【会話力の磨き方】ラジオDJ・秀島史香さん「会話を楽しくする5つのアイディア」とは?[前編]

おしゃべりをしていると、とても楽しい、豊富な話題でいつもみんなを盛り上げる、そんな人になるためには、どうすればいい? ラジオのDJとして20年以上、個性豊かなゲストの方たちを迎え、その経験から会話のコツを体得してきた秀島史香さんに、会話をはずませるコツを伺いました。

お話を伺ったのは
ラジオDJ
秀島史香さん

ひでしま・ふみか●1975年、神奈川県生まれ。ラジオDJ、ナレーター。
慶應義塾大学法学部政治学科卒業。大学在学中にラジオDJデビュー。
現在、Fm yokohama「SHONAN by the Sea」などに出演中。
ハスキーな声、温かい人柄とフリートークが人気。映画、テレビ、CM、アニメなどのナレーション、美術館音声ガイドなど幅広く活躍。

秀島さんが経験から得た、相手の心をつかむ具体的な方法が満載。『いい空気を一瞬でつくる 誰とでも会話がはずむ42の法則』(朝日新聞出版)。

基本は「笑顔で挨拶」。慣れてしまえば簡単です

ラジオの生放送で、番組のパートナーやゲストと楽しい会話をよどみなく進め、リスナーの心をつかんで離さないDJ(ディスクジョッキー)という存在。大学在学中にDJの仕事を始めて20年以上という秀島史香さんも、明るく温かな人柄を感じさせる声、楽しいフリートークが多くの世代に支持されている。

会話のプロである秀島さんだが、「子どもの頃は恥ずかしがり屋で人見知りだった」と言う。

「自分から人に話しかけに行くなんてとんでもない。まったくできませんでした。あがり性で、学校では授業中、先生に当てられると膝はガクガク。発表をしなければいけない日はおなかが痛くなって保健室に行くようなタイプで……。でも、それではダメ、自分で何とかしなくてはと思って、まずは『型』から変えてみることにしたんです」

秀島さんが言う「型」とは挨拶のこと。会う人に自分から「おはようございます!」「こんにちは!」と笑顔で声をかけるようにしたという。

「結局、慣れです。筋肉と同じなんじゃないかなあって(笑)。1週間、1カ月と続けて数をこなせば慣れてできるようになるんですね。たとえばスーパーでも、レジで店員さんに『いらっしゃいませ』と声をかけられたら黙って品物を出すのではなく、ひと言『お願いします』と言ってみる。すると『今日はこれも入ってますよ』『今日は暑いですね』とか、またひと言が返ってくることもあります。こんなふうに、ちょっとしたことでいいので、練習だと思って意識してみるといいかもしれません」

初対面の人ばかりの場で自分から声をかけることをためらったり、なかなか会話の輪の中に入っていけなかったりするのが長年の悩みという人もいるが……。

「自分から声をかけられないのは、冷たくされたらどうしようというネガティブな想像力なのか、謎の自意識なのか(笑)。悩む時間がもったいないですよ。相手がどんな人かわからなくても、自分から挨拶をすることで、『私は友好的な人間ですよ、あなたに心を開く準備ができていますよ』という好意を示すことができるんですから」

逆に自分からは何もせずに、相手に「いい人」と判断してもらうのは難しいですよね、と秀島さん。

「『今ここで声をかけられたら、自分なら嬉しいな』と思える状況なら、待つのではなく、動いていきましょう。数をこなして経験を重ねれば、難しいことじゃなかったんだなと気づくと思いますよ」

とはいっても秀島さん自身、自分から積極的に挨拶をすることで、すべてが思いどおりにうまくいったわけではない。

「百発百中ではないです。なかにはリアクションのない人も。でも、へこまない! 『そんな人もいるわ』『それも世の中というもの』と思えるようになりました。一度嫌な思いをしたからもう嫌という人もいますが、その恐怖心は成功体験を積み重ねれば克服できます。続けてみることが大事。声をかけて失敗したからといって、失うものは何もないのですから」

会話を交わす直前に笑顔で好印象を与える

人見知りは克服した秀島さんだが、DJになってからも緊張するのは変わらなかった。噛んだり、何を言うか忘れたり、見当違いの質問をしたり……たくさんの失敗を重ねたそう。「この仕事に向いていないのでは」と悩んだこともあったという。落ち込む日々の中、持ち前の(?)ネガティブ&記録気質でもって、失敗を一つずつ、メモしていった。

