引すると、終盤戦では中盤起用にも難なく対応。神戸の歴史的なリーグ優勝に大きく貢献した。

リーグ戦22ゴールをマークし、MVPと得点王に輝いた大迫勇也は文字通り別格だったが、闘う姿勢とプロ意識の高さを随所で見せつけた酒井も、絶対的エースに負けず劣らずの存在感を放ち、「影のMVP」と呼ぶべき活躍を披露した。

17日に国立競技場で行われたFUJIFILM SUPER CUPでは、右SBのポジションで先発フル出場。チームは川崎フロンターレに惜しくも敗れたが、武器とする球際の強さはやはり健在だった。

両SBと中盤で機能する酒井だが、川崎戦の起用法から推察するに、今シーズンも右SBの一番手として、攻守両面での貢献が期待される。

ただ、今季の神戸はリーグ戦・天皇杯・ルヴァンカップに加えて、AFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)と4つのコンペティションを戦うだけに、状況に応じて複数のポジションで起用されるかもしれない。

タフなシーズンを戦うにあたり、フロントは各ポジションで積極的な補強を展開。中盤はセルティック(※昨季はアビスパ福岡でプレー)から井手口陽介、V・ファーレン長崎から鍬先祐弥と運動量豊富なダイナモを獲得し、戦力アップに成功した。

日本代表経験もある実績十分の井手口が、川崎戦でさっそく起用されるなど計算が立つ一方、J1初挑戦となる鍬先がどこまで通用するかは未知数の部分もある。ケガ人などアクシデントの可能性も考えられる中、非常事態には背番号24が中盤で躍動してカバーするに違いない。

昌子源

所属クラブ:FC町田ゼルビア

選出理由:「元日本代表CBが覚悟を持って新天地へ」

神戸と同じく歴史的なリーグ優勝を飾ったFC町田ゼルビアは、J1での戦いに備えて精力的な補強を実現した。ナ・サンホ、柴戸海、仙頭啓矢、谷晃生、ドレシェヴィッチら実力者を多数獲得した中、大型補強の一番の目玉が、鹿島アントラーズから迎え入れた昌子源だ。

クラブ、代表ともに豊富な経験の持ち主である昌子だが、昨季の鹿島ではリーグ戦21試合出場もプレータイムは計644分と苦しい時期を過ごした。

リーグ戦全試合にフル出場した植田直通および飛躍的な成長を遂げた関川郁万の後塵を拝し、序列はセンターバック(以下CB)の3番手。関川のバックアップを務めつつ、リード時のクローザーとして役割を全うした。

複雑な胸中は、町田への移籍に際して鹿島公式サイトにてリリースされた「お知らせ」からも読み取れる。

自身の果たすべき役割、サポーターへ感謝の言葉を述べつつも、『ただ、自分の年齢、この先のキャリアを考えても、試合に出て勝利に貢献したい、楽しくサッカーをしたいという思いは日に日に強くなり、それが移籍の決断につながりました』と抱えていた葛藤を明かした。

新天地の町田では、加入1年目からいきなりキャプテンに就任。守備陣最年長として、豊富な経験をピッチ内外で還元する役目を担うことになる。

昨季の主戦CBだったチャン・ミンギュおよび池田樹雷人はJ1初挑戦となり、コソボ代表のドレシェヴィッチはJリーグ初参戦。実力はもちろん、実績の面からもJ1通算249試合出場を誇る背番号3にかかる期待は大きい。

また、黒田剛監督が今季も4バックと3バックを使い分ける場合においても、その経験値の高さは重宝されるはずだ。元日本代表CBがプレーと立ち振る舞いで覚悟を示し、町田の快進撃を支える。

見木友哉

所属クラブ:東京ヴェルディ

選出理由:「J2屈指の実力者が満を持してJ1を戦う」

実に16年ぶりとなるJ1の舞台を戦う東京ヴェルディに、テクニシャンが加わった。新加入ながら背番号10を託された見木友哉だ。

昨季はジェフユナイテッド千葉の10番として、小林慶行監督の攻撃的スタイルに不可欠な存在として活躍。不動の司令塔・田口泰士とダブルボランチを形成し、守備時は<4-2-3-1>、攻撃時は<4-3-3>へ変化する可変システムを左ボランチ/左インサイドハーフの位置で支えた。

