全盛期の輝きを取り戻しつつある元1位プリスコワ。鍵である「自信」の回復にうってつけの新コーチが就任!<SMASH>

元世界1位のカロリーナ・プリスコワ(チェコ)が、再び全盛期の強さを取り戻そうとしている。

「トランシルバニア・オープン」(2月5~11日/ルーマニア・クルジュナポカ/WTA250)で2020年以来のタイトルを獲得し、続く「カタール・トタルエナジーズ・オープン」(2月11日~17日/カタール・ドーハ/WTA1000)では準決勝に進出。10日間で9戦という過密日程のため、イガ・シフィオンテク(ポーランド/1位)との準決勝は棄権したが、78位まで下降していたランキングは一気に36位まで跳ね上がった。

「78位」は、彼女にとってここ10年で最低ランキングだった。低迷のきっかけは、22年の開幕前のアクシデントだ。ジムでのトレーニング中の事故で手首を骨折すると、3月に復帰するも、ツアー決勝進出は9年ぶりにゼロで、32位でシーズンを終えた。15年以来のトップ10圏外フィニッシュだった。翌23年も復調にはほど遠く、10月の「東レ・パン・パシフィック・オープン」をケガのため欠場し、シーズン終了も発表。今季開幕戦の「ブリスベン国際」から復帰したが、全豪まで3大会連続で早期敗退していたのだった。

急浮上の要因はどこにあるのか。本人はWTA公式サイトに連勝をこう振り返っている。

「昨年の後半はほとんど勝てなかったけど、今はたくさんの試合に勝てるようになった。それは勢いだと思う。ルーマニアでは全試合ストレート勝ちだった。だから、少しリラックスすることができたの。リラックスすると、もっといいプレーができる」

闘争心旺盛な彼女にとっては、勝てない時期もモチベーション低下に悩むことはなかったという。それよりも問題だったのは「自信」だった。フラットなショットで攻撃的に戦うプリスコワにはとりわけ重要な要素だろう。
「私のプレーは自信に基づくものだから、それを感じる必要がある。たとえうまくいかなくても、勝てなくても、自信を見つけないといけないの」

プリスコワは強力なサポート役も得た。昨年の7月に大坂なおみの元コーチであるサーシャ・バインとの契約を解消し、今季はコーチなしで戦ってきたが、ドーハからはゼリコ・クラヤンが帯同している。クラヤンはエレナ・ヤンコビッチ(セルビア)やディナラ・サフィーナ(ロシア)ら元世界1位を指導したことで知られる名コーチだ。

サフィーナを1位に導いた当時、クラヤンは月刊スマッシュのインタビューでこう語っていた。

「私がディナラに会った頃、彼女は自分自身を、そして自分の持っている能力を信じることができていなかった。だから、彼女に自信を持たせることが、自分の最大の仕事だと思った」

飛躍のキーワードは「自信」だった。クラヤンは、まず選手と徹底的に話し合うことで、自信を失った原因を探り、それを理解し、解決策を示した。サフィーナはやがて、ジュスティーヌ・エナン(ベルギー/元1位)やセレナ・ウィリアムズ(アメリカ/元1位)らを下して、自分の力を確信するようになっていった。

自信を取り戻しつつあるプリスコワとそれを後押しするクラヤン。2年ぶりのトップ10復帰はそう遠くはなさそうだ。

構成●スマッシュ編集部

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