栄養の偏りが心配、乳幼児や高齢者への配慮はどうすれば…? 災害時の食料 自宅で備蓄する際のポイントを専門家に聞いた

「栄養を意識し食べ慣れている物をストックして災害に備えてほしい」と話す改元香准教授=鹿児島市の鹿児島女子短大

 災害時の避難生活では栄養の偏りによる健康への影響が懸念され、特に乳幼児や高齢者、アレルギー疾患の人などに配慮が必要となる。能登半島地震では道路の寸断が多く、すぐに支援食料が届かない地域があった。災害時の支えとなる、自宅での食料備蓄の注意点について、県栄養士会災害支援チームの一員で災害時の食に詳しい鹿児島女子短大(鹿児島市)の改元香准教授(40)の助言を基にまとめた。

 国は、家庭で3日~1週間分の備蓄を推奨する。離島や中山間地が多い鹿児島県内は、災害時に交通状況回復に時間がかかることも考えられる。改元准教授は「地域の状況によっては1週間分以上の備蓄が望ましい」と指摘する。

 改元准教授によると、災害時の避難所では、主食の米やパンなど穀類が過剰となり、野菜類や肉・魚、乳製品などが不足することが報告されている。備蓄は栄養バランスを意識した食品選びが大切だ。

 日ごろ食材や水を多めに買い置きして消費分を買い足す「ローリングストック」の考え方でそろえるのが基本。「食べ慣れて賞味期限が長い物」を活用しよう。パックご飯やもち、魚や肉の缶詰、さけフレークやピクルスなどの瓶詰め、高野豆腐や切り干し大根といった干物、レトルトやフリーズドライのみそ汁や野菜スープなどは、調理の手間が少なく使いやすい。

 離乳食やアレルギー対応食、かむ機能が衰えた人向けの食品などは、支援物資として届くまで時間がかかる可能性がある。これらの食品は、農林水産省の要配慮者向けストックガイドでも少なくとも2週間の備えを勧めている。

 備蓄品の味や食べ方を試しておくことも重要だ。調乳が不要な液体ミルクも乳児が飲むかどうか、与えてみるといざというとき戸惑わない。「ストックが非常時に本当に役立つか、平時に確認しておく必要がある。好みの物があると災害時も食を楽しめる」

 熱源となるカセットコンロとボンベは必須。ラップや使い捨てスプーン、除菌シートなどがあると重宝する。

 備蓄品と耐熱性のポリ袋を使って鍋で加熱する袋調理も試すと良い。洗い物を出さずに、衛生的に温かい料理を食べられる。炊飯のほか肉や魚と調味料を合わせた煮物といったレシピが、インターネット上に豊富にある。

 改元准教授は家庭のほか、町内会など地域団体による調理体験会を勧める。「災害時を想定して1日を過ごしてみると、必要なものを把握することができる。イベントを行えば地域のつながりを強化でき、自助・共助の力の向上に役立つ」と話した。

【まとめ】災害時に備える食品ストックの例

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