【貯蓄は使い切らない方がいい?】定年後に小料理屋を営むため、貯蓄の「1500万円」をすべて使う予定です。危険でしょうか?

開業にかかる費用と内訳

日本政策金融公庫総合研究所「2022年度新規開業実態調査」によると、2022年の開業費用の平均値は1077万円、中央値は550万円とのことです。さらに開業費用の内訳を見てみると、500〜1000万円未満が最も多く28.5%、次いで250万円未満(21.7%)、250〜500万円未満(21.4%)と続くことが分かります。

開業資金が500万円未満と回答した方は全体の4割以上を占めており、前年の2021年に比べて、250万円未満で開業している割合は増加傾向にあるようです。

ただしこの調査結果はすべての業種に対する結果なので、業種によって開業費は異なることに注意しましょう。

次に、開業にかかる費用の内訳を見てみましょう。

店舗契約(取得)費用

飲食店を開業するには、店舗の契約(取得)が必要です。店舗の契約には以下の費用などがかかります。

__・保証金または敷金
※退去時に返金となる場合もある
・礼金
・仲介手数料
・前家賃
・造作譲渡料__

保証金や敷金、仲介手数料などは、家賃の何ヶ月分、と計算されることが多いようです。

仮に契約する店舗の家賃が20万円の場合、保証金・敷金が家賃の6ヶ月分なら120万円、仲介手数料が家賃の1ヶ月分であれば20万円がかかります。ほかにも礼金や前家賃などの費用がかかるので、場合によっては数百万円の資金が必要になるケースもあるといえます。

設備・内装費用

飲食店を開業するには、調理に関する設備工事や内装工事が必要といえるでしょう。ガス工事や電気工事はもちろん、水回りの給排水工事や空調換気工事などの費用もかかります。

最近では、原材料やエネルギーの価格上昇、設備材料費の値上がりなどが影響しており、工事費用が高くなる傾向にあるようです。大きさやメーカーなどによって金額は異なるので、事前に見積もりして比較検討するといいでしょう。

備品購入費用

料理を出すための食器や調理器具、レジロールや包装紙などの消耗品をはじめ、大型の冷蔵庫やオーブンなどの電化製品まで、さまざまな備品の購入が必要です。

飲食店のイメージによって備品にかかる費用は変わりますが、テーブルやイスなどを一から購入するとなると、数十万~数百万円のお金がかかることもあるでしょう。中古品をうまく活用するなどして、なるべく費用をおさえたいところです。

開業後の運営費

飲食店の開業には、準備にかかる費用だけでなく、営業していくうえで必要なコストもあります。初めのうちは、開業資金から支払うことになるでしょう。以下は営業していくうえで必要なコストの一例です。

__・保険料
・家賃
・光熱費
・食材費
・備品代
・人件費(従業員を雇う場合)__

特に火災保険は、加入が義務付けられている物件が多く、火を使う飲食店では必須となる保険です。ほかにも製造物責任(PL)保険や賠償責任保険など任意で加入する保険もあるので、リスクに備えて検討しましょう。

これらの資金は継続的にかかる費用なので、開業してからの支払いに困らないためにも、数ヶ月分は用意しておくと安心です。そのため、開業資金の1500万円を準備の段階で使い切るのはおすすめしません。お店を運営する費用として、ある程度の資金を手元に置いておきましょう。

開業資金が足りない場合には助成金制度の利用を検討しよう

開業資金が足りない場合には、自治体の助成金制度などを利用するのも方法の一つです。

助成金は、返済しなくていいのがメリットです。しかし、助成金の支給には時間がかかるため、すぐに資金調達できるわけではありません。開業資金としては利用できないため、自分たちである程度の資金を確保しておく必要があるでしょう。

自治体によって助成額や利用条件が異なりますので、一度確認しておくと安心です。

貯めた開業資金をすべて使うのは危険

飲食店を開業するには、開業の準備とその後の運営にかかるお金の二つが必要です。開業当初から順調に売り上げが出るとは限りません。数ヶ月は開業資金から出費が賄えるよう、1500万円のうち数百万円は手元に置いておくと安心といえるでしょう。開業準備は計画的にすすめることをおすすめします。

出典

日本金融公庫総合研究所 「2022年度新規開業実態調査」~アンケート結果の概要~(9ページ)

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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