【タイ】タイ政府、大型商用EVの普及策を発表[車両]

大型商用EV向けの支援策について発表するナリット長官=21日、タイ・バンコク(NNA撮影)

タイ政府は21日、バスやトラックなどの商用電気自動車(EV)の普及に向けた対策を発表した。商用EVを購入したバス会社や物流会社に対して法人税の減免を支援する。EV向けバッテリーセル工場の誘致に向けたインセンティブの導入も検討する。タイでのEVのエコシステム(生態系)の構築を目指す。

商用EVの普及に向けた支援策は21日、セーター首相をトップとする最初の国家EV政策委員会で決定した。22年に施行されたEV振興策「EV3.0」と24年から始まった後継策「EV3.5」を補完する内容。これまでは乗用車とピックアップトラックが補助金の支給対象となっており、しかも、自動車メーカーと消費者が恩恵を受ける内容だった。

今回の発表によって、バス会社や物流会社がタイ国内で生産された商用EVを購入した場合、上限なしに価格の2倍で会計処理できるようになる。当該企業にとって法人税の減免につながるメリットがある。タイでは地場のエナジー・アブソルート(EA)など数社が電動バスの製造を手がけている。輸入商用EVを購入した場合は価格の1.5倍とする。

支援策の有効期間は2025年12月まで。タイ政府は、温暖化ガスの排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラル(炭素中立)の実現に向けて弾みをつけたい考えだ。タイ投資委員会(BOI)のナリット長官は記者会見で「少なくとも1万台の商用車が電動車に切り替わるだろう」と期待を示した。

■電動バイクの対象を拡大

タイ政府はまた、乗用車や電動バイクへの補助金の支給対象も広げる。10人乗りの車両も乗用車として認めるほか、1回のフル充電で75キロ走行できる電動バイクも対象に含めた。電動バイクは、従来は値段が15万バーツ(約63万円)以下で、容量が3キロワット超の場合に限っていた。

■セルメーカー誘致へ

EV向けバッテリーセルや電力貯蔵システム(ESS)の工場の誘致に向けたインセンティブについて、タイ政府はメーカーへの現金での支援を検討しているもよう。

詳細は今後詰めるが、現金支援を受けるには(1)タイでの明確な生産計画(2)セルの重量エネルギー密度が少なくとも150ワット時毎キログラム(Wh/kg)(3)気温20~25度で放電深度80%以上で充放電を1,000回以上繰り返せるだけの寿命の長さ(バッテリー容量の60~70%程度の容量で計算)——などが条件になるもようだ。27年末までに投資計画を提出した企業が対象となる。

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