5シーズンを過ごした千葉では、J2通算165試合出場・30得点を記録するなど、J2屈指の実力者としてキャリアを築いてきた。J1クラブへのステップアップの機運が高まった中、見木が新天地に選んだのは、昨季のJ1昇格プレーオフ準決勝で激闘を繰り広げた東京Vだ。

喜怒哀楽にあふれた熱血漢・城福浩監督のもと、攻守にアグレッシブなスタイルでJ1昇格をつかんだ東京Vは、パスやドリブル、シュートなど攻撃性能全般に優れる万能型アタッカーの見木にとって、理想郷となり得る。

現チームには、惚れ惚れするボールさばきでリズムをつくる司令塔の森田晃樹を筆頭に、綱島悠斗や深澤大輝、平智広、谷口栄斗らテクニックに定評があるアカデミーの出身者が多い。最終ラインから丁寧にパスをつなぐ城福監督の基本コンセプトも追い風で、千葉時代と同等またはそれ以上の活躍が見込めるはずだ。

指揮官が昨季と同じく<4-4-2>または<4-2-3-1>を採用する場合、マルチロールの見木は中盤の全ポジションでプレー可能である。ただ、持っている能力を最大限引き出すことを考えれば、左サイドハーフまたはトップ下に配するのがベストだろう。

城福監督がどのような起用法で背番号10を輝かせるのか、要注目だ。

荒木遼太郎

所属クラブ:FC東京

選出理由:「ポテンシャル抜群の天才アタッカーは復活なるか」

移籍市場の“隠れた目玉”だった天才アタッカーが、首都クラブで再起を図る。

名門・東福岡高から2020シーズンより鹿島アントラーズに加入した荒木遼太郎は、ルーキーイヤーからリーグ戦26試合に出場して2ゴールを記録し、翌2021シーズンにブレイク。リーグ戦36試合で10ゴールと高卒2年目にしてふた桁得点を決めてみせ、ベストヤングプレーヤー賞を受賞した。

しかし、更なる飛躍が期待された2022シーズンから、荒木は苦しむことになる。

2022年5月下旬に腰椎椎間板ヘルニアの治療のため離脱し、このシーズンはリーグ戦13試合出場で1ゴール。昨季も同じく13試合に出場したが、ノーゴールと不完全燃焼に終わった。

昨季終了後は移籍が噂され、6クラブ以上による争奪戦が報じられた中、FC東京への期限付き移籍を決断した。

チームを率いるピーター・クラモフスキー監督が、昨季同様に<4-2-1-3>を基本システムに据えるならば、最も得意とするトップ下で起用されるか。ウィングに配される可能性も十分あるが、相手DFを出し抜くテクニックと溢れんばかりの閃きはバイタルエリアでこそ輝く。ピッチ中央が最適解だろう。

J1に「強度時代」到来か。ヴィッセル神戸と町田ゼルビア、歴史的優勝がもたらした“転換期”。

新天地での活躍が大岩剛監督の目に留まれば、パリオリンピック(以下五輪)出場を目指すU-23日本代表に招集されるかもしれない。

パリ五輪世代のアタッカーは、斉藤光毅&三戸舜介(スパルタ・ロッテルダム)、佐藤恵允(ブレーメン)、鈴木唯人(ブレンビーIF)ら楽しみなタレントが揃うが、4人はいずれも欧州でプレー。五輪は4月の最終予選を含め招集の強制力がないため、海外組を呼べるかは不透明だ。

現在のU-23代表では、鹿島に同期入団した松村優太が存在感を示している。スピード自慢の松村と閃き自慢の荒木が、再び同じチームで共に闘う――。仮に実現すれば、これほどエモーショナルなことはない。

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