新木宏典、大いに語る!舞台「モノノ怪〜座敷童子〜」合同取材会レポ

本作は、2007年7月よりフジテレビ「ノイタミナ」枠ほかにて放送された『モノノ怪』の舞台版。第一弾は、作品の原点となった同枠放送の『怪 ~ayakashi~』シリーズの1エピソード「化猫」を舞台化。第二弾となる本作では、アニメ『モノノ怪』の第1・2話を飾った「座敷童子」が満を持して舞台化。公演は3月21日から24日まで東京・IMM THEATER、29日から31日まで大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール、4月4日から7日までIMM THEATERにて。主人公・薬売り役は、新木宏典が再び演じる。待望の第二弾、今の気持ちや役柄について、作品の魅力などを大いに語ってもらった。

ーー第二弾を迎えた今の気持ちをおねがいいたします。

新木:第二弾ができるのはすごくありがたいです。第一弾の結果、いい印象で終えられたことがまずありがたいなというのが率直な感想です。第二弾を作るというのは、一回目を作ることに比べて圧倒的にハードルが高い。同じことをやったとしても、品質としては落ちてたと思われてしまう、これはどの仕事でもそうだと思うんですけど。同じ現象が起きると思いますね。「モノノ怪」の初舞台化っていうことへの話題性もありました。今回、旅公演も規模も大きくなっているので、そこでの期待値というところでは一筋縄ではいかないなと思いますし、プレッシャーを感じます。

前回公演ダイジェスト映像

ーー期待のハードルも当然ありますね。

新木:そうですね。ただ、一つの場所でやるわけではないので。旅公演に持っていける作品にしなきゃいけない。別のハードルがあるのかなと。どんな場所、会場でも見せられる作品にしなければならないですね。

ーーどうなるか、ご自身も楽しみにしている?

新木:はい。

ーー今回の「座敷童子」のエピソードが舞台化されますが、ご感想をお聞かせください。

新木:舞台『モノノ怪』をやるとお伺いした時のイメージ、「舞台『モノノ怪』をやります」って「ああ、わかります、ああいう作品だったな」とイメージしたのが、実はアニメ『モノノ怪』の第1・2話で放送された「座敷童子」だったんです。
素敵だと思った衝撃を与えられたのが「座敷童子」、僕にとっては(それが)THE・「モノノ怪」というような、代表するようなエピソードな話だなと。第一弾は『怪 〜ayakashi〜』というタイトルのときは「化猫」が原作だったので、ようやく第二弾で『モノノ怪』の「座敷童子」がやれるんだという楽しみな気持ちが大きいですね。

ーー「座敷童子」のどこに衝撃を受けたのでしょうか。

新木:色彩感覚ですね。何よりも色の使い方がキレイだった、すごく華やかで幻想的でありながら、僕が日本人として育ってきたからかはわからないですけど、馴染みのある色を使われていた。そこが「モノノ怪」を好きになった理由でもありますし、味わいのある作品。これが舞台、しかも映像にまったく頼れないなかで僕が一番魅力に感じた色彩感覚、難しいと思いますし、どう見せるのか、個人的にはすごく楽しみにしているところです。

ーー悲劇なストーリーですが。

新木:ストーリーに関しては、命が関わってくる話。「モノノ怪」特性は、人間の汚い部分、隠したいと思う本心の部分、私利私欲があらわ出た結果、生じる問題というのをテーマになっていると思います。そういう意味では重くなったりするんですが、重く感じすぎることは、「モノノ怪」をやる上ではリスクになるような気がします。

ーーそれはつまり、どういうことでしょうか。

新木:薬売りはフラットな立場です。物語を産んで動かしているのは周りの人たちで、薬売りはあまり深入りしない。ご覧になったお客様はこの物語を観てどう受け止めるかはみなさんの自由だと思いますが、僕自身は、そこは冷静に受け止めなければと感じています。

ーーこの物語、役に臨む心構えは?

新木:物語を産んで作っていくのは、周りの人たち。でも舞台『モノノ怪』という看板を背負うのは薬売りを演じている僕。作品が悪ければ、名前に傷がつくのは僕自身です。作品がよかったら、僕の評価が上がる。主演である以上、言い訳はできないし、受け入れなければならない。カンパニーの雰囲気や作品に対する取り組みをコントロールできなかった座長の責任なのだと受け入れる覚悟を持っておかなければいけないというのは、第一弾をやっているときから思っていたし、今回も当然変わりませんね。

――第二弾発表の際も「前作を超えることは自覚を作る上で必須であり、これにプレッシャーを感じないと発言するのは、偽りの言葉を使おうとしても難しい」とおっしゃっていました。

新木:まさに『モノノ怪』という作品の特性でもありますが、薬売りというキャラクターがすべての看板。薬売りが旅をして、訪れた先で物語が起きる。話ごとに薬売り以外のキャラクターはすべて変わるわけです。薬売りを演じる僕がいることによって、観ている人にこれは舞台『モノノ怪』なんだとわかってもらえるようにしなければいけなかった。薬売りを演じるには、その責任を負うことが必要です。第一弾のときもカンパニーのみなさんには「僕が薬売りとして立ち続けることによって、作品を成立させる覚悟で挑みます。だから、みなさんは自由にやってください」とお伝えしていました。

