日販がコンビニ配送終了決定、2025年にトーハンに引き継ぎ コンビニ店長に聞く本への思いと苦悩

出版取次大手の日本出版販売(日販)が、コンビニエンスストアに雑誌や書籍を配送する事業を、2025年2月には終了するという。10月26日、共同通信社が報じた。現在、日販は全国のファミリーマートとローソン計約3万店に配送している。

共同通信社によれば、撤退後は、セブンイレブンに配送しているトーハンが配送事業を引き継ぐ方針とのことだ。しかし、日版のコンビニからの撤退は、これまで堅調と思われていたコンビニですら、紙の雑誌・書籍の売上が落ち込んでいることを如実に表している。

筆者の友人に、秋田県で大手コンビニチェーンを営むオーナーA氏がいる。曰く、コンビニで扱う雑誌や本の売上は年々減少傾向にあり、3年間続いたコロナ騒動で一気に落ちてしまったという。コロナが5類になり、世間の空気感が元に戻っても「本の売上は回復していない」という。

「コロナの巣ごもり期間中には『鬼滅の刃』のヒットがあり、確かにレジの横に積んでいたら瞬く間に売れる現象が起きました。それ以降も『【推しの子】』みたいなメガヒットは出ているけれど、完全にネット書店と電子書籍に客が移っちゃったね。漫画雑誌なんて全然売れないですよ。売れないのに置き場所をとるし、重いから返本も面倒。扱いたくないくらいです」

ほかにA氏が頭を抱えるのは週刊誌やグラビア雑誌だ。「シールを貼っているのに無理やり開けて立ち読みしようとする客が多いから、破れたり汚れたりしやすい。手の脂が表紙について折れ曲がっている雑誌なんて、心理的に買う気が起きないでしょう。それに、本を並べるラックの構造もよくないよね。勢いよく突っ込まれるから、表紙がすぐに破れる。困りますね」

また、コスプレイヤーやアイドルの表紙がウリの漫画雑誌も同様に、ボロボロにされやすいそうだ。以前のコンビニといえば、雑誌コーナーを駐車場に面した場所に置き、敢えて立ち読みさせることで集客効果を狙っていたといわれるがその効果も薄まりつつあるのかもしれない。

「とにかく、漫画雑誌が売れなくなったのは痛いですよ。今の若い人って、そもそも漫画を読んでいるんですかね? あ、電子書籍で読んでいるのか。ファッション雑誌は全然ダメですね。あと、コンビニコミックも、いったいいつまでもつか怪しいくらい、売れ行きが芳しくない。あ、『ゴルゴ13』とか『こち亀』は近所のおじさんや、長距離トラックの運転手さんに売れて堅調です』

かつてコンビニで扱う本で売れ筋だったのは、成人誌であった。しかし、数年前から事実上、大手コンビニでは成人誌の取り扱いを停止している。これは子供や女性客への配慮、そして東京オリンピックや大阪万博を見据えた対応というが、「ネットの無料動画やダウンロードサイトの台頭で、成人誌の売れ行きは悪くなっていたので、なくなるのは時間の問題だった」と、A氏。

なお、コンビニは立地などによって売れ筋の商品に差が出る傾向がある。あくまでも今回の取材は秋田県の一店舗のケースとして見ていただきたいが、とはいえコンビニの本の売れ行きが良好とはいえない実態がよくわかる。昔ながらの書店が相次いで閉店する中、コンビニは比較的新刊が入りやすいなどの強みもあった。そのため、近所の高齢者からの注文もあるという。A氏はこう訴える。

「私も漫画が好きですし、本が好きですよ。でも、やはり店の売上が大事ですから、頭を抱えてしまいます。ただ、個人的にはうちで売られている本を雑に扱う人が一番困ります。本当に迷惑。雑誌をボロボロにしないでほしい。貼られているテープをはがさないでほしい。できれば汚したら買ってほしいですね……」

(文=山内貴範)

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