「その『失敗のダメ出しリスト』が長くなっていくうちに、ひょっとしたらこう考えればいいのでは、という小さな気づきがいくつも浮かび上がってきました。この気づきを拾い集め束ねてみたものを、ひと言であらわすとしたら、相手にとっていかに『いい空気をつくるか』だったんです」

いい空気をつくるためには、それなりの準備が必要だという。

「会話で大切なのは、まず笑顔だとよくいわれます。ラジオ局のブースからは、ガラス越しにゲストの方が入ってくるのが見えますが、その方がブースに入ってくる前からニコニコと笑顔を見せているときは、これからどんな楽しいトークが始まるのかなと、より期待も高まります。会話の前から笑顔で機嫌よく、というのは大事ですね」

挨拶を交わす前から、楽しい会話のための空気づくりは始まっているのだ。

「ただ、精いっぱいの笑顔をつくっているつもりでも、実際はそうなっていないことも。自分で意識しているほど顔の筋肉は動いていないものなんですね。せっかく笑顔をつくったつもりなのに中途半端では損。このくらいかな、と思う2倍ぐらいのにこやかさでいいと思います」

自分の笑顔を鏡でチェックしてみるのもおすすめ。

「鏡を見て口角を上げ、筋肉の動きを意識する。笑顔をつくるには、そこの筋肉を動かすようにすればいいんです。笑顔はコントロールできるもの、と思うと気がラクになります」

笑顔もトレーニング次第。日頃から鏡を見て口角を上げる練習をしておくと、優しい表情になれる。そして、会話を楽しむには話題のストックをつくっておくことも大事。

「人に聞いた話でもいいですし、自分で面白いと思ったことや、不思議だなと思ったことは調べておきましょう。暮らしの知恵みたいなワンポイント情報やお得情報などもいいですね。会話上手な人やいつも周りに人が集まってくる人は、そういうネタをたくさんもっています。そして相手の心をつかむには、プラスαを。たとえば、会話のきっかけとしてテッパンのお天気の話題も『今日はいいお天気ですね』だけですまさずに、『洗濯機、2回も回しちゃいました』のひと言を加える。さらに『洗濯といえば最近出たスプレー式の洗剤、便利ですよ』などとつけ加えれば、どんどん会話は広がっていきます」

会話を楽しくする5つのアイディア

①視線と笑顔で 「アイスブレイク」

場の緊張をほぐす会話や話題を「アイスブレイク」といいますが、最も効果的なのは視線と笑顔だと思います。相手が視線を向けたときに、目と目を合わせて、柔らかい笑顔で受け止めます。これは「よろしく」の意思表示です。

目線の高さをそろえるのがポイント。相手との距離が近くなり、安心感を与えられます。自分が座っているのであれば立ち上がって迎えます。

②相手の「いいね!」を探す

小学校6年生のときアメリカの学校に転校して知ったのが、「アイ・ライク・ユア・〇〇」という言い方。話のきっかけとしてとても便利な魔法の言葉です。この場合の「ライク」は日本語で「いいね!」というような意味。

「素敵な髪形ですね」「そのシャツいいですね」など、相手の「いいね!」を見つけて声に出すことは、「あなたに関心がありますよ」という意思表示になります。

③相手の話をメモする

会話の中で相手がすすめてくれた本や映画、お店などは、その場で「メモしていい?」と聞いて、スマホのメモ機能に入力、またはペーパーナプキンなどに書きます。

あとで思い出そうとしても忘れていそうだからという理由もありますが、メモすることで相手も「自分のおすすめに興味があるんだな」と確認できて悪い気はしないはず。再び会うときの話題にもなります。

④いろいろな人に話しかける

想像力を働かせて言葉を選び、心地よい会話ができるようになるには場数を踏むのが一番。ゴミ出しで会ったご近所さん、病院の待合室で一緒になった人、タクシーの運転手さんなど、いろいろな人とひと言でも言葉を交わしてみましょう。

「この人の言い方、素敵」とか、「その言い方は無神経かも」とか、よい例・悪い例にふれることができます。

⑤話題のストックをつくる

日頃から、面白いと思ったことや多くの人に興味をもたれそうな事柄のストックを。私はメモしてファイリングしています。そして会話中に、相手が好みそうなトピックを選んで話します。

お得情報や暮らしの知恵、誰もが共感できる日常の「トホホ」な失敗談も。「恵方巻の季節になりましたね」など、コンビニの季節商品の変化はネタの宝庫です。

※この記事は「ゆうゆう」2022年2月号増刊(主婦の友社)の記事を、WEB用に再編集したものです。


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