日本で生きていく 福島県いわき市のウクライナ留学生 侵攻2年、祖国思い一歩 市内スーパーでインターン開始

マルトの従業員に仕事を教わるソフィアさん(左)

 ロシアによるウクライナ侵攻から24日で2年。終戦が見えない中、福島県いわき市に避難したウクライナ人留学生のソフィア・ビシャズさん(20)は「将来も日本で住み続けたい」と市内のスーパーで21日、働き始めた。祖国で血が流れ続ける苦しみ、ウクライナ支援への感謝、将来への希望―さまざまな思いを抱えながら、新たな一歩を踏み出した。

 いわき市のスーパー「マルト」のパン売り場でソフィアさんが丁寧にパンを並べていく。初日は「少し緊張したが、楽しかった」と笑顔を見せた。マルトがインターンとして受け入れ、ベーカリー部門に勤務して仕事に必要な言語力や知識を身に付けている。

 故郷のウクライナ南東部マリウポリは侵攻当初の激戦地で、現在はロシアが実効支配する。ソフィアさんは当時、首都キーウの大学で日本語を学んでいたが、侵攻の始まった2022(令和4)2月24日は実家のあるマリウポリにいた。

 あちこちが空爆されて2週間ほど動くことができなかった。食料も水も足りず恐怖の日々を過ごす中、3月15日に「人道回廊」を通って脱出したという。ただ、現在まで続く戦闘で父方の祖母が犠牲になった。

 2022年9月にいわき市の東日本国際大の留学生別科に入学し、今年9月に修了する。通っていたキーウの大学の学位を取るため、オンラインで大学の授業にも出席している。元々日本文化やアニメが好きで、将来的には「日本で外国人向けの日本語講師や通訳として働きたい」と話す。マルトで働き始めたのは来日当初に同社が家電や寝具など生活用品を無償で支援してくれたことへの「恩返し」の気持ちもある。

 気がかりはウクライナにいる母やもう1人の祖母のこと。毎日電話で連絡を取り合っているという。「今も罪のない命が奪われている。早く戦争が終わってほしい」。祖国の平和を願い続けている。

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