休日の大人旅~まさに極楽浄土~

伊豆沼・内沼はすまつり

今日は、この「伊豆沼・内沼はすまつり」を目当てに、一人の女性が伊豆沼に降り立った。仕事に追われる日々の合間を縫って、たった一人の自由な旅「大人の休日旅」を満喫する、それが目的だ。この日のために準備した涼やかな浴衣に身を包み、真夏の日差しに目を細めながら、その表情はどこか儚げな雰囲気。そんな表情が許されるのも、誰にも心配をかけずに自分の時間を過ごせる「大人の休日旅」の醍醐味だ。

伊豆沼は近年の温暖化の影響によって、天候や日照時間、災害などで毎年の開花状況が異なっていると言う。今年(2023年)は昨年の豪雨で沼の水位が上昇し、一部のハスは水没して枯れてしまったが、その中でも生き延びたものたちが可憐な花を咲かせていた。

そして、毎年はすまつりで大活躍するのが地元の船頭さん。可愛らしいハイカラな屋根を付けた6、7人乗りの小舟を操り、乗船客に約20分間の美しい水面の旅を提供してくれる。

『はい、出発しますよぉ!救命具を着てしっかり捕まっててね。』

小舟はブルルルンと軽快なエンジン音を鳴らしながら、ぐるりと周り水面の旅へと出発!

真夏の暑さを忘れてしまうほどの爽やかな風が、スゥッと船の中を通り抜け、さっきまで居た桟橋が小さく見え始めた頃、目の前には大人の手を広げたほどの大きなハスの花たち!

風にゆらゆらとなびく桃色の花たちは、沼の奥からスラリと伸び地上に顔を出していて、その姿は力強さに加えて、凛としたたくましさも感じる。伊豆沼に生育しているハスは食用ではない種類で、食用のハスは茎の部分を「蓮根(レンコン)」として市場に出している。また、花の色は伊豆沼のような桃色(赤)の他にも白色が存在し、その違いは食用とは無関係と言われている。見れば見るほどハスの魅力に惹き込まれて行きそうだ。

そんなハスの花を見つめながら『ふぅ』っと深呼吸。

日頃の慌ただしい時間を忘れて、やわらかな風と水面に咲く花々に自然と笑顔が浮かぶ。青空に映える桃色のハスの花は芸術的な魅力以外にも、見るものにエネルギーを与えてくれる、そんな不思議な世界が存在しているかのようだ。

『あそこに座ってもいいですか?』

『ふふっ』と、ほころんだ表情を見せながら足早に船首(せんしゅ)に座ると、ハスの花たちはそれを見守るかのようにして、フワリと揺れ動いた。伊豆沼の大自然が人々に笑顔を呼び込み、日々の目まぐるしい時間の中に「大切な時」を与えてくれる。

ポツリと溢れ出す言葉は

『来てよかったなぁ』

20分間という水上の幻想的な時間は、普段あっという間に感じる時の刻みとは違い、ハスの花たちがゆうらり揺れ動くような、そんなゆっくりとした時間が流れていた。

『ゆっくりしていきなさい、のんびりしていいんだよ。』

まるで、ハスの花々からそんな声を掛けられたかのようで、思わず笑みがこぼれた。

広大な水面に広がる美しいハスが、これからもここに生き続けられますようにと願いつつ、『また来よう』そう心の中でつぶやいた。

うーんと伊豆沼の透き通るような空気を吸い込むと、なんだか美味しい珈琲を飲みたいなと閃いた。こんな風に突然思った時にフラッと立ち寄ってみる、それができるのも大人の休日旅の良いところ。時間を気にしないで自由に動く。

『こういう感じ、良いよね。』

パッと調べてみるとここからほど近い場所に、素敵なジャズ喫茶「カフェ・コロポックル」というお店の情報を発見。ここから車で1、2分(徒歩で約10分)、なんて素敵!と思いつつ、早速カフェへと向かった。

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