「昔からの特産品がなくなってしまう」水かけ菜、ひものがピンチ 新たな営業許可まで残り3か月・・・伝統産業を構成に【現場から、】

富士山の湧水で育てる水かけ菜や沼津の特産品ひものなど、静岡県が誇る伝統的な産業がいま、ピンチを迎えています。ある許可を取っていない業者は、あと3か月で営業ができなくなってしまいます。

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静岡県御殿場市で今、旬を迎えているのが水かけ菜です。富士山の湧水で育てる水かけ菜は、御殿場市と小山町の特産品でシャキシャキとした食感とほのかな苦みで漬物は地元で親しまれる郷土料理です。

<鈴木平作さん>
「漬物にするのは、いつもこの部屋でやっています」
Q.この部屋じゃないといけない?
「今まではどこでも良かったんですけど、今年の6月以降は、保健所の営業許可を取らない部屋ではできないことになった」

特定の場所以外では、水かけ菜を漬物にできなくなったその理由は、飲食による健康被害を防ぐための法律「食品衛生法」が2018年に改正され、2024年5月までに基準にあった施設に変更しないと営業できなくなった為です。

今回の改正によって、新たに漬物や水産製品、卵から殻を取り除いた液卵の製造には営業許可が必要になりました。許可を取るには、専用の加工場をつくったり、手洗い場を設置するなど様々な条件があります。

<鈴木平作さん>
「天井がなかった。屋根裏がむき出しになっていた状態だったが、むき出しのところはすべて塗料を塗らなければダメだということになったので、天井を張った」

夫婦で水かけ菜の漬物をつくる鈴木さんは、専用の加工場を約80万円かけて基準に合うよう改修しました。

<鈴木平作さん>
「昔からやっていたものがそういうことでなくなってしまうのはどうかなと思う」

沼津の特産品「ひもの」も食品衛生法の改正で存続の危機にさられている地場産業の1つです。

<東部保健所の職員>
「この部屋の中には、手を洗う場所はあるんですか?」

<ヤマカ水産 松本周執行役員>
「先ほどの簡易クリーンルームのみの水道になっていて、水道はありません。この部屋と、隣の部屋の各所に水道を設ける予定です」

沼津市内の工場を保健所の職員が訪ね、手洗い場や網戸がない今の状態では営業許可が取れないと指導しました。

<ヤマカ水産 松本周執行役員>
「衛生法を守るのは、消費者にとって安心であるという観点から、僕らもそこに則りたいなと思います」

<静岡県東部保健所 中澤美歌乃専門官>
「辞めちゃう人がいるかもしれないという懸念はあったが、今回まわっている限りでは、皆さん前向きに、やっぱりやらなきゃだめだなと思ってくださっていて。私たちもそれはよかったと思っています」

一方、水かけ菜の産地、御殿場市では、行政が地元の特産品を守ろうと動き出しました。

御殿場市は2023年、漬物製造業の営業許可を取得する人に向けて、1事業者あたり最大100万円を補助する制度をつくりました。市内約100の事業者のうち、34の申請があったといいます。

<御殿場市 根上宏樹農政課長>
「水かけ菜は、御殿場に早春を告げる漬物として、食文化として根付いている。次の世代につなげたい」

2024年5月までに取らなければいけない新たな営業許可。地元の業者にとっては厳しい条件ですが、新たな食品の安全と業界自体の近代化には欠かせない条件です。

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