シリカ工場悪臭訴訟、契約解除求めた多可町の訴え棄却 「臭気対策の前提となる合意欠く」 地裁支部

神戸地裁姫路支部=姫路市北条1

 兵庫県多可町の旧八千代北小学校跡地に建設された植物性シリカ工場に対し、近隣住民から悪臭への苦情が多発していた問題で、町が工場の運営会社を訴えた民事訴訟の判決が21日、神戸地裁姫路支部であった。増森珠美裁判長は判決文で「(町の主張が)前提を欠き、採用することはできない」とし、契約解除を求めた町の訴えを棄却した。

 同校の跡地を巡っては、町がたばこ販売や植物性シリカ製造業の「広藤洋行」(堺市)を利用者として選定し、2020年9月に工場が稼働。近隣住民から悪臭を訴える苦情があり、町は22年2月、同社に対して土地と建物の明け渡しを求める訴えを神戸地裁社支部に起こしていた。

 増森裁判長は「(広藤洋行が)『臭気をほとんど出さない』という合意に違反した」という町の主張に言及。契約までに「どの程度までの臭気であれば許容されるのかについて協議したり、具体的な基準を定めたりした形跡はない」とし、主張の前提となる合意の存在を否定した。

 工場から出る白煙についても契約時の合意がなく、「工場の稼働により、周辺住民の生活環境を脅かす程度の白煙を排出していたとは認められない」とし、多可町の主張を退けた。

 その後の臭気対策についても、町が同社に対して「地域住民との信頼関係を回復する『何らかの措置』を取るよう求めるのみで、明確な行動指針や具体的な対応措置を示すことがなかった」と指摘した。

 判決後、広藤洋行は「当社の主張が認められ、安堵している。今後も操業を続けられるよう、各所と調整を続けたい」とコメント。町は「地元住民と必要な主張を行ったが、認められず大変遺憾。判決の内容を十分に精査して控訴も検討したい」としている。(伊田雄馬)

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