竹島問題、政府“取り組み”の「本気度」とは… 専門家が憂慮する“消極姿勢”の背景

隠岐諸島の北西約158kmに位置する竹島は女島(東島)、男島(西島)の2島とその周辺にある数十の小島からなる群島(写真提供:桑原史成)

2月22日は「竹島の日」だ。日本政府は竹島について「日本固有の領土であり、歴史的にも国際法上も明らか」「韓国が一方的に竹島を取り込み不法占拠している」と主張している。

ところが「竹島の日」制定をめぐっては、竹島を所轄する島根県が国に対して要請を繰り返してきたにもかかわらず、一向にその動きがみられなかった。そのことから、島根県が2005年(竹島が同県の所轄となって100周年)に独自で条例を制定したという背景については、あまり知られていない。

なお現在に至るまで「竹島の日」は国の記念日となっていない一方、同じく領土問題を抱える北方領土については、1981年に政府によって「北方領土の日」(2月7日)が定められている。

問題の根本にある「日本政府の無関心さ」

日本では近年、学習指導要領の見直しによって竹島を「我が国固有の領土」と明記するようになり、小中高での領土教育は令和に入ってから始まった。一方の韓国では、長年にわたって竹島(独島)教育に力を入れており、現在は基本的にすべての学校で年10時間以上が割かれていることから、「日本の教育が後れをとっている」と問題視されることも多い。

しかし竹島をめぐる“本質的な問題”について、島根県竹島問題研究会の座長で、拓殖大学名誉教授の下條正男氏は「日本政府の無関心さ」と指摘する。

「『竹島の日』制定当時、政権与党の自民党と外務省は『日韓関係に支障をきたす』との理由で島根県の動きに反対する姿勢を示しました。たしかに2005年は日韓国交正常化から40周年の節目だったため、国としては一地方自治体に波風を立ててほしくないという思いもあったものと思います。

しかし当時、韓国国内では韓国創価学会が10万人規模の反日大会を開催し、統一教会(当時)も日本人信者に公衆の面前で謝罪するようなパフォーマンスをさせるなど、積極的な反対キャンペーンを行いました。

昨今広く知られるようになった自民党とこれら宗教団体との蜜月ぶりを考えれば、当時の日本政府が単に『日韓関係』のみを憂慮して『竹島の日』制定に反対していたのではないということは、容易に想像がつくのではないでしょうか」

19日に都内で開かれた「第5回東京『竹島の日』大集会」で講演する下條氏(弁護士JP編集部)

日韓の担当者「リーダーシップ」に大きな差

2005年、島根県は政府の反対を押し切るかたちで「竹島の日」を制定した。一方その頃、韓国では竹島問題を持続的に研究するための機関が政府の肝いりで誕生。現在、同機関は「東北アジア歴史財団」との名称で、竹島問題を中心に慰安婦問題、徴用工問題、日本海呼称問題、靖国問題など、日韓の歴史問題について政策提言などを行っているという。

前出の下條氏はこの機関について、「韓国政府の教育部(日本の文科省にあたる機関)傘下にあって、現在100名ほどいるスタッフのうち約60名は研究者。歴代の理事長は全員が歴史学者で、事務局総長には大使経験者が就いてきました。極めて専門的な人材が強力なリーダーシップをとっている機関だと言えるでしょう」と説明する。

「一方、日本政府において竹島問題を担当する『領土・主権対策企画調整室』(内閣官房所属)はどうでしょうか。残念ながら、リーダーシップを発揮すべき領土問題担当大臣にこれまで領土・歴史問題の専門家が就いた例はありませんし、室長となる官僚も、数年ごとにまったく別の分野からやってきて、まったく別の分野へ異動していってしまいます。

これではいくら『竹島は日本の領土だ』と主張したところで、歴史的事実がどうであれ、太刀打ちできないのは火を見るよりも明らかです」

下條氏は長年にわたる竹島問題の研究を通して、日本の政治のあり方そのものが、領土問題の解決を阻んでいると痛感しているという。

「日本国憲法第68条は国務大臣について『その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない』としています。裏を返せば、過半数さえ満たせば、国会議員以外から国務大臣を選んでもいいわけです。

しかし領土問題に限らず、日本の大臣にはそろいもそろって国会議員が就いています。彼らの中に、各分野の問題を深く理解し、国益のために身をていして働こうという人は、どのくらいいるでしょうか。

長年にわたって作り上げられてきた体質をすぐに変えることは難しいですが、『竹島の日』をきっかけに、その問題の本質にも思いをはせていただけたらと思います」

島根県では毎年2月22日に記念式典を開催しており、国に対し長年にわたって閣僚の出席を求めているが、今年も政務官の派遣にとどまるといい、12年連続で閣僚の出席がないという状況が続いている。

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