「息子は後遺症を負って一生すごさねばならない」全国で相次いだ“ルフィ事件”…広島の事件の被害者家族がコメント「懲役が何年であっても短い」

全国で相次いだ広域強盗事件…。これまでに広島で起きた事件に実行役で関与した男ら4人に、それぞれ実刑判決が言い渡されました。判決を受け被害者家族が21日、代理人弁護士を通じてコメントを発表しました。

事件は22年12月21日午後7時半ごろ、広島市西区にある時計等買取専門店の店舗兼住宅に押し入り、住人男性を殴るなど親子3人にけがをさせ、現金や腕時計などあわせて約2700万円相当を奪ったとされています。

広島の事件に関与したとされる8人が逮捕・起訴され、このうち実行役など4人に1審判決が言い渡されています。

被害者家族は、実行役だった宇佐美巴悠被告、栗原翔被告、西本佑聖被告の3人に下された判決の受け止めについて、こう綴りました。

「(宇佐美被告や栗原被告に対し)裁判官や裁判員の方々には、私たち家族のやるせない気持ちをくみ取っていくれた判決と思いますし、強盗傷人の罪としては、14年の懲役は相応の判決と思います。
西本被告に対し)裁判官や裁判員の方々には、私たちの家族のやるせない気持ちをくみ取ってくれた判決と思いますし、現場のリーダーで、強盗傷人の罪としては、 20年の懲役は相応の判決と思います。
一方、加害者は出所後もやり直しができる環境であるのに対し、息子は14年経っても元通りの体には戻りません。私たち夫婦は高齢のため、私たち自身が生きているのか、息子の世話ができているのかもわかりません。息子は後遺症を負って一生すごさねばならないことを考えると、懲役が何年であっても短いと思います」

これまでの公判で、実行役の被告らは、被害者へ謝罪の言葉を述べています。そのことについて問われると─。
「謝罪文が送られてきたとしても、本当に心からの反省があるのかは、本人にしかわかりません。これからの行動で本当の意味での反省と更生を望みます」

広島の事件には、8人が関与したとして逮捕・起訴されています。まだ裁判が始まっていないほかの実行役、指示役への思いについては─
「モンキーレンチで殴打した(実行役の)永田陸人被告が一番許せません。厳罰に処してもらいたいです。 こんな犯罪をするようにネット上で指示して、被害者に一生消えない傷害を負わせた指示役も、許せません」

日本は加害者に甘く、被害者には冷たい社会と実感…

この事件では、モンキーレンチで頭を殴られた息子が、意識不明の重体となりました。体に麻痺が残り、高次脳機能障害などで現在も入院中で、常に介護が必要な状態だといいます。

「息子の性格は、まじめで努力家です。商品の相場が日々変わるので、情報収集は欠かさずに勉強していました。接客の際は、お客様に誠実に対応し穏やかに接していました。

プライペートでは、ジムに週2回通い健康志向でした。また、多くの友人がおり、一緒に食事に行ったり、カープの試合を観戦したりすることが多々ありました。趣味としてテニス、山登り、釣りなども楽しみ、充実した日々を送っていました。

息子は、当初、意識不明で命が助からないかもしれない危険な状態が続きました。病院の医師、看護師、心理士、リハビリの方々のおかげで一命は取り留め、現在は会話が少しできるまで回復しました。これまで治療に関わってくださった病院関係者の皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました」

一連の広域強盗事件では、借金返済などを理由に安易に“闇バイト”を手を出す若者や、この闇バイトを使って犯罪を繰り返すグループの存在が明らかになりました。被害者家族のコメントでは、「被害者に冷たい社会。被害者が安心して生活が送れる優しい社会になってほしい」と訴えています。

「日本は、加害者には甘く、被害者には冷たいとよく聞きますが、今回の事件で本当にその通りだと実感しました。加害者は、無条件で弁護士がつきます。加害者は、お金がないから強盗するのであって、そのような人に対して損害賠償を求めても支払われる確率は低いので、泣き寝入りするしかないのが現状です。

病院を退院した後の療養生活の場所については、施設も視野に検討しましたが、障害者施設は数が少ないうえ、若年という理由でさらに選択肢が狭くなり自宅を選択せざるを得ませんでした。

退院後、自宅で生活するための支援を受けるのも大変です。要介護認定の申請の対象は65歳以上であること、40~64歳の人は定められた特定疾病があることと決められています。よって、息子のような犯罪被害者は重度の後遺症が残っても、介護保険の対象にはなりません。

障害福祉サービスを受けるための申請は、複雑で家族は何度も役所に足を運ばねばなりませんでした。また生活するための必要な福祉用具もレンタルができないため、実費で購入するしかありません。補助金を受けるのも複雑な書類申請や手続きが必要で家族の負担は大きいと感じています。被害者の救援措置として社会福祉制度が改正され、申請書類や手続きの簡素化も含め被害者が安心して生活が送れる優しい社会になってほしいと願います」

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