――その責任は、第二弾でも変わらないと。

新木:むしろ第二弾は薬売りの出番が第一弾よりかは多少限られる分、より負荷が大きくなると考えています。象徴がいない状態で物語が進む尺が増えれば増えるほど、舞台『モノノ怪』と思わせるハードルは高くなるわけですから。1回の登場シーンで見せる圧というか、残像をどれだけ残せるかが今回の課題。僕が板の上にいなくても舞台『モノノ怪』だと思わせ続けられる圧倒的なインパクトをしていかないとなと考えています。

ーー第一声を聞いてみると、いつもの新木さんっぽくない、「薬売りだ!」という感じがしました。

新木:僕がアニメを原作とした舞台をやるときに大事にしているのが、声優の方が当てた台詞回しや声色に対して、なぜそうしたアプローチをしようと思ったのか、その取り組みにある根本的な部分を汲み取った上で、それを舞台版にシフトすることなんですね。つまり、やるべきことは、声優さんの声をなぞることではなく、本質を探ること。そこは第一弾でもすごく考えました。今回もあくまで声を出したときの思いであったり、アプローチを音を汲み取った上で今回の舞台の台本を読んで、引用できるような着地点、「座敷童子」での舞台版の声が出来上がるのかなと考えています。

ーー脚本を務めるのは、アニメの脚本も担っていた高橋郁子さんですが、舞台化にあたり、「アニメにはなかったシーンを多数盛り込みました」と高橋さんはコメントされていましたが、脚本に対する新木さんの感想をお聞かせください。

新木:すごく親切になったなと思います。前編、後編の2話、本編の尺はおよそ50分くらいのアニメ。舞台はもうちょっと長くできるので、より丁寧に物語の説明がなされているような印象です。もちろんアニメの「モノノ怪」の特性として「多くを語らない」というものがありますが、もちろん多くを語らない分、視聴者が作品を愛して自由に推測することで、より作品に深みが生まれるのがアニメ『モノノ怪』の特性でもあります。親切になればなるほど、わかりやすくなるのと引き換えに、考察の範囲が狭まる可能性もある。しかし、高橋先生が舞台版の脚本も書かれるからこそ、アニメ『モノノ怪』をお好きな方々にとっては、自分が観たときに感じたことの答え合わせとしてはすごくいい内容なんじゃないかと思いますし、初見の方にとってはわかりやすく舞台『モノノ怪』の世界を楽しめるものになっていると思います。そこはすごく大きなメリットですね

ーーアニメで描かれていた怪奇現象の数々、あれを舞台でどう表現するのかというところも気になりますが、舞台ならではの表現の魅力をおねがいします

新木:舞台でもマッピングなど映像技術を盛り込んだ幻想的な表現は取り入れられていますが、とはいえ舞台は基本的にすごくアナログな表現ですよね。だからこそ、お客様は想像を膨らませることができますし、自由にイメージできる。フィクションの高い作品と舞台って相性がいいんです。アニメで見たような視覚的情報をすべて再現しようとすると、最新のデジタル技術が必要になるけど、それがなくても実はちゃんと表現できるのが舞台の強みです。目の前に何もなくても、お客さんにはちゃんと伝わるように、僕たち役者も板の上で存在したいですね。

ーー衣装やメイクについてはいかがでしょうか?

新木:こだわりはすごいです、僕らが気付けない高いレベル。第一弾でも薬売りの衣装の生地や柄、色をスタッフのみなさんが忠実に再現してくださり、今回も同じチームのみなさんなので、さらにブラッシュアップしたものをお届けできると思います。メイクも、やはり生身の人間の顔というのは絵と違って立体的、左右も非対称ですし、アニメのメイクをそのまま再現しようとしてもズレが生じる。その違和感をどう着地させるかは、第一弾で回数を重ねた分、さらに細かく改善できると思いますので、お楽しみに。

ーー新木さんの「摩訶不思議」な体験ってありますか?

新木:爪が薄くなった…。

ーーそれは?

新木:薬売りは爪が長いんですけど、付け爪だと本番中に取れる可能性があるので取れないように強力なジェルネイルで長さを足しているんですよ。それを一度取って削って付け直して、と繰り返したら爪がどんどん薄くなっちゃった(笑)

ーーそれは「摩訶不思議」な体験ではないですね(笑)。

新木:僕、霊体験はないのですが、年明け早々に手相を見てもらったら「強い霊感があります」って言ってもらえました(笑)。ただ、僕が自分の年齢をお伝えせずに手相を見てもらったので、結構いろいろ違っていたんです。「この年の頃に結婚できるよ」と言われた年齢ももう全部通過していました。だから、霊感があるというのも、もしかしたら違っているかもしれませんね(笑)。

概要
舞台「モノノ怪~座敷童子~」
2024年3月21日(木)~24日(日)
東京都 IMM THEATER

2024年3月29日(金)~31日(日)
大阪府 COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール

2024年4月4日(木)~7日(日)
東京都 IMM THEATER

原作:モノノ怪「座敷童子」
脚本:高橋郁子
演出・映像:ヨリコジュン

キャスト
薬売り:新木宏典
志乃:岡田夢以
徳次:西銘俊、白又敦(Wキャスト)
少年徳次:大平峻也
久代:新原ミナミ
フク:加藤里保菜
ボボ:中村哲人
ステ:田上真里奈
トメ吉:西洋亮
イチ / 直助:高山孟久
若き久代:井筒しま
ヤス:波多野比奈
フジ:藤原ひとみ
モト:長島静莉奈

公式サイト:https://officeendless.com/sp/mononoke_stage/

(c)舞台『モノノ怪~座敷童子~』製作委員会

撮影(TOP画像):編集部

撮影:渡邉和弘

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