「アクスタ」なぜいとおしい? 源流はハロプログッズ、今や七五三でも我が子をパチリ

「子どもが一番の推し」という発想から作られた七五三参りのアクリルスタンド=大阪市住吉区、住吉大社

 アイドルの応援グッズとして登場し、アニメキャラクターの商品としても定番化した「アクリルスタンド(アクスタ)」。今や好きな有名人などを応援する「推し活」にも欠かせない存在だ。写真が印刷されただけの小さな板なのに、なぜこれほどいとおしいのか。その心理には、日本古来の習慣と関係がありそうだ。(津田和納)

透明板に好きな写真を印刷

 アクスタは、透明なアクリルにアイドルやキャラクターの写真がプリントされたもので、高さは10センチほど。フィギュアのように飾れるほか、お気に入りの場所に持ち運んで景色や食事と写真撮影するのが人気となっている。

 「元々はアイドル集団『ハロー!プロジェクト(ハロプロ)』のグッズとして、2014年ごろから販売された」と話すのは関西大学(大阪府吹田市)の森貴史教授(文化共生学)。「当初の売れ行きは悪かったが、次第にSNS(交流サイト)での写真投稿が増え、一気に知られるようになった」という。

 自身もハロプロオタクの森教授によると、アイドルを写したグッズは紙のブロマイドが主流だったが、①丈夫で軽い②コンパクト③値段が手頃-という利点から、他のアイドル事務所もアクスタを売り出した。簡単に立てて置くことができるため「公演やライブといった遠征や聖地巡礼に持ち歩いたり、写真を一緒に撮ったりするのが醍醐味(だいごみ)」。

 コロナ禍で人との接触に制限があった時期に普及したといい、「外部とのつながりが絶たれて、人に会えない寂しさがアクスタの活用頻度を高めた」と森教授。SNS上で投稿に興味を持った人同士が交流することもあり、「コミュニケーションで仲間意識も生まれるし、自己承認欲求も満たされる」と話す。

 アクスタになるのはアイドルだけではない。アニメキャラクターのグッズとしても定番化。プロ野球阪神タイガースや、オリックス・バファローズの選手もアクスタ化され、ファンの手でいろいろな場所に持ち運ばれている。

日本古来の習慣と関係?

 ここに注目したのが、住吉大社(大阪市住吉区)。昨年春に結婚式を挙げた夫婦が、自分たちのアクスタを受付に置いたところ「おもしろい」と評判に。七五三参りのグッズとして活用できるのではと、昨秋から商品化。大社での撮影データとアクスタをセットにして1万6500円で売り出し、すでに100件の利用があった。4体を注文した家族もいたという。

 アクスタを手にした家族がX(旧ツイッター)に写真を投稿すると、6万近くの「いいね」が寄せられ、「バズった(広く話題が拡散された)」。投稿には、「宝物だね」「今どきだ~」といったコメントがついた。「子どもは一番の推しと言うけど、ここまでとは」と担当者の西川千尋さんは驚きを隠せない。

 これまでも大社で撮影した写真を使ってキーホルダーや3Dフィギュアなどのグッズを出してきたが、「アクスタは目新しくてキャッチーなのか、反響が大きい」と西川さん。お宮参り写真でも考えているといい、「いろんなところに一緒に連れて行って、思い出にも浸ってもらいたい」と話す。

 関西大の森教授にあらためて聞いてみた。私たちが、アクスタに引きつけられるのはなぜ?

 森教授は、平安時代に始まったひな祭りを例にあげ、「フィギュア文化など、コレクションを飾ったり、めでたりする慣習が日本人には染みついている」と分析。さらに、アクスタは「写真と人形のちょうど中間で、商品としてフレキシビリティー(柔軟性)も高い。今後も活用が広まっていくだろう」と予測している。

© 株式会社神戸新聞社