『となりのナースエイド』小手伸也演じる猿田が強面キャラへと変貌 “裏”を感じさせる回に

ドラマ『となりのナースエイド』(日本テレビ系)は、当初から普通の医療ドラマではなく、「コメディとサスペンスが共存する世界観」であることが監督の内田秀実から明言されていた。第7話はそのサスペンス要素を色濃くさせながら、本作の重要なキーワードとも言える「裏」を感じさせる回となった。

振り返れば、『となりのナースエイド』では各キャラクターの「裏」の顔が少しづつ明かされてきた。「1話ラストに、想定外の裏がある――」のキャッチから、澪(川栄李奈)が大河(高杉真宙)に「私は、人殺しです」と告白したのを皮切りに、最近ではまるでブラックジャックのような闇手術で多額の医療費を受け取っていた大河、そして前回は晴美(水野美紀)が何者かに澪の監視を命令されていたことが明らかになっている。今では、本作のポスタービジュアルですりガラスの後ろにいるのは、外科医時代のメスを持つ澪であることが分かるが、そこには「澪や大河、そしてその他の登場人物たちが抱えた秘密を暗示する“誰か”が“何か”を持って写っている」という意味合いが込められていた。

第7話で発覚するのは、澪を監視していたのは晴美だけでなく、同じナースエイドの相馬(矢本悠馬)、夏芽(吉住)も協力していたという衝撃の事実。そして、それを命令していたのが、猿田(小手伸也)だった。晴美は息子・照希(兵頭功海)の裏口入学(詐欺)、相馬は借金、夏芽は前職での横領容疑を理由に、猿田から脅されていたのだ。看護師の中山明菜(織田梨沙)とつるんでは澪と大河を目の仇にする皮肉屋として、本作ではコメディの要にいる印象であったが、たちまち強面キャラへと変貌している。

猿田の狙いは、澪の姉・唯(成海璃子)のノートパソコン。夏芽はパソコンを手に入れるために澪の部屋を荒らしていたことを自白しているが、唯を殺したのは誰かという事件の核心にはまだ遠くにいる。刑事の橘(上杉柊平)がラストに告げた「この病院が隠している秘密」――この流れからすると、教授の火神(古田新太)もまた「裏」があることは必然的であり、澪をナースエイドとして星嶺医大に引き止めた理由、彼が研究を進めている「オームス」とも大きく関係してきそうな予感がする。

しかし、最もベールに包まれているのが大河である。過去に言っていた「親はいない」という発言に、橘の「板橋羽ばたき園」というワードは、彼の過去が明らかになる第8話で繋がっていくだろう。

通常よりもサスペンス要素が強い上に、夏芽にスポットが当たる回のため、だいぶゲストとしての印象は薄まってしまっているが、星嶺医大に入院してくる高校生の香澄(上坂樹里)が夏芽を「私の先生」として徐々に信頼していく演技のグラデーション、ラストに見せた満面の笑みと分からないことを隠さない表情の変化が自然体でよかった。相馬が「清純」と伝えたイメージはそのまま上坂樹里本人にも当てはまる。夏芽が香澄に伝えた、期待していい人間もいる、そういう人を見つけると人生が「楽しい」に変わるかもしれないというメッセージは、夏芽がナースエイドとして患者に寄り添ったことで生まれた医療ドラマとしての大事な要素だ。

(文=渡辺彰浩)

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