『ドクタースランプ』パク・ヒョンシクがパク・シネに告白 幸せから一転スピード破局へ

パク・ヒョンシク&パク・シネの共演のNetflixドラマ『ドクタースランプ』がヒット中だ。日本のNetflix「今日のTV番組TOP10」入りの常連で、週間グローバルランキング(非英語シリーズ)では初登場9位だったのが、翌週には堂々の1位、直近週では3位と高い人気を維持している。

本作は、高校時代の天才と秀才のライバルが、医師となり共に人生の大スランプに陥ったところで再会し、立ち直っていくヒーリングロマンスだ。パク・ヒョンシク演じるスター美容整形外科医のヨ・ジョンウは、手術中に患者を死なせる医療事故を起こしてどん底に落ちる。そのことがきっかけとなり、ジョンウは、高校の同級生で成績争いをしていたパク・シネ演じるナム・ハヌルと再会する。

ハヌルは、麻酔科医師として活躍していたが、激務や教授のパワハラによりバーンアウト(燃え尽き)症候群としてうつ病になっていた。再会した2人は、互いの傷を労わり、慰め合ううちに恋心を抱き始める。本稿では、第7話と第8話を中心にご紹介する。

ジョンウは、幼い頃に小学校のインゲン豆の観察でクラスで唯一、芽が出なかったことがあった。そのことは、ジョンウにとって、“覚えている限り人生で初めての失敗”だった。クラスメイトから芽が出ないことを同情されるも、ジョンウは平気なふりをして、帰りに泣くような子供だった。ジョンウは、高校の時にハヌルが転校してきたことによって全校1位の成績が下がり、母親に「失敗なんかしないで」と言われてしまう。その時に彼は、幼い頃のインゲン豆の記録を読み、「人生はインゲン豆に似てる。時には思いどおりにならないことがある」と気づく。そして、スター美容整形外科医から転落したジョンウは、「幸せは実感しにくいのに、不幸は痛切に身に染みる」「失敗は、人を孤独にする」と感じる。

医療事故の裁判中、ジョンウは自分のメンツを守るために平気なふりをする。インゲン豆の時にクラスメイトに平気なふりをしたように。母親から「父親の功績に傷をつけるな」と言われ、「家族に気遣ってもらいたかった」「周囲の人間に信じてもらいたかった」と絶望し、“希望の見えない暗闇のような日々”を送るジョンウ。そんな彼をハヌルは信じ、支え、励まし、彼の代わりに「どうやって耐えてきたの? かわいそう」と涙を流す。

幼き頃から、ハヌルもジョンウも本音を隠し、ひたすら頑張ってきたことがわかる。ジョンウは、恐ろしい陰謀によって、あっという間に医療事故を起こした殺人者という疑念を世間に抱かれ、全てを失ってしまった。そんなジョンウの代わりに涙を流すハヌルの存在は、暗闇の中にいたジョンウの希望の灯りだ。ハヌルもまたうつ病で苦しんでおり、大きな光を放つことはできない。ただ、彼女の存在は、自分も弱りながらもジョンウを照らす、か弱くも優しい灯りなのだ。

ジョンウの医療事故の真相が暴かれ、ジョンウの無実が証明される。そんなジョンウの元には、これまで遠ざかっていた人たちから沢山の連絡が入る。しかし、ジョンウは、すぐには立ち直れずにいた。そんなジョンウを励まそうと、ハヌルの家族たちは屋上でサムギョプサルパーティーをして、ジョンウも元気を取り戻す。そして酔っぱらったジョンウは、ハヌルに「好きだ」と何度も繰り返し告白をし、2人は手を握る。

ハヌルは、ジョンウから「好きだ」と告白され、手も握ったが付き合っているのかがわからない。ハヌルは、母コン・ウォルソン(チャン・ヘジン)、叔父テソン(ヒョン・ボンシク)、弟パダ(ユン・サンヒョン)に「友達のこと」と言って、恋の相談をするが、家族たちはハヌルとジョンウのことだとお見通しだ。

ハヌルは、ジョンウと話をしようと、屋根裏部屋を訪れる。そこに姉のために一肌脱ごうとパダがやって来る。慌てて浴室に隠れるハヌルの耳に、「(ハヌルが)何とか付き合いたくて周りを質問攻めに。だから姉さんを安心させて」とパダの声が。そんなパダの言葉を聞いたジョンウの、にやけたまんざらでもない顔がとてもいい。「ははぁ~ん、ハヌルのやつめ、かわいいじゃないか!」と聞こえてくるようだ。そして、ジョンウは「俺は昨日、恋人同士になったと思ってた」とハヌルに聞こえるように大声で答える。

ここまでの一連の流れの中で、韓ドラで定番の「グリーンライト=相手を好き」の演出が巧みに使われている。酔ったジョンウが告白する時の緑色のパーカーに、濡れたハヌルに貸すジョンウの緑色の服、幼い頃のハヌルの洋服も緑色だ。好き=グリーンが、あちこちに小道具として多用されていて、制作陣の遊び心と、画面いっぱいの能弁さにときめく。さすが『恋のゴールドメダル~僕が恋したキム・ボクジュ~』のオ・ヒョンジョン監督、『キム秘書はいったい、なぜ?』『九尾の狐とキケンな同居』のペク・ソンウ脚本作品だ。

ジョンウがハヌルに告げた、「人生は塩辛いけど、お前がいれば甘い。塩田のアメみたいだ」「人生は苦いけど、お前といる時間は甘かった。わらびとチョコを同時に食べたみたい」という究極のラブレターのような名言といい、人気作として名を残すのは間違いないだろう。

ここからは、晴れて恋人同士になった、ジョンウとハヌルのラブラブデートがたっぷりと楽しめる。「彼氏と論文を読んで議論したかった」というハヌルに、ロマンチックなデートをしたくてしょげるジョンウがかわいい。映画館でハヌルに甘えるジョンウの姿は必見だ。パク・ヒョンシクとパク・シネの最高のケミに、このまま幸せな時が続いてほしいと思いながら、まだ物語が折り返し地点なことに気づいてイヤな予感がよぎる……。韓ドラは、早くにラブラブになると、その後に辛い展開がやって来るのがお約束なのだ。

その予感が外れてほしいという願いもむなしく、ハヌルは、先輩医師のギョンミン(オ・ドンミン)の結婚の話を聞くと調子を崩してしまう。さらに、亡き父のことで自責の念にかられる思いが浮上する中で、ジョンウがハヌルのために、医師としての復帰を遅らせたことをホンラン(コン・ソンハ)から告げられる。自責と罪悪感にかられ、一気に混乱して精神状態が悪化したハヌルは、ジョンウに「もう別れよう。今の私は恋愛できる状況じゃない」「気分に波があるの。私、忘れてたけど、自分の面倒も見られない」と泣きながら別れを告げる。

「昨日は問題なかった、でも今日は違う」とハヌルが言うように、気分の波がハヌルを襲い、辛くてたまらない様子に胸が痛くなる。そんなハヌルを支えたいジョンウだが、ジョンウの存在さえも辛いのかと、ジョンウのショックが伝わってくる。うつ病という病を抱えたハヌルに、1人で抱え込まずにジョンウに頼ってほしいと強く思いながら、ジョンウの決断と行動、ハヌルの心模様を固唾を飲んで見守っている。

(文=にこ)

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