3位は山口県、2位は富山県…最も危ない県1位は?最新耐震化率で判明!都道府県別「地震で家屋倒壊」危険度ランキング

1981年以前の旧耐震基準の住宅は倒壊の恐れが(写真:共同通信)

「石川県が氏名を公表した、能登半島地震で死亡した方のうち、90%近くが『家屋倒壊』で亡くなったとされています。

被害が大きかった穴水町、輪島市、珠洲市などでも、木造家屋の1階部分が押しつぶされて全壊している状況が多くありました」

こう話すのは、危機管理アドバイザーの国崎信江さんだ。

「被災地でも高齢化率が高い市町がありましたが、年を取るほど、日々『生きていくのに精いっぱい』という状況の方が増えます。

築年数が何十年とたち、改修が必要な家屋でも、つい手付かずになってしまう。そんなケースは、全国至る所にあるといえます」

1995年の阪神・淡路大震災、2004年の新潟県中越地震、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震……これだけ大地震があっても、「わが家だけは大丈夫」と慢心していないだろうか。

「首都直下地震、南海トラフ地震は、いずれ来る地震です。全国どこに住んでいても、住宅の耐震化を考えるのは必須です」(国崎さん)

本誌は今回、国土交通省が整理した最新の「都道府県別の住宅の耐震化率」一覧表を入手。本誌で独自に取材したデータを合わせ、都道府県別「家屋倒壊」危険度ランキングを作成した。自分の住んでいる地域がどうなっているのか確認してほしい。

■耐震助成額の上限が400万円の自治体も!

「94.2%」で全国1位の耐震化率を誇るのは埼玉県だ。

表内の「伸び率」は2008年時点の耐震化率からの伸び率をポイントで表したものだ。これも埼玉県は「20.2ポイント」と堂々の1位。

同県建築安全課の担当者が話す。

「埼玉県の住宅の耐震化は、住民に身近な各市町村で取り組んできました。県内63市町村のうち、61の市町で耐震診断、耐震改修の補助制度があります」

耐震改修の補助制度は3段階に分かれており(1)耐震診断、(2)耐震設計、(3)耐震工事となっている。

「市町村で異なりますが、建築士が行う耐震診断は費用の5~10割程度補助します」

対象となる住宅は、たとえば、さいたま市の場合1981年5月末以前に着工した旧耐震基準での住宅となる(住んでいる各都道府県の市区町村に問い合わせのこと)。

「改修工事では費用の2~5割程度の補助となります。県では啓発リーフレットの作成、配布、学校機関や自治会などに、『出前講座』として職員が出向いて説明するなどしています」

秋田県は耐震化率では84.8%と28位だが、伸び率は18.8ポイントと著しい。県の担当者が話す。

「東北ブロックの各県の取り組みを把握しながら耐震改修の促進を行っています。2025年度末の目標値を95%と設定し、促進に努めます」

2011年の東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県は92%と3位。仙台市は2018年度の耐震化率が96%と高い成果を上げている。

「96%という数字は東日本大震災以後の住宅需要の高まりが大きな影響とも思われ、その後は反動で伸び率の鈍化も考えられます。

旧耐震基準の建築物の築年数は、最新でも40年以上で、老朽化対策も必要ですので、さらなる啓発活動が必要と考えております」(仙台市建築指導課・佐藤匡さん)

92%の東京都では耐震改修工事の補助が高額な自治体が目につく。

港区では、1981年5月末までの木造建築物の耐震改修工事などの費用が3分の2まで、助成限度額で400万円まで補助される。1981年6月以降、2000年5月までのものは2分の1、限度額100万円まで。

中央区は住宅の耐震補強工事が工事費の2分の1、限度額300万円まで補助される。都市整備部建設課長の芳賀誠さんが言う。

「東日本大震災では瓦や外壁の落下、家屋の傾きなど、区民からの電話がひっきりなしでした。同年、東京湾大華火祭を自粛し、予算の一部を耐震補強に回したんです」

一方、火災などの大きな被害も想定される木造住宅密集地域への対策を急務とする練馬区では

「2024年度から、耐震診断の助成額の上限を12万円から20万円に、耐震改修工事の上限を130万円から270万円に、など拡充する予定です」(練馬区防災まちづくり課)

