年収の壁とは?「100万円の壁」「103万円の壁」「106万円の壁」「130万円の壁」「150万円の壁」「201万円の壁」…6つまとめて解説

何かと耳にする「年収の壁」。しかし「あれっ、103万円の壁と聞いたけど」「いや、わたしは106万円の壁って聞いた」など、「年収の壁」と呼ばれているものが色々とあり、混乱気味。いまいちど、「壁」を整理してみましょう。

税制上の「年金の壁」、4つ

エン・ジャパン株式会社/「エンバイト」が行った『1000人に聞いた「年収の壁」に関する調査レポート』で、「年収の壁について知っていますか?」と尋ねたところ、「知っていて、説明できる」が31%、「説明できないが、聞いたことがある」が58%、「知らない」が11%でした。

また「知っていて、説明できる」「説明できないが、聞いたことがある」と回答した人に、「年収の壁によって困った経験があるか」と尋ねたところ、「ある」が42%でした。多くの人が知っているかどうかは別として、「年収の壁」を前に多かれ少なかれ「どうしよう……」と困惑の表情を浮かべているわけです。

年収の壁は、税金や社会保険料がかかる/かかるの境界線。そこを超えるか超えないかで大きな違いが生まれるので、“壁”と表現されています。

前述のとおり、年収の壁には「税制上の年収の壁」と「社会保険上の年収の壁」の2つが存在します。前者には100万円/103万円/150万円/201万円、後者には106万円/130万円、計6つの年収の壁が存在します。

まずは税制上の壁についてみていきましょう。

年収の壁① 100万円の壁

一般的に年収が100万円を超えると住民税がかかります。たとえば東京都在住の30歳の場合、年収100万円であれば、住民税は0円。年収が101万円になると、住民税が5,000円かかります。給与は1万円増えていますが、手取りは5,000円ほどしか変わりません。

年収の壁② 103万円の壁

一般的に年収が103万円を超えると所得税がかかります。これは、基礎控除48万円と給与所得控除の最低額55万円を足した金額が103万円になるからです。ただし医療費控除など、各種控除の適用を受けることで、年収が103万円を超えても所得税がかからない場合もあります。

年収の壁③150万円の壁

年収が150万円を超えると、配偶者の税金を計算する際の「配偶者特別控除額」が減り始めます。自身の給与ではなく、家族の給与に影響を与える“壁”です。

自身の年収が150万円以下であれば、配偶者の所得税の計算で38万円、住民税の計算で33万円が控除できます。つまり150万円を超えなければ、配偶者は最大71万円の控除が受けられる仕組みです。

年収の壁④ 201万円の壁

150万円を超えると、配偶者の税金を計算する際の「配偶者特別控除額」が減り始めますが、その「配偶者特別控除額」がゼロになるのが201万円です。

本人の収入が900万円以下の場合を例にすると、配偶者の収入(給与所得だけの場合)が103万~150万円以下で控除額は38万円、150万円超~155万円以下で36万円、155万円超~160万円以下で31万円と段階的に減っていき、201万5,999円超になると、控除額はゼロ円になります。

社会保険上の「年収の壁」…2つ

次に社会保険上の壁についてみていきましょう。

年収の壁⑤ 106万円の壁

106万円は、社会保険料がかかるかどうかの境界線です。従業員101人以上の企業で週20時間以上働いて年収106万円(厳密には月収8.8万円)を超えると、社会保険に加入する必要があります。会社の規模によって扶養から外れるため、「106万円の壁」といわれています。

年収の壁⑥ 130万円の壁

130万円は、家族の扶養に入るか、それとも外れるかの境界線です。年収が130万円以上になると、社会保険の被保険者の扶養から抜けて、自ら社会保険に加入しなければならなくなり、自身の給与から健康保険や厚生年金などの社会保険料を支払う必要が生じます。会社の規模に関わらず、すべての人が社会保険に加入することになるので「130万円の壁」といわれています。

年金世代なら知っておきたい「211万円の壁」

現役世代が気にしたい、6つの年収の壁。ほかに年収の壁として知られているのが「211万円の壁」です。この場合の年収は年金のこと。年金収入のみで生活している65歳以上の夫婦2人の世帯が、「住民税非課税世帯」になるかどうかの境界線です。

壁の条件は「世帯主の年金収入が211万円以下であること」「配偶者の年金収入が155万円以下」の2つ。これらの条件がクリアされていれば、住民税がかからない、というわけです。

ただし、住民税非課税限度額には、居住地の「級地」により3パターンあり、211万円は大都市圏を中心とする「1級地」の基準。ほかに「193万円の壁」「203万円の壁」の地域も。居住地を変えることで、それまでかからなかった住民税がかかるようになる、逆にかからないようになるということも、珍しくはありません。

政府も「年収の壁対策」に本腰

年収の壁を意識して「働くのを控える」ことが、さまざまな弊害を生み、問題視されています。そこで政府は「年収の壁・支援強化パッケージ(キャリアアップ助成金関係)」をスタート。年収の壁を超えることで人件費が膨らむ企業に対する支援で、企業をサポートしてその分を従業員に還元してもらおう、という取り組みです。

そもそも、壁を超えずに働くことがプラスになるか、壁を意識しないで働くことがプラスになるかは、家庭の事情によるところも大きいでしょう。綿密なシミュレーションのもと、働き方を考えることが大切です。

[参考資料]

エン・ジャパン株式会社/「エンバイト」『1000人に聞いた「年収の壁」に関する調査レポート』

厚生労働省『年収の壁・支援強化パッケージ(キャリアアップ助成金関係)』

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