ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は20日、宇宙空間への核兵器の配備に同国は「断固として反対」していると述べた。ロシアをめぐっては、アメリカ政府高官が先週、新型対衛星兵器を開発していると指摘していた。
プーチン大統領は、テレビ放映されたセルゲイ・ショイグ国防相との会議の中で、宇宙空間への核兵器の配備を否定する発言をした。ショイグ氏も、ロシアにはそのような計画はないと述べた。
米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官は15日、ロシアが「厄介な」新型対衛星兵器を開発中だと述べた。ただ、配備に至るのはまだ先だとした。
この兵器は核弾頭を搭載し、宇宙を拠点に運用されるものだと、米メディアは報じた。
カービー氏は、政権はこの開発を「非常に深刻に」受け止めており、ジョー・バイデン大統領がこの脅威をめぐり、「ロシアとの直接的な外交関与」をすでに命じているとしていた。
核兵器の宇宙配備に「断固反対」
プーチン氏は、宇宙兵器に関する国際協定を順守するよう求めた。そして、ロシアはその強化に共同で取り組むことを何度も申し出てきたとした。
「我々の立場は明白かつ明確だ。宇宙空間への核兵器配備には常に、断固として反対してきたし、いまも反対だ」
ショイグ国防相は、「第一に、我々はこのようなもの(宇宙へ配備する核兵器)を持っていない。第二に、向こうは私たちがそれを持っていないことを知っている。それにもかかわらず、まだ大騒ぎしている」と述べた。
ロシア当局はアメリカの発表について、米議員を怖がらせてウクライナへの追加援助を承認させるための策略だとしている。ショイグ氏もこの日、この主張を繰り返した。
米下院ではウクライナへの600億ドルの支援を含む予算案が、共和党議員の反発を受けて数カ月にわたり棚上げされている。
カービー氏はロシア政府の主張を強くはねつけた。
議会下院では14日、情報委員会のマイク・ターナー委員長が、深刻な国家安全保障上の脅威について謎めいた警告を発し、さまざまなうわさを呼んだ。
この翌日、カービー氏は米国民にとって直ちに脅威となるものではないと、記者団に説明。
「地球上で人間を攻撃したり、物理的な破壊を引き起こしたりする兵器の話をしているわけではない」と述べた。
宇宙兵器というと、SF小説や、「スーパーマンII」や「007/ゴールデンアイ」のような映画の世界のことのようにも聞こえるが、軍事専門家は以前から、テクノロジーへの依存が高まる世界では、宇宙が次の戦争フロンティアになる可能性が高いと警告してきた。
また、米政府関係者や航空宇宙の専門家らは何年にもわたり、ロシアと中国がアメリカに追いつこうと、宇宙での軍事力を着実に開発していると警告してきた。
宇宙兵器にルールはあるのか?
アメリカ、ロシア、中国はすでに、世界中の人工衛星を攻撃する能力をもっている。しかし、理論上は、核兵器で攻撃することはできない。
これら3カ国はすべて、1967年発効の宇宙条約に加盟している。この条約は、加盟国が「核兵器やその他のいかなる種類の大量破壊兵器を搭載した物体」を、地球を回る軌道に乗せることを禁じている。
元米国防次官補代理のミック・マルロイ氏は、現在の地政学的状況では、この条約は安全を保証するものではないと話した。
「ロシアは署名した条約を完全に無視し、あらゆる国際的な法律や規範に反して、ウクライナで軍事力を行使する意思を示している」、「ロシアは約束を守らず、条約の義務を果たしもしない」。
(英語記事 Putin denies plans to deploy nuclear weapons in space)