太平洋側の各県を中心に警戒されているのが南海トラフ地震だ。愛知県(91.2%)は名古屋市耐震化支援室の担当者が言う。

「南海トラフ巨大地震に備え、2003年から耐震診断は無料に。耐震改修工事は工事費の5分の4、最大100万円まで助成しています。2022年からは、耐震性の低い建物を取り壊す除却工事で、最大20万円まで支給されることになりました」

■元郵便局員が地道な戸別訪問で対応

四国の高知県は、耐震化率88%と全国平均を上回る。

「東日本大震災などの被害状況を見て、南海トラフ地震の被害想定をし、市町村と連携して耐震化を進めてきました」(住宅課)

高知県沿岸部に位置する黒潮町情報防災課の国見知法さんが言う。

「内閣府の中央防災会議が2012年、南海トラフ地震が来た場合に『黒潮町で震度7、津波高34.4m』と公表しました。『津波到達時間も最短2分』と。緊張が走りました」

役場は保育士も含めた全職員が「防災業務」を兼務することに。

「町内61区の集会所に担当職員がつき、避難場所、避難路など、現地を歩いて点検し、整備を急速に進めました。津波高34.4mと想定された地点は、逃げることが可能な避難路と避難場所があることが確認できています」

津波の避難タワーも6基が建設され、「全国一高い22mのタワーがあります」と国見さん。

だが耐震改修工事の促進には、苦労があったと振り返る。

「耐震診断は2004年から、耐震工事は2006年から始まっていましたが、数年間は、工事まで進んだのが10件もありませんでした。そこで2012年から診断を無料とし、設計(最大30万円補助)、工事(最大125万円補助)と進めるように、町の全戸に戸別訪問を始めたんです」

戸別訪問に町が採用した臨時職員は、地元の元郵便局員だった。

「地域の道はぜんぶ把握しているし、どこに誰が住んでいるかもわかっている。5年間で全戸を3回訪問しました」

そのような地道な職員の努力で、2013年には診断数27件だったのが、2014年には338件と10倍以上に拡大。工事件数も2019年には177件と最大になった。

他方で耐震化率70%、伸び率も5ポイントと全国最下位の島根県の担当者は、取材に次のように回答した。

「本県はこれまで県民への耐震に関する普及啓発、耐震改修費用への補助を行うなど、耐震化促進の取り組みを進めており、取り組みが遅いとの認識は持っていません。

しかし県内は古い木造住宅が多数存在し、また所有者の高齢化もあり、このことが全国に比べ耐震化率が低い一因と捉えています」

■震災から月日がたち防災意識の薄れが

前述したように2016年の熊本地震はまだ記憶に新しい。耐震化率89・1%と全国平均を上回る熊本県だが、建築課担当者は、「熊本地震から8年近くがたち、防災意識が薄れてきている感覚があります」と危機感を募らせる。熊本市住宅政策課の担当者は

「熊本地震直後は耐震診断、耐震改修ともに多かったんです。しかし2022年は耐震診断(負担額5千500円)144戸に対して、耐震改修工事(補助金額の上限100万円)に進んだのが68戸でした。

DMを送るなどをしていますが、事業説明会も予定しています。耐震化事業を知ってほしいですね」

このように地域差はあるが全国で耐震化の取り組みがされている。

前出の国崎さんは「戸建て住宅は、マンションのような定期修繕がなく、傷んで初めて気づき、補修する。それでは遅い」と指摘。

「近年は温暖化の影響で強い雨風にさらされたり、紫外線などで塗装が劣化したりする。

経年劣化のスピードも速くなっているのだと意識して、自治体の耐震診断、耐震改修の制度を調べ、積極的に利用すべきです」

まずは、自治体の耐震化担当部署に問い合わせてみよう。

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