中国が台湾の観光船に立ち入り検査 「パニック」招いたと台湾が非難

中国海警局は19日、金門群島付近の海域を航行していた台湾の観光船に立ち入り検査を行った。台湾当局は、中国海警局の職員6人が船内の「パニック」を引き起こしたと非難している。

海警局の職員は観光船の航路や航行許可証、乗組員のライセンスなどを確認し、30分後に立ち退いたという。

14日には同じ海域で、台湾の沿岸警備当局の追跡を受けた中国の漁船が転覆し、乗っていた中国人漁師2人が死亡した。

中国政府はこの件の後、金門群島周辺のパトロールを強化するとしていた。

台湾の金門群島は、中国大陸から3キロメートルしか離れておらず、中国と台湾の緊張関係の最前線となっている。

中国は台湾を、いずれは自国の一部となる、分離した省とみており、そのための武力行使の可能性を排除していない。一方、台湾は自らを中国とは別の国家と考えている。

台湾海洋委員会の管碧玲主任委員は、「海警局による立ち入り検査は、台湾人の感情を傷つけ、パニックを引き起こした。海峡を隔てた人々の利益に沿うものでもない」と指摘した。

立ち入り検査を受けた観光船には11人の乗組員と23人の乗客が乗っていた。そのうちの何人かは緊張し、「台湾に帰れないのではないか」と心配していたという。

台湾の中国時報が投稿した映像では、女性の乗客が「とてもショックを受けて不安になった」と話していた。

管主任委員は、中国や台湾の観光船が偶然に相手側の海域に入ることはよくあることだと話し、「このような船舶はまったく違法ではない」と付け加えた。

台湾の邱国正国防部長(国防相)は21日、議会で記者団に対し、緊張をエスカレートさせないため、軍隊はこの事件に「積極的に介入しない」と述べた。

また、「この件は平和的に処理するべきだ」とした。

台湾当局によると、中国の漁船は14日、台湾が実行支配する海域に侵入した。

漁船に乗っていた4人の漁師が調査に抵抗し、台湾当局が追跡したところ、漁船は転覆したという。

漁船に乗っていた4人のうち2人は蘇生がうまくいかず、病院で死亡が確認された。生き残った2人は金門群島に移送された。

中国の国営メディアによると、生き残った2人を中国に連れ戻すため、家族が21日に金門群島に到着した。

中国政府はこの事案を「強く非難」すると表明。「台湾海峡両岸の同胞の感情を深刻に傷つけた」とした。

(英語記事 China coast guard caused 'panic' by boarding tourist boat, says Taiwan

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