【救急車の適正利用】生かそう「#7119」(2月22日)

 急な病気やけがに際して病院に行くべきか、救急車を呼んだ方がいいのかどうか、迷った場合の判断手段として救急電話相談窓口「#7119」がある。看護師らが24時間365日対応し、応急手当てなどの助言をする。県は救急車の適正利用にも一定の効果があるとみて新年度も事業を継続する。ただ、相談窓口の認知度を高める工夫が必要だ。医師会をはじめ高齢者団体、学校、企業と連携し、周知・普及に努めてほしい。

 #7119は、総務省消防庁の救急安心センター事業として設けられている。昨年までに本県など19都府県の全域と5道県の一部で利用が可能となった。県内は、県と59市町村が昨春から民間に委託して共同運用し、看護師や専門の相談員が緊急性の判断や応急処置、受診のタイミングなどを助言している。

 県によると、1月現在の相談件数は1万3317件で、5割超は緊急性が低い症状だった。子どもや家族のけが、自身の体調が優れない時などは誰もが不安にかられる。そんな時、専門的な知識を持つ看護師らから適切なアドバイスを受けられれば安心につながり、気持ちにゆとりを持った対応ができる。

 県内の救急出動件数と搬送人員は、2018(平成30)年にピークの8万4757件、7万8086人に達した。新型コロナウイルス感染拡大期は衛生意識の向上や不要不急の外出自粛などで減少した。しかし、2021(令和3)年に増加に転じ、2022年は過去最多の9万243件、8万1512人に上っている。

 消防庁によると、救急搬送された人の中で軽症だった割合は全体の5割前後を占めている。年代別では65歳以上の高齢者が6割を超える。

 #7119の普及は、軽症者による救急車の利用を極力抑え、真に必要な重症者に最大限振り向ける適正利用にも結び付く。救急車の到着時間や医師に引き継ぐまでの時間は軽症者の利用増を背景に年々延びる傾向にある。相談窓口への理解と信頼を一段と高めていけば、救命率の向上にも寄与するだろう。

 救急需要は高齢化の進展で今後ますます増えるとみられる。限られた人員と車両を効率よく運用するには、適正利用に向けた一人一人の心がけも求められる。(湯田輝彦)

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