自宅を担保に借入れをし、契約者の死後自宅を売却することで返済を行う「リバースモーゲージ」。老後資金の確保に便利な制度ですが、同時にリスクもあると“家計の専門家”として活躍する経済ジャーナリストの荻原博子氏はいいます。荻原氏の著書『老後の心配はやめなさい』(新潮社)より、「リバースモーゲージ」を検討するうえで必要なポイントについて見ていきましょう。
「リバースモーゲージ」で、リッチな老後?
最近、「リバースモーゲージ」の利用が増えています。
リバースモーゲージとは、自宅を担保にお金を借りて、返済は契約者の死後、自宅を売却して行うというものです。
老後の資金不足を不安に思いながらも、自宅を離れたくない高齢者のニーズが高いのか、日本経済新聞によると推定融資残高は、1,600億円にも上ります。そのうち500億円が、ここ3年ほどの間に増えていると言われています。
家があっても子供が住まないなら、いずれは処分しなくてはならない。けれど、住みなれた家なので、できれば死ぬまで住み続けたい。
そんなことを考える人にとっては、「リバースモーゲージ」は、最適なシステムのように思えるかもしれません。
「リバースモーゲージ」には、2つのタイプがあります。
1つは、お金を借りて利息だけを払い、元金を死後に家で支払うタイプ。しかも、家の価値が元金よりも下がってしまっても、相続人には請求が行かないタイプも出てきています。
たとえば、住宅金融支援機構の保険がついた「リ・バース60」。これまでは、契約者の死後に清算する際、借りた総額より自宅の売却益が少なかったら、相続人が差額を支払わねばなりませんでした。けれど、「リ・バース60」は、借入金が超過したとき用の保険を付けるため、相続人に請求がいきません。
多く借りても請求されないので、一見すると“借り得”と思えるかもしれません。が、この商品は、保険がある分、利率が通常より高くなっているという目立たないデメリットがあります。
「リバースモーゲージ」のもう1つのタイプは、毎月の利息返済がない商品です。生前は一切返済せず、死後にすべてを清算します。
お金を借りる人には好都合ですが、金融機関にはリスクの高い契約です。そのため対象となる物件の評価額が高くなければ融資してくれないなど、融資の条件は厳しいものになります。
リバースモーゲージの「3つのリスク」
「リバースモーゲージ」は、一般的には55歳以上でないと借りられません。
70歳で契約して90歳で亡くなったら、金融機関が貸したお金を回収するのは20年後。けれど、40歳だと、50年後ですから、回収までに時間がかかりすぎるので対象とならないのです。
死んでから資金回収をするタイプの場合、都心の一等地の物件など、価値が下がらないことが予想されない限り、大したお金は借りられません。しかも、こうした商品には、大きく3つのリスクがあります。
①長生きリスク
契約者の長生きに備えて、契約期間を定めるケースがあります。契約期間を過ぎたら、返済を迫られ自宅を追い出されてしまうケースもあるのです。
②評価額リスク
担保物件の評価額が下がったら、借入金が予定より減らされたり、融資が中断される危険性があるのです。
③融資額リスク
通常、家を担保にお金を借りると、評価額の7割程度の融資が受けられますが、リバースモーゲージは2〜5割程度とかなり低くなるのです。
「リバースモーゲージ」では、金融機関にしっかり見積もりを出してもらいましょう。もし、今売却したら5,000万円になる家が、1,000万円の評価にしかならないなら、家を売却して新しい小さなマンションを2,000万円で買い、3,000万円を老後の資金にしたほうが安心ではありませんか?
荻原 博子
経済ジャーナリスト