飄々ととぼけるボケの田中一彦に、ツッコミの武智が力強く指摘していくスタイルが特徴的な漫才師・スーパーマラドーナが、コンビ結成20周年を迎えた。マラドーナというコンビでスタートした二人は一度解散して、スーパーマラドーナとして再出発。『M-1グランプリ』では4年連続の決勝進出を果たすなど実力派として知られ、現在は初めての全国ツアーの真っ只中だ。
※本記事は『+act.(プラスアクト)2024年3月号』(ワニブックス:刊)より、一部を抜粋編集したものです。
愛媛のチケットが売れてない!
――今回が初めての全国ツアーだというのが意外でした。
武智 東京と大阪での単独はやってたんですけど、20周年なので全国を回ってみようということになったんです。北海道とか沖縄にも行こうとしてたんですけど、今の僕らやと集客が無理やろって、5か所でやらせてもらうことになりました。
田中 愛知はすでに終わったんですけど、すごく良かったですよね。
武智 あったかいお客さんで。僕らはセコいので毎公演ゲストを豪華にしていて、愛知はNON STYLEを呼んだのでチケット即完。大盛況で終わりました。
田中 助かりました。まぁ、同期なんでね?
武智 今回のツアーは各地で同期をゲストに招いているんです。僕の生まれ故郷である愛媛だけは、初の凱旋ライブなので二人だけでやろうと決めました。父も母も高齢で、一度くらい目の前でがっつりと漫才をやってる姿を見せておきたいっていうのもあって。
田中 ご家族はうれしいでしょうね。ただ……怖いですねぇ、愛媛。
武智 チケットが全然売れてない。
田中 えぇ~!
武智 でも、実家にポスターを100枚送ったから。姉が高校で教師をやってるんで、校長先生に頼み込んで校内にポスターを貼らせてもらえることになってますし、父も母もポスター貼りには協力してくれるらしいんで、当日は高校生と高齢の人しかおらんみたいな。あいだの層はどこ行ってん? みたいな客席になるかもしれないです。
――20周年を記念した全国ツアーですが、披露される漫才は新ネタですか? それとも、今までのネタも取り入れた集大成的なものなんですか?
武智 過去のネタをブラッシュアップしたものと、新ネタをごちゃ混ぜにしてやっていけたらなと思ってます。ゲストが来てくれる公演は、我々がネタを何本かやったあとに、ゲストにもネタをやっていただいて。ゲストと一緒にコーナーを楽しんで、最後に我々がネタをするという感じですね。今せっせとネタを作っているので、ネタを何本やるかはっきりと決めてないんですけど。
田中 ただ、愛知公演は時間が足りなかったんですよね。
武智 ネタを8本やってしまったんでね。まぁ、『THE SECOND~漫才トーナメント~』も見据えながら、単独は単独としてちゃんと面白いネタをやります。愛媛では単独をやるのは初めてですし、僕らが普段、寄席でやっているネタも見たことがないと思うので、こういう漫才をやっていますっていう、お披露目みたいなネタもやりたいですね。
田中 武智さん、愛媛に帰ったら愛媛弁に戻るんですかね。たまに電話してるとき、戻ってますよね?
武智 あぁ、ほんまに? 全然意識してなかった。
田中 けっこう変わりますよ。もしかしたら、愛媛公演では普段と違う武智さんも見られるかもしれないです。
武智 ……愛媛の人が愛媛弁聞いても普通やと思うだけやけどな?
