保護猫の譲渡会、大分県内で活発に 民間団体が積極的に情報発信、企業も協力【大分県】

譲渡会で保護猫と触れあう来場者=12日、大分市猪野

 保護猫と新たな飼い主を引き合わせる民間団体の取り組みが活発になっている。捨てられた、飼育放棄に遭ったなど劣悪な環境から救い出された猫への関心が高まる中、地域のボランティア団体は積極的な情報発信や譲渡会の充実を図り、「一匹でも多くの猫を幸せに」と願う。2月22日はニャン・ニャン・ニャンの語呂合わせで「猫の日」。

 12日午後。大分市猪野のヘアサロンの一角で、7匹の保護猫の譲渡会が始まった。訪れた人は背中をなでたり、抱き上げたり。初めて訪れた40代主婦は「想像よりも毛並みがきれいで人懐っこい。かわいくて悩みます」と表情を緩めた。

 大分市内のNPO法人「108猫(とわねこ)」と「ねこの糸」が企画し、約30人が来場した。この日は「家族と相談したい」「飼い猫との相性が気になる」といった理由で引き取り手は決まらなかった。

 「108猫」の女性代表(49)は「初めは不安を感じる人が多い。譲渡して終わりではなく、悩みを聞くなど継続的なケアも大切にしている」と話す。迷っている人のために1週間のトライアル(お試し)を設け、ケージや餌、トイレ用品も貸し出すなど、手厚いサポートを用意し、粘り強く取り組む。

 2022年に設立した「108猫」は当初、譲渡会の会場確保に苦労した。信用を得るため、23年にNPO法人に登録すると、スペースを貸してくれる店舗や事業所が増加。同年は従来の2倍に当たる21回の譲渡会を実施した。「他の団体との連携もしやすくなり、規模の大きい会もできるようになった」と語る。

 各団体は交流サイト(SNS)などでの情報発信にも力を入れる。「ねこの糸」の村上由香里代表理事(46)は「ここ数年、保護猫を飼いたいという申し込みが増えた。『1匹しか救えないけど役に立ちたい』という声が目立つ。活動への理解が深まってきた」と手応えを感じている。

 企業の理解も広がってきた。イオン九州は19年から、県内の一部のホームセンターで年2回、猫や犬の譲渡会のために場所を提供。これまでに猫32匹、犬5匹の飼い主が決まった。

 担当者は「ペットに関する商品を扱う以上、命の大切さを発信し、新しい家族との出会いの場を応援したい」と話す。

 おおいた動物愛護センター(大分市廻栖野)の金城巳代志所長(57)は「センターだけでなく民間団体による譲渡数が増えることで、殺処分数の減少につながれば」と期待した。

<メモ>

 おおいた動物愛護センターによると、2022年度の猫の殺処分数は457匹だった。19年度の2134匹以降は減少傾向にある。犠牲になる猫を減らすため、野良猫を捕獲し、センターに運んで無料で避妊・去勢の手術を受けさせる「おおいた さくら猫プロジェクト」も進む。費用はセンターの予算と県獣医師会に寄せられた寄付金で賄っている。

© 有限会社大分合同新聞社