子どもを叱ってばかりの昭和な夫。でも、無関心夫よりはまし?? 夫婦の子育て観の違いをどう考える?

相談者まどかさんの夫は子どもを厳しく叱るタイプ。特に5歳の長男には「男のくせに泣くな、甘えるな、しっかりしろ」と口癖のように言うので、長男が自信をなくさないかと、まどかさんはハラハラしています。心理カウンセラーのよしおかゆうみさんからは、心に刺さる新たなアドバイスが!

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「男は男らしくあるべき」と考える夫は、かわいくて癒し系の長男にやきもきするようです

よしおか:「男らしくない」ってパパが言うのは、息子さんのどんなことろですか?

まどか:息子はみんなから「かわいい」って言われるんです。しぐさも愛らしくて、話し方もすごく優しいから「もうかわいくて、癒しなんです」っていろんな先生に言われます。

よしおか:そっかそっか(笑)。

まどか:でも夫は、かっこいいとか男らしいが褒め言葉だと思ってて。園にお迎え行ったときに、先生が「クラスの雰囲気が悪くなったとき、息子さんのかわいいひと言でなごみました~」とほめてくれても、「またかわいいって言われた。あいつ大丈夫か」って。

よしおか:なるほどね。

まどか:「愛され力があるってすごいよね!」と言っても夫には響かない。「ぽ~っとしてて、俺は小さいときあんなんじゃなかった」っていうのが口癖なんですよ。

よしおか:自分の遺伝子を持った同性の子だから、期待もあるのかも。

まどか:確かに~!顔がそっくりだから、余計そうなのかもしれません。

よしおか:夫には「でも裏返せば、長男にはこういう良さがあるよね」って、角度を変えて繰り返し伝えてあげてください。「ムードメーカーですごいよね」とか「これからの時代って、いろんな人にかわいがられて、引き立てられたほうがいいじゃない?だからうちの子みたいなタイプは得するね」とか、いろんな言い方で。

まどか:はい。

よしおか:パパが「だから心配なんだ」と思い込んでいるところを、「パパはそういうふうに見えるのね」と受け止めつつ、「でも私から見ると、人を決して傷つけないやさしさでもあるんだよね。そこは逆に伸ばしてあげたいところなんだけどなあ」って。

まどか:先生、すごく上手。私にできるかな(笑)。

よしおか:子どもを褒めることで「そういうところばかり見なくていいんだよ」ってポジティブに伝えると、「そういう面もあるのか、大丈夫かな」ってだんだん変わってきますから。

食事のマナーカードを用意して、パパのお叱りを回避しよう

まどか:夫が子どもと接するのは食事どきが多いせいか、注意したくなるところばかり目につくようです。

よしおか:なるほどね。

まどか:食事の仕方は私も気になるから注意しますが、あんまり言って追い詰めても・・・。

よしおか:確かにね。そうしたら、パパに注意されることを逆に認めてもらえるような方向にもっていくといいかも。「おはしはこう持ちます」とか「ご飯茶碗はこう持って食べます」とか、食事のマナーのイラストカードを作って、できたらシールを貼るとか。ゲーム感覚で取り組めるようにすると、子どもは楽しいから頑張るじゃない?

まどか:すごい!そうすれば食事の時間を楽しく過ごせますね。

よしおか:食事でも寝る前の準備でも何でもいいので、子どもと一緒に一つ決めて。自分で決めたことは、子どもは頑張りますから。

まどか:やってみます!

私が子どもを怒ったときのフォローは誰もしてくれない。どうしたらいいですか?

まどか:私が子どもを怒ることもあるじゃないですか。そのフォローを誰もしてくれないのも困ってるんです。夫が重ねて怒っちゃうから「パパ、横取りしたね」っていつも言ってます。

よしおか:そっか(笑)。

まどか:私はダラダラ怒らないように気をつけていて、「あと1分怒ったら終わります」と宣言して「終わり!」と言ってやめますが、私が怒ったときのフォローって、どうしたらいいんでしょう?

よしおか:お子さんが「ママ、ママ」と寄ってくるなら、お母さんに愛されてるとわかっているということだから、大丈夫。普段は子どもを認めていて、ときどき生活面で正すことがあるくらいなら問題ないでしょう。ママは怒るのをすぐやめてくれるし(笑)。さっぱりと短時間でやめるっていうのは、すごく偉い!

まどか:本当ですか?

よしおか:子どもを叱るときは「さっぱり叱ってさっぱり忘れる」のが一番。まどかさんはそのやり方ができているので、子どもは引きずらないと思うんですよ。

まどか:よかった~。

よしおか:パパも長引かないように、食事カードを作ったりして怒る場面をなるべく減らしていって。でも性格もあるからね、さっぱり怒れないんだと思います(笑)。そのときはフォローしてあげてくださいね。

パパが口うるさいのは、見方を変えれば「子育てに積極的に関わっている」ということ

まどか:うちは一番上のお姉ちゃんがしっかり者なんです。だから長男も「お姉ちゃん、やって」と甘え上手で。お姉ちゃんも先回りして手を貸すから、「違う違う、自分でできることを自分でさせるのが教育」って話してます。

よしおか:私も弟がいるからわかる(笑)。

まどか:弟は「もうちょっとしたらお姉ちゃんが助けに来てくれる」って、ちゃんとわかってるんですよね。しっかりしてるな~と思う。

よしおか:だから生きる術は身についているんですよね。男兄弟だとママを取り合ったり切磋琢磨して育つけど、女きょうだいの中の男1人って、おっとり育つことが多いんです。息子さんも、お姉さんと妹に囲まれてすごくやさしい男性になると思います。

まどか:はい、そう育ってます(笑)。

よしおか:女性にかわいがられたり、女性の中で生きるのが上手になるから、それは長所なので、いいんじゃないですかね。このままでね。

まどか:私もそう思います。

よしおか:パパについてもそうで、父親としての責任感が強いんだと思います。ちょっと暑苦しいかもしれないけど(笑)。

まどか:まさに。すごくぴったりな表現です(笑)。

よしおか:熱意を持って子どもに向き合ってるのは素晴らしいこと。「あなたみたいに責任感の強いお父さんって、そうそういないよ。積極的に子育てしてくれる人でよかった」と伝えてあげてください。

まどか:細かすぎて困ることもあるけど、言ってみます。

よしおか:細かい性格も直すところではないと思うんです。それこそ逆に見ると、細やかさや熱意って仕事や社会では役立つことが多いでしょう。家庭の中ではちょっと過剰になる、という感じだ思うので。

まどか:そうですね。

よしおか:家族も出会いだからね。パパと息子さんがいい出会いになるように、支えていってあげてください。まどかさんが家族のバランスをとても上手に取ってるから、何の心配もないですね。

まどか:いやいや。長女が小さいころからずっと悶々と悩んでいたから、先生に「大丈夫ですよ」って言っていただいて、すごく励まされました!私の父がすごく優しい人でずっと好きなので、余計に心配だったんです。

よしおか:そうなのね!

まどか:でも、夫のことを責任感がある、積極的に子育てに関わってると褒めてもらえて、「ああ、いい面もあったんだ」と気づいて安心しました。ありがとうございました。

よしおかさんと話したことで、夫の欠点だと思っていた子どもへの厳しさを、ポジティブにとらえ直すことができたまどかさん。癒し系の長男ならではの「生きる力」も再確認できました。その後1カ月の間に、よしおかさんのアドバイスをいろいろ試したそう。次回、その様子をお届けします。

イラスト/髙栁浩太郎 取材・文/神坐陽子 企画/サンキュ!コメつぶ編集部

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