スター交通(群馬・大泉町)が被災地支援 民間力で傷病者搬送

大阪の民間救急事業者と合流して打ち合わせに臨む関係者=1月9日、石川県かほく市の高松サービスエリア

 能登半島地震を受け、民間救急サービス事業を手がけるスター交通(群馬・大泉町)は発災直後から支援に乗り出し、傷病者らの搬送需要が集中した1カ月間、被災地で傷病者らの搬送を請け負った。同社の碓氷浩敬社長は「スタッフが一生懸命頑張ってくれた。群馬でも災害に備え、平時から民間と行政の連携を強めていく必要を感じた」と振り返る。同社と災害協定を結ぶ大泉町も、民間の力を生かした被災地支援に動いている。

 同社は主に「奥能登」と呼ばれる半島先端に近い地域で活動。自衛隊が救助した患者の搬送や広域避難者の運搬、福祉施設に取り残された利用者を運ぶ業務などを担った。救急車2台、マイクロバス2台、大型バス1台の計5台を派遣し、日ごとのニーズに合わせて運用。行政だけでは対応しきれない部分を民間の力で補った。

 地震発生翌日の1月2日に民間救急サービス事業者らでつくる全民救患者搬送協会から呼びかけがあり、4日に救急車2台、スタッフ2人で被災地に入った。現地は予想以上に逼迫(ひっぱく)した状況で、当初は1台を予備車とする想定だったが、急きょ1人1台態勢で運用せざるを得なかったという。以降、応援の人員を送り込み、4~6人が現地で活動する状況が続いた。

 被災地で支援に当たった城田宏さん(53)と佐瀬龍哉さん(22)は「道路や家屋の倒壊を目の当たりにして地震の大きさを痛感した。道が今にも崩れそうな雰囲気の中で搬送をしていた」と話す。城田さんは過去に消防職員として東日本大震災の支援に参加した経験があり、「民間は刻一刻と変わる状況に対応して多様な業務がある。助けを待つ人のために一刻でも早く駆け付けないといけない使命感があった」とやりがいを語った。

 同社と災害協定を結ぶ大泉町は、こうした民間の力を借りて効果的な被災地支援を模索する。アートトラックの愛好団体「全国哥麿(うたまろ)会」の協力で、近隣地域の団体や町内の個人から募った水、食料などの支援物資を被災地に届けた。被災地のふるさと納税の事務処理を代行する「代理寄付」も県内でいち早く取り組み、仲介サイト「ふるさとチョイス」「さとふる」「ふるなび」「ANAのふるさと納税」の4社と連携する。

 大泉町が石川県能登町に派遣したトイレトレーラーは、2022年のクラウドファンディングによる民間の資金援助を得て購入した。現地までトレーラーを運んだ町安全安心課の高溝透係長は「道路状況が悪く、振動で電源供給用のプラグが曲がるほどだったが、現地に着くと『手が洗える』ととても喜ばれた」と振り返った。

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