――(笑)。
田中 大阪とか違う地方から見に来る人も、もしかしたらいるかもしれないですから。そういう人にとっては見どころになりますよね。
武智 たしかに。ありがたいことに「全公演に行きます」と言ってくれる方もいるんですよ。同じネタはやらないと思いますので、全公演楽しんでもらえるといいですね。ルミネ(theよしもと)で単独をやるのも久しぶりなんですよ。コロナ前の2019年に、NGKとルミネで単独をやらせてもらってからだいぶ経ってるので、足を運んでくださる方に“おもろいなって”思ってもらえるように頑張りたいと思ってます。
――田中さんも告知コメントで「めちゃめちゃ気合入ってます」と言ってましたよね。
田中 僕、そんなん言ってました?(笑) まぁ、単独ライブはやっぱり気合入れんと。ネタ数も多いですし。
武智 体力も必要やしな。
田中 そうなんです。この前の愛知公演、久々の単独やったんで疲れました。その前に舞台もあったんで余計にへとへとになってしまって、次の日めっちゃ寝ましたもん。
武智 愛知公演の日、朝から兵庫で営業がありまして。そのあと(劇場で)3ステージやってからの単独やったんですよ。その単独でネタ8本やって……めちゃめちゃしんどかった。僕ら46歳と45歳なんでね。20代や30代やったら大丈夫やったんでしょうけど、さすがにしんどかったので、単独当日は仕事控えめでお願いします、とマネージャーに伝えました。
解散したからわかることってあるんですよ
――ネタ合わせはどんなふうに進めているんですか? 武智さんがネタの台本の全てを書かれているんですよね。
武智 そうです。台本を渡してから2~3日とか5日くらい憶えてもらう期間があって。憶えたら立ち稽古をして、細かいところを修正してから、お客さんの前に出すという感じですね。
田中 僕、ネタを憶えないといけないんですけど、年々、記憶力が衰えていて。ネタによっては2行くらいのセリフやのに、なんか入ってこうへんっていうか、1週間経っても憶えられへんときが……。特に歌ネタとか脈絡のない歌詞の羅列やと大変で。
武智 確かにそういうネタは憶えにくいと思います。会話の流れでどんどんヒートアップする感じやったら憶えやすいんですけど、関連性のないセリフは大変やと思います。
――憶えにくいから変えてほしいって、お願いすることはないんですか?
田中 いやいや、言えないですよ、そんなん。ダンスみたいなもんで、体に染み込ませるようにめちゃくちゃ練習するしかないんです。ただ厄介なのは、ネタって改良したりして変わるじゃないですか。(最初のセリフが)染み付いてるから上塗りがなかなかできないし、緊張すると最初に憶えたボケが浮かんできて、“どっちやったっけ”となるんで、『M-1』のときとか怖かったですね。
武智 今回はストレートに憶えてもらうだけなので、その辺は大丈夫なんじゃないかと思ってます。ネタでいうと、愛媛はNGKの昼出番でやるようなネタを中心に、東京と大阪はエッジを効かしたネタをやろうかなと。福岡はどちらもやろうと思ってますけど、ゲストがギャロップなんでお客さんはあんまり来てくれんかもな。
田中 そんなこと言うな! お互いさまやからね。
武智 (笑)。お互いさまやし、福岡までわざわざ来てもらうからな。大阪はゲストがナイツさんなので即完したんですよ。ナイツさんのお陰です。
田中 めっちゃありがたいですね。
武智 東京もゲストがダイアンなので売り切れると思います。ダイアンのおかげです! もしこれを読んで興味を持ってくれた方がいたら福岡へ来てください! あと愛媛も。
――20周年については、改めてどんな思いがありますか?
武智 2003年にコンビを結成して昨年で20年。僕らほどいろんな紆余曲折があったコンビはいないんじゃないかなと。僕が3回炎上して、田中が2回飛んでるので波乱万丈ですよね。和牛が解散を発表しましたけど、あんなに売れていて人気があるコンビでも、そうなってしまうなか、僕らは地味に低空飛行しながら、よくぞ20周年までたどり着いたなと。だから、今回のツアーのタイトルも『なんとか、ここまで来れました』なんですけど、続けてこられてよかったです。
田中 和牛も解散するけど組み直すこともあるかもしれないですよね。解散してからわかることってあるから。