「最後の最後まで自分を認める事ができなかった」引退した杉田祐一が胸の内を吐露<SMASH>

2月16~18日に開催された「第38回テニス日本リーグ」決勝トーナメントで杉田祐一が現役を引退した。杉田はイカイのシングルスNo.2として準々決勝に出場。レック興発の田口涼太郎に敗れ、これが現役最後の試合となった。大会最終日には杉田の引退セレモニーが行なわれ、その翌日には自身のブログを更新、今の思いを投稿した。

現在35歳の杉田は、7歳でテニスを始め、2006年10月にプロ転向。翌年のデビスカップで当時の最年少勝利を収め、以降も日本の勝利に貢献してきた。17年にはアンタルヤ・オープンでツアー初優勝を飾り、同年の世界ランキングで自己最高位となる36位をマーク。

しかし苦しむ時期も長く、21年はセルビアに拠点を移して再スタートしたものの、同年9月から半年近くツアーから離脱していた。22年はチャレンジャー大会を中心に転戦し、23年はツアーの予選3大会に出場、3月のインディアンウェルズが最後のツアー大会となった。

杉田は更新したブログの中で、この状況を「今思えば、私の選手生活は21年のUSオープン(キャスパー・ルードとの試合)が選手としての最後だったのだと思います。コロナの影響とギリギリだった気持ちが一度切れてしまい休養を取ってしまったあの時が選手としての終わりだったのだと思います」と振り返っている。

ブログには「いつも何度も書き直しているので、最後は、ありのまま書いていきたいと思います」と書き出し、以下のように続けた。
「最後の最後まで自分を認める事ができなかった事を悔しく思います。できない自分を認める事がとにかく私はできませんでした。試合に負けて泣くことができず、どうしてあの時あのプレーができなかったのかといつも自分を責めてばっかりいました。いつの日か、圭(錦織圭 選手)やよっしー(西岡良仁 選手)に試合で負けて泣くことって未だにある?と聞いたことがあって、その時皆、全然あるよと答えていました。二人共きっとベストを尽くした自分を認めてあげることのできる選手なのだと思います。自分はいつもどんな良い試合で悔しい敗戦でも自分を責め認めることができなかったのだと数年前に感じていました」

「せめて引退の時くらいはできるのかと思っていましたが最後の最後まで自分を認めて試合することができなかったことに笑えてしまいます」

「自分を認めて可能性を信じて、自分はこんなプレーもできるんだぞ!という気持ちでプレーを楽しむことができればもしかしたらもっと幅の効いたプレーできたのではないかと少しばかり後悔の気持ちもあります。しかしながらもしかしたらこんな完璧主義な性格だからこそ、ここまでこれたのかもしれないとも思っています。しかし最後の引退時に人前で泣くことが出来たことは今までの自分では絶対に出来なかったことなので、自分を認めてあげれたのかもしれません」
現在、杉田は自身が開校したアカデミーでジュニア育成に携わっており、自身の経験を生かして最大限のサポートをしていくことも記している。

「今から選手を目指す皆さんは本当に大変な道のりになると思います。こんな状況だからこそ自分の経験と必要なサポートをやっていかなければと思っております」

「これからの選手、アカデミー生徒の皆さんに自分のできなかったことを押し付ける気は全くありません。彼ら彼女らの可能性を最大限高められるようサポートをしていきたく思っています。いい形で伝えることができれば、これが本当のテニス選手としての引退になるのだと感じています。いち早くその日が来てくれることを望んでいます」

「いやー。。実は本当に調子が良かったんです。練習の時は全盛期のプレーができていると感じたほどプレーに自信がありました。ですが気持ちが調整できなかったことは長いこと戦いから離れてしまっていたからなのだと思います。戦いの渦の中にいるということはとてもとても重要なことなのです」
「なにはともあれ自身の戦いは終わりです。選手生活はいつ終わりを迎えてもおかしくない、本当に繊細なものです。この芸術文化をどうか引き続き皆さんの手で守り抜いて頂きたいです。私もその為に、戦っていくつもりです。これからも皆様と一緒に戦えることを楽しみに次のキャリアへと向かいたいと思います。引き続きどうかよろしくお願い致します」

約18年間の現役生活では、苦しんだ時期も長かった杉田。様々な経験を生かし、自身が手掛けるアカデミーでは素晴らしい選手がたくさん育つことを期待したい。

構成●スマッシュ編集部

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